俺は誰だ?
「君はいらない子なんだ。いいかい?君は不幸を呼び寄せる。そんな人がどうして生きていいと思うのかね?君なら分かってくれるね?
だから、死のうね。
君を愛せるのは僕だけだよ。」
あぁ。これが俺の人生の終わりか。
むなしくなるのかと思っていたが、何も感じない。言えば、虚無だ。
今までの努力が無駄だったのかと考えてしまう程、あっけない。
死というものに恐れを感じていた俺がバカみたいだ。
そう考えながら、俺、月守 圭の人生が幕を閉じた。
それが俺の最後の記憶、、、のはずなのだが。
なぜ俺は手を握ったりすることができる?いや、手があるということが感じられる?
分からない。それがとても恐ろしい。
そもそも天国や地獄というものを信じてはいないが、今の状況がその信憑性を高めていく。
それにしても、触覚はあるが、全く前が見えない。目が機能していない。
死後の世界はこういう作りなのだろうか?
しかし、不思議なことにどこかに寝そべっている感覚がある。
私はどこにいる?今、どういう状況なんだ?理解しようとしても一向に目は開かないし、目という感覚が掴めない。
触角があるのならば、手で体がどういう状況か探ろうと思った。
手を曲げてみると何かに衝突しそれが俺の体の一部であることがわかる。そして、脂肪がたくさんついていることに気づいた。
なぜだ?死んだときの俺の体は枯れ木のような状態のはずだ。
しかし、前と明らかに違うのは股のところにあったものがなくなっている。俺の体に何が起こっている?
医学書はすべて読んだが、こんな症状は読んだことがない。つまり、これは俺の体ではない?
いや、俺の体を触っている、触られているとは感じるのだ。
まさか、これは、転生か?
いや、そんなファンタジーの世界のようなことが起きるはずもない。
「嘘だ!そんなことはあり得ない!うちの娘に限って。」
なんだ?罵声が聞こえる。誰かいるのか。
「なぜなの!これでは、娘はいつか、人を襲ってしまうの?」
ヒステリックな女のようだ。状況はよくわからないが、声を上げた女の娘が占いにより人を襲うと予言されたようだ。まぁ、占いなぞ信じる方がおかしいがな。
「仕方がない。国の決まりだからな。彼女をソリタリオの塔に入れるしかない。」
そう言って、俺は誰かに持ち上げられた。
ちょっと待て。今の話の流れで俺が持ち上げられた?
まさか、その娘が俺!?
言葉が使えない、ムチムチしている、目が開かない、まるで幼児のようだ。それにあれがなくなっている。つまり、俺は人を襲う娘に生まれ変わったのか!
頭が混乱しているが、とりあえずそうだと仮定してなぜ、俺が将来人を襲うと言い切れる?
この、両親は俺は好きになれないな。