表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/115

第98話 亀裂は蝕む

 エイダはポーチ型の魔道具を漁り、取り出したカップに紅茶を注いだ。

 目を閉じて香りを楽しみ、ゆっくりと一口飲む。

 カップを持つエイダは自慢げに語る。


「知っているかね。この国の紅茶は味が良い。誇るべき特産と言えるだろう」


「…………」


 国王は話に反応しない。

 用心深くエイダを注視し、次の挙動を見逃さないようにしている。

 或いは、この空間に定められた未知の法則を警戒しているのかもしれない。

 エイダがすべてを打ち明けているか分からないのだ。

 その可能性を視野に入れるのは当然だった。


 エイダは優雅に紅茶を満喫している。

 二杯目を入れながら、彼女は意地の悪い笑みで指摘した。


「ははぁ、さては怯えているね」


「何のことだ」


「君は私に怯えている。考えが読めずに困惑し、恐怖しているのだ。そうだろう」


 エイダが頭を下げて、上目遣いに国王の顔を覗く。

 抉り込むような視線だった。

 物事の本質……そのさらに先を解き暴こうとする無貌の狂気である。

 騎士団長との戦いで垣間見えた一面が、ここで不意に現れた。


 両者は至近距離から見つめ合う。

 刹那、国王の腕に亀裂が走る。

 左肘が衣服ごと割れていた。

 硬い断面が崩れて一部が粉となって今にも分離しそうだ。


 国王は驚愕し、反射的に玉座から立ち上がりそうになった。

 それをなんとか堪えて言葉を洩らす。


「ば、馬鹿な」


「慌てなくてもいい。悪魔にだって感情はある。未知とは根源的な恐怖を呼び起こすものだからね。君が動揺するのも仕方のないことなんだ」


 エイダは穏やかに宥める。

 国王からすれば逆効果だろう。

 いや、彼女は端からそれを狙っている。

 誰であろうと恐怖するのだと認識させることで、国王を引きずり落とそうとしているのだ。


(言葉に出すことで強く認識させて、一種の呪縛にしているのか)


 この空間では暴力が禁じられている。

 ただし唯一、言葉による攻撃は可能だった。

 それによって揺さぶりをかけて損傷を誘っているのだ。

 実に悪辣で合理的な手法である。


 国王は苦々しい面持ちで、慎重に両腕を動かす。

 亀裂の入った片腕はそれ以上の損壊を示さなかった。

 ひとまず落ち着いたらしい。

 国王は自然と手を顔の横に動かそうとする。

 それを見たエイダが先手を取って発言した。


「おや、耳を塞ぐのは感心しないね。それは私の言葉から逃げることを意味する。心の敗北は死に直結するよ」


 挑発された国王がテーブルを叩こうとして、寸前で止める。

 暴力は禁じられている。

 それを抜きにしても、彼の肉体は損傷しつつあるのだ。

 テーブルに叩きつけた拳が砕け散る恐れは十分に考えられる。

 国王は苦し紛れに吼えて両腕を下ろした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >国王は苦し紛れに吼えて両腕を下ろした。 ああ、この時点で国王の敗北は殆ど確定かな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ