表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/115

第94話 世界最悪の法則

 色を失った黒衣の集団は、あっけなく崩れ去った。

 彼らが蘇ってくることはない。

 魔人として優れた生命力を持っていようとも、それが通用するのは既存の物理法則の範疇だ。

 異常性に満ちた空間を超越する機能は持ち合わせていなかった。


 エイダは緩やかに手を組み、軽く首を傾げる。

 一つひとつの動作には気品があり、まるで演劇の役者のようだ。

 彼女は黒衣の集団の残骸を見て嘆息する。


「おやおや、軟弱だね。この程度で終わらないでほしいな。まだ色々な責め方を考えていたというのに」


 これに反応を示したのは国王だった。

 彼は配下の死を悲しむことなく、敵意の目をエイダに向ける。


「攻撃は禁じられているのではなかったのか。貴様だけが適用外なのだな」


「違うよ。私も自らの術に縛られる立場さ。暴力は一切振るえない。今のは彼らが自滅したんだ」


 予想通りの指摘だったのか、エイダは流暢にそう述べる。

 どう考えても詭弁だった。

 エイダはこうなることを想定して法則を改竄したのだ。

 知らぬ存ぜぬでは通じない。

 彼女の態度を見るに、諸々を考慮した上で開き直っているようである。


 エイダは魔導書の背表紙をなぞり、何かの講義かのように説明をした。


「精神状態が肉体に物理的な作用を及ぼす。意志が揺らげば肉体が損傷するよ。この空間における特殊法則の二つ目だ」


 暴力禁止に次いで発表されたその内容は、実に単純明快であった。

 心身の繋がりを密接にする。

 結論を辿れば、ただそれだけの話なのだ。


 精神的な不調が肉体にも現れるのは、生物としてありふれた体験であろう。

 それをエイダは究極的に誇張した。

 最悪の場合、粉々になって死ぬように細工したのであった。


 黒衣の集団はエイダの威光に負けて崩壊した。

 仲間の死が連鎖的に犠牲を広げることになり、あとは放っておくだけで恐怖が伝播する。

 心理操作に長けるエイダが最も得意とするところだった。


(面白い発想だ。簡単に言っているが効果が凶悪すぎる)


 この法則の恐ろしい点は、心が揺らいだ際に訪れるのがただの死ではないことだ。

 黒衣の集団は存在そのものが消滅していた。

 自我も魂も残っていない。

 一切の記録が抜き取れない状態だった。


 つまり問答無用で絶対的な死を与えてくるのだ。

 ほぼ無限に再生する勇者の末裔でも、異次元から降臨した悪魔でも、自我だけで成立する蔵書狂でも抗うことは決して許されない。

 偽りの賢者は、世界最悪の罰を実現させたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ