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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第92話 賢者の魔導書

 色を失った謁見の間は、既にエイダの術の支配下となっていた。

 仮に国王が仕組みに気付いたとしても対処のしようがない。

 もはや手遅れなのだ。


 これ以上の攻撃は無駄だと理解したのか、国王は殴打を中断する。

 若干の息切れは、疲労のせいだけではないだろう。

 数千発の拳を凌がれた事実を脅威と感じているに違いない。


 特に動じた様子もないエイダは、世間話のように真実の一部を明かす。


「この魔導書は、空間に新たな法則を書き加える。一時的なものだがね」


 彼女の説明を聞いた国王は、忌々しそうな表情をした。

 一瞬、こちらを睨んでから指摘する。


「法則の改竄……蔵書狂の権能か」


「その通り。法則の内容は私が考えさせてもらったよ」


 エイダは涼やかに微笑む。

 彼女は勿体ぶった仕草で魔導書をめくっていく。


 蔵書狂の権能はいくつかに分類される。

 事象の記録と観測、それらの抹消――最後の一つが改竄だ。

 これには加筆も含まれる。

 既存の物理法則を歪めて、望みの空間を生み出せる力である。


 拠点にしていた迷いの森もこの力で構築した。

 あの土地には、限られた者しか図書館に辿り着けないという法則を付与している。


 言うまでもないが、これも禁忌だ。

 私利私欲で記録を改竄するなど論外である。

 しかし結局、要所では頼ってしまっていた。

 エイダに機能の一部を貸し与えたのは紛れもない事実で、彼女に対する甘さは否めない。

 とは言え、改竄の力をどう扱うかはエイダ次第だった。


(空間の制約は無差別に機能する。一方的に有利な法則は設定できない。ここからどうするつもりだ)


 解決するだけの力は託した。

 もう干渉する気はない。

 成り行きを見守っていると、エイダが両手を広げて高笑いを上げた。

 彼女はゆったりと歩きながら語る。


「非暴力は私の掲げる方針の一つだ。これまでは妥協せざるを得なかったが、ようやく実現することができた」


 エイダは懐を漁る。

 取り出したのは球状の魔道具だった。

 彼女がそれを放り投げると、一瞬にして椅子とテーブルに変形する。

 テーブルはちょうど玉座と向かい合う位置に設置されていた。


 エイダは堂々と椅子に腰かけると、国王を手招きする。


「――さあ、平和的に話し合おうか」


 脚を組んだエイダは、妖しく目を輝かせる。

 その目付きは、獲物を狙う獣を彷彿とさせた。

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