表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/115

第85話 絶望の炎

 国王が黒い炎を全身に纏う。

 肉や骨が焼けているが、本人は一向に気にしない。

 自壊するほどの力を発しながらも、生命力はむしろ急激に上昇しているようだ。


 いよいよ本領を発揮するらしい。

 人間であることにこだわらず、魔王としての能力を使おうとしている。

 黒炎の化身となった国王は、歪んだ声音で宣告する。


「五百年前は勇者に阻止されたが、今度こそ魔族の支配する世界を実現してみせる。脆弱な民衆はすべて魔人に仕立てて、人類そのものを根絶やしにしてやろう!」


 国王の炎が周囲を侵蝕していく。

 絨毯が燃えて建材の一部が溶け始めていた。

 濃密な魔力が室内を巡り、灼熱の空間を構築する。


 エイダとルナは滝のような汗を流していた。

 この環境にいるだけで体力を消耗し続けるのだ。

 特にエイダの衰弱ぶりは顕著で、いつ倒れてもおかしくない状態である。


(圧倒的な熱量だ。臨界点を超えた力を発揮している)


 種族的な特性で自然回復の速度が高い悪魔には、魔力切れも期待できない。

 このまま持久戦に持ち込まれるとまず勝てないだろう。


(さあ、どうする。ここからが正念場だ)


 こちらの使える手札は少ない。

 大抵の策は国王の炎で焼き尽くされるからだ。

 防戦になれば、視線による発火が襲いかかってくる。


 つまり最善手は短期決戦のみ。

 環境的な不利で押し切られる前に、我々の全力を以て魔王を凌駕するしかなかった。


 その時、ルナが弾かれたように動き出した。

 彼女は国王の死角へと回り込んで短剣の刺突を放つ。

 聖なる力を帯びたその一撃は、しかし炎の自動防御に阻まれていた。

 切っ先が僅かに貫通しているが、国王には届いていない。


 ルナは短剣を引き抜こうとするも、刃が融解したので諦めて手放す。

 飛び退くルナに対し、国王が手をかざした。


「当代勇者よ。貴様に後れを取ることはない」


 迸る黒い炎がルナを包み込む。

 彼女の身体が急速に炭化し、端から朽ちていく。

 再生速度を超える燃焼が勇者の末裔を死に誘おうとしていた。


「ルナッ!」


 エイダが駆け寄ろうとしたので、腕を伸ばして行く手を阻む。

 下手に近付くと燃え移る恐れがある。

 ここは見守るしかなかった。


 まだルナは死んでいない。

 床に蹲った姿勢のまま、それ以上は輪郭が崩れず、徐々に炎が小さくなりつつあった。


 この土壇場で成長しているのだ。

 再生速度を限界以上に高めることで死に抗っている。

 まだ時間がかかるだろうが、いずれ復帰するだろう。


 同じ結論に至ったと思しき国王は、ルナを一瞥して鼻を鳴らす。


「腐っても英雄の端くれか。しぶとさだけは一級らしい」


 国王がこちらを向き、持ち上げた両手をかざしてくる。

 黒い炎が渦巻いて放出の瞬間を待っていた。

 魔力を圧縮させながら、国王は朗々と宣言する。


「脆弱な人間どもよ。貴様らを絶望の淵に叩き落とす」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ