第81話 国王の力
手のひらに眼球を乗せたエイダは、室内を優雅に歩き回る。
そこに攻撃を加える者はいない。
黒衣の集団が何かしようとしているが、震えるばかりで行動に移せていなかった。
それを確認してエイダは語る。
「魔眼を使いました。陛下の部下から拝借したものですね。短時間なら相手の動きを封じることができる。道中で軽く改造して魔道具にさせてもらった」
彼女の持つ魔眼は、坑道にて魔人の死体から奪ったものだ。
あの時にエイダが回収し、そして道中で改造した。
動きを止める力は元から備えていたが、魔道具になったことで持続力を強化された。
外付けの魔力が切れるまでは効果を発揮できる。
これこそがエイダの切り札の一つだ。
相手を強制的に交渉の席に座らせるための策である。
エイダには魔道具製作の才能がなかったので使い捨てになるも、本人は気にしていない。
この局面でさえ役に立てばいいという発想だったのだろう。
割り切りの良さはさすがと言える。
胸を張るエイダは演技臭い仕草と共に主張する。
「私は平和主義でね。陛下とは公平な視点から話し合いをしたい。暴力なんて野暮だと思うのだよ。だからはるばる王都までやってきた」
エイダは国王の前まで歩み寄る。
そうして挑発的な目付きで見下ろして告げた。
「どうだね。お互いに腹を割って話そうではないか。そちらにも利があると思うのだが」
「――下らん。実に下らんことだ」
国王が呟く。
その直後、肉体を軋ませながらゆっくりと玉座から立ち上がった。
鋭い眼光に赤みが差して、邪悪な魔力を発する。
エイダが慌てて飛び退く。
まさか国王が動けるとは思わなかったのだろう。
顰め面の国王は堂々と我々を睨み付けてくる。
(魔眼による拘束を振り払うか。人間ではないな)
魔人となった黒衣の集団ですら行動を封じられている状態なのだ。
今も尚、国王は影響を受けているが、無理やり立ち上がってみせた。
少なくとも魔人と同等以上の力を有している。
特殊な力を使ったようには見えないので、純粋な身体能力で抵抗した可能性が高い。
国王の正体については、いずれの死体の記憶にも明記されていなかった。
とにかく常人から逸脱しているのは間違いない。
魔爪の導示を支配している時点で予想はしていたが、これだけの強さを持つことには驚きである。




