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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第79話 謁見の間

 我々は城内を進む。

 兵士は遠巻きに見守るばかりで、攻撃してくる兆しが一向に見られなかった。

 騎士団長の敗北という事実が響いているのか、誰も挑む勇気がないらしい。


 彼らはただの人間だ。

 限りある命を無為に消費したいとは思うまい。

 たとえ精神魔術による洗脳を受けていたとしても、根源的な恐怖を克服するのは困難を極める。


 エイダが常に大声で牽制しているのも大きいだろう。

 自信に満ちた彼女の宣告が、兵士の戦意を削ぎ落としている。

 不気味な緊迫感を除けば、これまでの旅の中で最も快適であった。


(これ以上の戦闘は起きないようだ)


 すべてエイダの計算通りに動いている。

 最小限の死を利用することで、理想の環境を生み出していた。


 悪名を気にしなくなったエイダを止める術は皆無に等しい。

 単純な暴力はルナが確実に防ぐことができる。

 目的意識に取り憑かれた闇の賢者は、理性の範疇で暴走していた。


 それから特に戦闘も起こらず、王城内にある謁見の間に到着する。

 この先で国王が待ち構えている。

 扉に手を伸ばしかけたエイダは、その前に尋ねてきた。


「罠の類は仕掛けられているかな」


 羊皮紙の手を接触させて、扉の内包する記録を読み解いていく。

 いつ誰が触り、今はどういった状態であるかも正確に把握できた。

 さらに分析範囲を拡張し、謁見の間そのものを調べる。

 結果が出たところでそれをエイダに報告した。


「扉には特に何も施されていない。不自然なほど無防備だ」


「ふむ、なるほど。試されているのかな。それとも油断を誘いたいのか……何にしても大した自信だよ」


 顎を撫でるエイダは、どこか楽しそうに言う。

 瞳の奥に知識欲の色がちらついている。

 国王との決戦を前にして、彼女は期待を抱いているのだ。

 それが破滅に繋がりかねないことを知りながら衝動を止められない――止めたくないのだろう。


 心を躍らせるエイダは、こちらを見て問いかける。


「さあ、いよいよご対面だ。覚悟はできているかね」


「大丈夫だよー」


「問題ない」


 返答を聞いて頷いたエイダは、扉に手をかけて一気に開く。

 薄暗い謁見の間の奥に、複数の人影が佇んでいた。

 玉座に腰掛ける者もいる。

 室内に踏み込んだエイダは、いつもの調子で切り出した。


「ごきげんよう、国王陛下。少し私の話に付き合ってくれるかな」

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