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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第75話 同じ道を辿るのか

 冗談を頻発するエイダだが、今回はどうやら本気らしい。

 彼女の横顔に欺瞞は感じられなかった。

 正真正銘、心底からの気持ちが曝け出されている。


(……過剰な知識欲か)


 それは己を破滅させる危険性を孕み、生物としての本能を度外視した衝動であった。

 あらゆる思想や観念を押し退けて優先されてしまうのだ。

 捉えようによっては人間性の破棄とも受け取れる。

 真っ当な感性から大きく外れているのは言うまでもなかった。


(同じ道を辿る者がいるとは)


 内なる衝動に駆られたエイダの姿に既視感を覚える。

 思い起こされるのは遥か昔の記憶だ。

 記憶の保持がまだ完璧ではなかった頃なので、内容は曖昧で忘れかけている。

 それでも未だに振り返ることがあるのは、己にとって重要だからだろう。


 とある動乱の時代。

 一人の男が身の丈に合わぬ探求心の果てに狂った。

 数十年の人生で得られる知識量に満足せず、あらゆる禁術を以てして存命を試みた。

 途方もない回数の失敗を繰り返し、それでも諦めずに試行し続けた。

 断念するという選択肢はなかった。

 様々な系統の不老不死の脆弱性や欠点を洗い出し、懲りずに考案と推察と断念を重ねていった。


 そうして行き着いたのが自我だけに絞った存続である。

 強靭な肉体も膨大な魔力も高位に至った魂も残らず投げ捨てて、個人の最小単位を繋げることに成功させた。

 目的を見据えて機能を限定することで、理想の記録能力を手にしたのだ。

 もはや誰も知らない出来事であり、蔵書狂という存在の発祥と言える。


 エイダからは当時の己の片鱗が垣間見えた。

 人間的な強さを超えて、別の何かに至ろうとしている。

 鬱屈して行き場を求める感情が世界法則を上回る兆しがあった。


 しかし、それが実を結ぶのは今この瞬間ではない。

 そもそも無事に形を成すかも分からないのだ。

 どこかで自滅する可能性も十二分にある。

 エイダは無力な人間のまま逆境を乗り越えねばならなかった。


 余計な思考を片隅に追いやり、エイダに淡々と忠告をする。


「お前が如何なる末路を辿ろうと責任は取らない」


「それで構わないよ。一線を越えて暴走する私を止める義務はないからね」


 エイダは飄々と肩をすくめる。

 先ほど見えた狂気は瞳の裏に消えていた。

 彼女はさも当然のように述べる。


「蔵書狂の君に望むことは、賢者エイダ・ルースの末路の記録かな。後世にどう伝わるかは定かではないけど、少なくとも君だけは真実を知ってくれる」


 エイダはこちらを見つめて笑う。

 その顔は少し寂しそうだが悲壮感はなく、むしろ前向きな心持ちが感じられた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! ……ヴィブルがなんだかんだあってもエイダに手を貸しているのは、エイダがかつての己に似ていたせいもありそうだ。 [一言] 続きも楽しみにしています!
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