第69話 王都
黒衣の集団との戦闘を経てさらに移動を続ける。
あれから襲撃は止まった。
監視くらいはされているだろうが、直接的な被害は受けていない。
道中での暗殺は不可能だと国王は結論付けたらしい。
これまでの刺客もすべて通用しなかったのだ。
魔人の部隊が負けたのだから、これ以上の戦力は投入できないはずである。
何らかの対策を準備している最中かもしれないが、現時点で我々の移動を妨げる余裕はないと思われる。
数日後、我々は特に何事もなく王都まで辿り着いた。
遠目に望む王都は、外壁に囲われた立派な都市だ。
多重の結界で外敵を拒んでおり、明らかに禁術と思しきものも使用されている。
我々の来訪に合わせて厳重な守りを敷いたのだろう。
腰に手を当てるエイダは、目を細めて王都を観察する。
「無事に到着できたのは良いけど不気味だね。嵐の前の静けさというか……」
「嵐で済めばいいがな」
「不吉なことを言わないでくれよ。これ以上の騒動は懲り懲りなんだ」
苦笑するエイダは全身各所に傷を負っている。
片腕は使い物にならない状態だ。
一連の出来事で痛ましい姿となったのであった。
そんな彼女を問い詰める。
「逆に訊くが、このまま平穏に終わると思っているのか」
「まず無理だろうね。国王は私を始末するつもりだ。決して諦めないだろう」
エイダはあっさりと言う。
冷めた眼差しは、現実だけを見据えていた。
感情を排して思考できている証拠だ。
顎を撫でるエイダは語る。
「魔族と繋がりを持つ国王にとって、賢者という存在は厄介極まりない。実際の私は無力なわけだが、既成事実ができてしまった。言い逃れなど論外だし、向こうが方針を変えることはまずないね」
「それでも話し合いをするのか」
「もちろんさ。ヴィブルとルナがいれば、どんな相手だろうと交渉に持ち込める。正面衝突は国王も避けたい展開だろうからね。まともにやり合えば戦争になりかねない」
信念の揺らぎはまったく見られない。
エイダの言葉に嘘は誤魔化しは含まれていなかった。
すっかり英雄としての気質が馴染んでいる。
ここでルナが挙手をした。
彼女は王都を指差しながら質問する。
「どうやって王様に会うの? 警備がたくさんいるよ」
「確かに気付かれずに潜入するのは不可能だね。ルナは気配を消すのが得意だけど、私とヴィブルは隠密系の能力を持たない」
「うんうん。絶対に見つかっちゃうよ」
「分かっているとも。だから私に考えがある」
そう述べたエイダは、堂々と王都へ向かい始めた。
止める間もなく進んでいくと、門を守る兵士に声をかける。
怪訝そうだった兵士達は、唐突に慌て出した。
どうやらこちらの素性に気付いたらしい。
彼らは急いで門を閉じると、仲間達を集めてくる。
そうして武器を構えて我々の前に立ちはだかってきた。
兵士の反応にも臆せず、エイダは胸を張って言い放つ。
「――闇の賢者エイダ・ルースが来た。国王陛下に謁見したい。開けてくれるかね」




