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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第63話 絶望の因果

 茂みから黒衣を着た十数人の集団が現れる。

 無言の彼らは、金属製の仮面で顔を隠していた。

 それぞれ革表紙の書物を所持している。

 彼らは統率の取れた動きで横一列に並び、いつでも術を行使できる態勢でこちらを注視する。


(一切の動揺がない。冷静な集団だ)


 一連の行動だけで向こうの実力が垣間見える。

 加えてまだ姿を見せていない者が茂みの中を散開し、こちらを包囲しにかかっていた。

 実力は姿を現した者達と同程度だろう。

 我々の動き次第で、相互に援護するのが作戦のようである。

 単純だが隙がない。

 この狭い山道では逃げ場もなかった。


(絶望的な戦力差だな。かなり不味い状況だ)


 ただの賞金稼ぎとは本質的に異なる。

 高度な暗殺訓練を受けているのは明白だった。

 魔術的な能力も常人の域を脱している。

 標的の抹殺に特化しており、話し合いが通じそうな雰囲気ではない。

 見せしめの惨殺もおそらく効かないだろう。


 総じてエイダにとって天敵である。

 彼女の力では間違いなく対抗できない。

 手持ちの魔道具は性能不足で、一撃必殺に近い彼らの術を防ぐのには向いていなかった。

 そもそも手数の差で負けているため、どうすることもできない。


 彼らの使う術は殺傷力が高すぎる。

 一般的な基準なら禁術に指定されているはずだ。

 習得するだけで重罪となるに違いない。


 ルナも同様に不利と言える。

 いくら勇者の末裔でも、魂を破壊する魔術を連打されれば無事では済むまい。

 ましてやエイダの護衛と反撃を兼ねるのは困難に等しかった。

 つまり絶体絶命の状況である。


 分析を終えたところで、周囲へと静かに羊皮紙を伸ばしていく。

 黒衣の集団は動かない。

 自分達が有利だと理解しているからこそ、迂闊な攻撃で形勢を崩さないようにしている。

 周囲に対して牽制を行いつつ、ルナに指示を飛ばす。


「エイダを守れ。お前が適任だ」


「わかった。任せて」


 ルナは真剣な顔で頷いた。

 そして両手に短剣を持って防御重視の構えを取る。

 攻撃役を放棄した分、やりやすくなったはずだ。

 これでひとまずは大丈夫だろう。


 事態の推移を見守っていたエイダが茶化してくる。


「珍しいね。君が戦いに積極的だとは」


「特例だ。さすがに勝ち目がない」


「ほう……断言するほどか」


 エイダの口調は軽いが、表情には緊張が表れていた。

 周囲を囲う黒衣の集団を用心深く観察している。

 しかし、彼女にできることは皆無だ。

 あまりにも分が悪く、無力な存在であった。

 故にここで助手の出番というわけだった。


「精神的に成長した今のお前ならば、力に依存することもないだろう。だから適材適所で行動してもいいと思った」


「ほう、信頼してくれるのか。それは嬉しいね」


「客観的な事実に基づく合理的判断だ」


 すぐさま訂正するも、エイダは嬉しそうに笑っている。

 窮地であるのにも関わらず絶望していないのは、必ず打破できると思っているからだろう。

 向けられた信頼には少しの疑念も含まれていなかった。

 エイダの期待を感じつつ、それには触れずに指摘をする。


「それよりも気付いているか」


「もちろん。因果なものだよ、まったく」


 改めて黒衣の集団を見つめる。

 彼らが持っているのは、かつてエイダに託した魔導書の一種だった。

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