表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/115

第6話 迷いの森を進む

 二日後、疲労から回復したエイダと共に図書館を発つ。

 不在になったところで誰も困りはしない。

 知識を求めて来訪する者など、本来なら数十年に一人いるかどうかといった具合である。

 当たり前のように通うエイダが異常なだけなのだ。


 薄暗い迷いの森を先導して進んでいく。

 後ろをついてくるエイダは、欠伸をしながら謝罪をする。


「いやぁ、すまないね。迷惑をかけてしまった」


「無茶をするからだ」


「そうでもしないと君を雇えなかったからね。必要経費だと思うよ」


 エイダはまだ疲れの残る顔で笑う。

 歩ける程度にはなったが、まだ本調子とは言えないだろう。

 九日間も人生を語り続けたのだ。

 死ななかっただけ幸運である。


 エイダは前方を指差すと、意気揚々と宣言した。


「さあ、行こう! 君がいればどんな困難も怖くない」


 憔悴していたのが嘘のように元気だ。

 いや、意識的にそのように振る舞わないと心身が持たないのだろう。

 蔵書狂と手を結ぶという目的は達したが、それは第一関門に過ぎない。

 問題の根本的な解決とは直結していなかった。

 絶望に打ちのめされないように、エイダは精一杯に気力を振り絞っているのである。


 饒舌なエイダの相手をしつつ、迷いの森の景色を眺める。

 図書館から見ることはあったが、こうして間近で接するのは久しかった。

 土を踏み締める感触も懐かしく思える。


(外界に赴くのはいつぶりだろうか)


 いつも知識の海に沈んでいるので、出かけるという発想に至らない。

 出会いと言えば、図書館を訪れる者くらいだ。

 それだけで十分であった。

 自ら外界に触れれば、余計な干渉を起こしかねない。

 そういった危惧もあり、なるべく関わらないようにしてきた。

 今回は特別だった。


 しばらく歩いたところでエイダが不安そうに言う。


「目印も付けずに進んでいるけど大丈夫かい?」


「問題ない。迷いの森の構造は網羅している」


「ほほう、さすがは蔵書狂だ」


 知識があれば困らない。

 普通であれば往来に数週間を要しかねない秘境も、こうして最短距離で進むことができる。

 今日中には迷いの森を出られるだろう。

 付近の植物で腹を満たせば、エイダが飢えることもない。

 知っている者からすれば、迷いの森は住みやすい環境であった。


 エイダが不意に手を打つ。

 何か閃いたらしく、彼女は目を輝かせて提案した。


「そうだ! 君の知識を参考に迷いの森の地図を作ったら高く売れそうだな。この地域にしか群生しない植物の稀少性を考えると……」


「まったく懲りていないのか。知識の使い方を誤れば破滅を招くぞ」


「冗談だよ。さすがに私も反省した。当分は金儲けを自粛するつもりだ」


 エイダは残念そうに述べる。

 その表情からして、隙あらば実行するつもりではないだろうか。

 十年に渡って魔導書を売り捌いたのだから、それくらいはやりかねないところがある。

 目をそらして口笛を吹くエイダを見て、疑念を抱かざるを得なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ