表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/115

第58話 非情な宣告

 賞金稼ぎ達は怯み、露骨に攻撃を躊躇っている。

 ちょうど先ほどまでのエイダと似たような状態だった。

 仲間の惨たらしい死に様を目の当たりにして、狭まっていた視野が正常に戻りつつあるらしい。

 動揺が精神魔術の効力を緩めている。


(進退が窮まっている。非情な殺人が彼らの理性を引き戻したのだ)


 例えるなら、冷水をかけられて酔いが醒めた感覚に近い。

 引き戻された理性は恐怖を呼び起こし、無謀な行動に制限をかける。

 最も大きな点は、彼らに対話の可能性を生み出したことだろう。


 非情ながらも的確な一手を打ったエイダは、冷酷さを全面に出して賞金稼ぎ達に問いかける。


「次は誰が死にたいのかね?」


 その言葉に彼らは凍り付く。

 戦慄と後悔が色濃く渦巻いていた。

 エイダは畳みかけるように嘲笑してみせる。


「クク、一生懸命に結界を壊す君達を眺めるのは愉快だったよ……そちらの気分はどうかな」


 答える者はいない。

 ここで威勢よく言い返せば流れも多少は変わったろうが、それだけの度胸はないようだ。


 エイダが賞金稼ぎの一人を指差す。

 次の瞬間、ルナが何かを投げる。

 指を差された賞金稼ぎが奇妙な声を上げた。


「ぎゅぶっ」


 その額からは小さなナイフが生えている。

 白目を剥いた賞金稼ぎは絶命し、他の者達は驚いて飛び退いた。

 エイダは深々とため息を吐く。


「まったく情けない。私の首にどれだけの価値が付けられたか知らないが、この人数で仕留められると思ったのかね。ちょっと慢心が過ぎるのではないかな」


 賞金稼ぎ達は尚も黙り込む。

 迂闊な発言が死を招くと理解しているのだ。

 もっとも、無言が無難な反応ではない場合もある。

 不気味な静寂に舌打ちしたエイダは、煩わしそうに命令を下す。


「ルナ、追加で三人だ」


「はーい」


 気楽なかけ声に合わせてナイフが投擲される。

 三本のナイフは同じ数の人間を殺害した。

 首や胸に刃を受けた賞金稼ぎはそれぞれ倒れて動かなくなる。

 死体とぶつかった男が泣き顔で両手を上げた。


「待ってくれ! 俺は降参するッ! だから命だけは――」


 発言の途中、壺から放たれた結界の破片が男の顔面を叩き割った。

 エイダは視線を鋭くして述べる。


「ふざけるな。許されると思っているのかね。君達の前にいるのは闇の賢者だぞ」


 賞金稼ぎ達は息を呑む。

 もう誰も逆らうことができなかった。

 降参しても殺されると分かってしまったのだ。

 かと言って反撃に出たところで、ルナの餌食となるのは目に見えている。


 追い詰められた賞金稼ぎ達を前に、エイダは小さく肩をすくめた。


「まあ、私にも慈悲の心はある。意地汚く逃げ惑う者を皆殺しにするほど非情じゃない」


 エイダが不意に口を開けて舌を出す。

 舌は真っ黒に染まり、表面が不規則に蠢いていた。

 唇を撫でたエイダは宣告する。


「――ここから先は祈り、懺悔したまえ。」


 地面が揺れ動く。

 困惑する賞金稼ぎの足下から、無数の影が噴き上がった。

 それらは人間の手の形となって宙を飛び交い始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ