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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第57話 犠牲を許容し、進む

 エイダがこちらを見つめる。

 頷いた彼女は、芯の通った声音で感謝を口にした。


「――分かったよ。ありがとう」


 結界が破壊された。

 執拗な攻撃によって術式が乱れて、粉々になった破片が発生源の壺へと吸い込まれていく。

 双方を隔てる物がなくなり、賞金稼ぎ達が我先にと殺到してきた。


 しかしエイダは慌てない。

 彼女はぎらついた双眸で彼らを凝視し、静かに発言する。


「ルナ」


「なに?」


「二人だ。二人だけでいい。ただし残酷にやってくれ」


 エイダは淡々と命じる。

 返事をせずに動き出したルナは、最も近くにいた賞金稼ぎの腹に短剣を突き刺し、素早く振り抜いた。


 血飛沫が散って賞金稼ぎが崩れ落ちる。

 その男はこぼれ落ちる臓腑を驚きながら掻き集めようとしていた。

 ところが、首に赤い線ができて頭部が転がり落ちたことで止まる。


 ルナは別の一人に狙いを移し、反応される前に顔面を滅多刺しにした。

 短剣には、くり抜かれた左右の眼球が串刺しとなっている。

 仕上げにルナが喉を一突きすると、その賞金稼ぎは声を発することなく倒れて息絶えた。


 瞬時に二人を殺害したルナのそばで、エイダは不敵な笑みを湛える。


「さて、世界最悪の汚名を被ってみようか」


 エイダが壺を蹴り転がす。

 刹那、回収された結界の破片が勢いよく射出された。

 軌道上に立っていた数人の賞金稼ぎが、人体を切断されて転倒する。

 切り離された四肢が地面に散乱した。

 すぐさま多数の悲鳴が上がる。


「ひいぃっ!?」


「さ、下がれ! 危険だぞ!」


 賞金稼ぎ達は接近を中断し、一斉に下がって距離を取った。

 壺に足をかけたエイダは高らかに嘲笑う。


「ふはは、魔道具は使いようなのだよ」


 邪悪な表情を作っているが、その背中は微かに震えていた。

 所詮は演技なのだ。

 彼女は多少の犠牲を呑み、悪役に徹することで事態の鎮静化を図っている。

 本心からの行動でないのは明白であった。


(無理をしている……が、それを悟らせていない。虚勢と強がりだけは一流だな)


 偽りの賢者としての実績が活きている。

 隣にルナがいるのも大きい。

 彼女が凄惨な殺しを披露したことで説得力が増していた。

 現実的かつ原始的な恐怖が、賞金稼ぎ達の心に刻み込まれていた。


(手出しするまでもないか)


 羊皮紙の腕を伸ばし、ルナが殺した死体に触れる。

 そうして残された記憶を回収した。


 魂の喪失と同時に、死体の持つ情報は急速に綻ぶ。

 ただ、まだ新鮮なので最低限の役目は果たしてくれる。


 記憶の読み取りは滞りなく完了した。

 やはりエイダは指名手配されているらしく、魔族を支配する闇の賢者だと認知されていた。

 莫大な懸賞金のせいで命を狙われるようになり、加えてエイダが弱っているという噂まで流れている。

 賞金稼ぎ達が無謀な襲撃を仕掛けてきたのは、この噂を信じたからだった。


(やはり国王による情報操作か。すべてエイダに押し付ける気のようだ)


 魔爪の導示は、今後も水面下で活動するつもりなのだろう。

 なんとも狡猾なやり口である。

 ここで策の全貌を知り、対抗のために動けるのは幸運だったと言えよう。

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