第55話 突破方法を模索する
賞金稼ぎ達が結界の破壊を急ぐ中、エイダは尚も説得を続ける。
「君達に勝ち目はない! 余計な争いをする必要はないんだ! もうやめてくれっ!」
やはり誰一人として耳を貸すそぶりを見せない。
彼らの目は欲望に駆られていた。
何か言っても無駄であるのは明白であった。
呼びかけを止めないエイダに指摘を挟む。
「命乞いにしか聞こえない。彼らを攻撃性を煽るだけだ」
「分かっているよ。しかし、このままでは……」
エイダが逡巡するうちに異音が鳴った。
結界に亀裂が走り、今にも砕け散りそうになっている。
耐久力の限界が近いのだ。
それに気付いた賞金稼ぎはさらに躍起になって攻撃を繰り返す。
エイダは髪を掻き毟り、苦い顔で愚痴を垂れる。
「これだから理性の欠けた相手は苦手なんだ。交渉の席に座ってもらえないと私の本領が発揮できない……」
「相性の悪い人間だろうと誑し込むのが詐欺師の手腕ではないか」
「簡単に言わないでくれよ。他者の心を操るのは高等技術だ。様々な要素が複雑に絡んでくるから、気軽にできるものじゃない。強力な精神魔術が使えるなら話は別だろうがね」
エイダの嘆きを聞いて、一つの可能性に思い至る。
賞金稼ぎ達に注目してみると、彼らの目つきや動きに違和感を覚える。
(なるほど。精神魔術か)
こちらの気付きを察したエイダは、目ざとく問いかけてきた。
「何か分かったのかね」
「彼らは精神魔術を施されている。洗脳未満の暗示や思い込みだがな。お前が悪であることを擦り込まれているようだ。そのせいで余計に話が通じにくくなっている」
「ふむ、魔爪の導示が裏工作をしているみたいだね。実に厄介だ」
「おそらく国内各地で同じことが実施されている。逃げ場はないと見ていいだろう」
推測を述べると、エイダが険しい表情で小さく呻く。
国内全域が敵対している状況は、さすがの彼女でも軽口を言えないようだ。
「結界が間もなく割れる。どうする」
「な、なんとか穏便に撤退は……」
「不可能だ。お前は誰よりも理解しているだろう」
そう告げると、エイダは押し黙る。
決断できない彼女に対し、ルナは単刀直入に言った。
「エイダちゃん、殺そうよ」
「ルナ……」
「この人達、もうだめだよ。話し合いは無理だし、殺すのが一番でしょ」
「命までは取らなくてもいいんじゃないか。気絶させるだけでも抑止力に……」
「殺すのが確実だよ。向こうも覚悟してると思うし」
ルナは静かに主張する。
若き殺人鬼の口ぶりには、欠片の迷いも見受けられなかった。




