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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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55/115

第55話 突破方法を模索する

 賞金稼ぎ達が結界の破壊を急ぐ中、エイダは尚も説得を続ける。


「君達に勝ち目はない! 余計な争いをする必要はないんだ! もうやめてくれっ!」


 やはり誰一人として耳を貸すそぶりを見せない。

 彼らの目は欲望に駆られていた。

 何か言っても無駄であるのは明白であった。

 呼びかけを止めないエイダに指摘を挟む。


「命乞いにしか聞こえない。彼らを攻撃性を煽るだけだ」


「分かっているよ。しかし、このままでは……」


 エイダが逡巡するうちに異音が鳴った。

 結界に亀裂が走り、今にも砕け散りそうになっている。

 耐久力の限界が近いのだ。

 それに気付いた賞金稼ぎはさらに躍起になって攻撃を繰り返す。


 エイダは髪を掻き毟り、苦い顔で愚痴を垂れる。


「これだから理性の欠けた相手は苦手なんだ。交渉の席に座ってもらえないと私の本領が発揮できない……」


「相性の悪い人間だろうと誑し込むのが詐欺師の手腕ではないか」


「簡単に言わないでくれよ。他者の心を操るのは高等技術だ。様々な要素が複雑に絡んでくるから、気軽にできるものじゃない。強力な精神魔術が使えるなら話は別だろうがね」


 エイダの嘆きを聞いて、一つの可能性に思い至る。

 賞金稼ぎ達に注目してみると、彼らの目つきや動きに違和感を覚える。


(なるほど。精神魔術か)


 こちらの気付きを察したエイダは、目ざとく問いかけてきた。


「何か分かったのかね」


「彼らは精神魔術を施されている。洗脳未満の暗示や思い込みだがな。お前が悪であることを擦り込まれているようだ。そのせいで余計に話が通じにくくなっている」


「ふむ、魔爪の導示が裏工作をしているみたいだね。実に厄介だ」


「おそらく国内各地で同じことが実施されている。逃げ場はないと見ていいだろう」


 推測を述べると、エイダが険しい表情で小さく呻く。

 国内全域が敵対している状況は、さすがの彼女でも軽口を言えないようだ。


「結界が間もなく割れる。どうする」


「な、なんとか穏便に撤退は……」


「不可能だ。お前は誰よりも理解しているだろう」


 そう告げると、エイダは押し黙る。

 決断できない彼女に対し、ルナは単刀直入に言った。


「エイダちゃん、殺そうよ」


「ルナ……」


「この人達、もうだめだよ。話し合いは無理だし、殺すのが一番でしょ」


「命までは取らなくてもいいんじゃないか。気絶させるだけでも抑止力に……」


「殺すのが確実だよ。向こうも覚悟してると思うし」


 ルナは静かに主張する。

 若き殺人鬼の口ぶりには、欠片の迷いも見受けられなかった。

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