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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第53話 情報操作

 王都へ向かう道中、前方に中規模の街が見えてきた。

 周囲は頑強な外壁に囲われており、魔物から襲われやすい地域であることを示している。

 エイダは街を指差して提案する。


「食糧を補充したい。少し寄って行こう」


 進もうとしたエイダの肩にルナが手を置く。

 彼女は少し深刻な表情で述べた。


「待って。何かおかしいよ」


「また魔族か魔人が潜んでいるのかな」


「違う。これは――」


 ルナが言いかけた瞬間、彼女がいきなり短剣を振るう。

 斬撃が何かを弾いて甲高い音を鳴らした。

 回転して地面に突き刺さったのは一本の矢だった。

 全体から魔力を放出するそれを見て、エイダは驚愕してたじろぐ。


「な、なんだ!?」


「弓矢による狙撃だ。魔術強化が施されていた。対魔術師を想定した暗殺だろう」


「魔爪の導示の手がここまで回っているのか……」


 エイダが呟く間に、続々と新たな矢が飛来した。

 街から放たれる矢の雨が付近一帯をまとめて攻撃してくる。

 屈むエイダを庇うようにルナが短剣を振るい続ける。

 それによって二人は無傷で済んでいた。


 羊皮紙の身体は穴だらけになったが、当然ながら問題はない。

 余裕があるので命中した矢を分析して記録を取っておく。

 魔術強化は並程度の練度のようだ。

 そのことから街に突出した術者がいないことが窺える。


 しばらくすると矢の雨が止まった。

 ひとしきり射ったところで様子見でもしているのだろうか。

 或いは第二陣の準備でもしているのかもしれない。

 少しも疲労した様子がないルナは、何もできないエイダに笑いかける。


「あたしが守るから大丈夫」


「ありがとう、とても頼もしいよ」


 応じながらエイダは荷物を漁っている。

 この状況で使える魔道具を探しているのだろう。

 突然の事態の対応力に関しては、まだ常人の域を脱していないようである。

 何もせずに傍観していると、間もなく物理的な作用を伴わない声が反響してきた。


『闇の賢者エイダ・ルース。今すぐに投降せよ。これは警告だ』


 エイダとルナが周囲を見渡す。

 声の主は見当たらない。

 それも当然のことだ。

 今のは街の方角から遠隔で告げられたものであった。

 エイダはすぐさま正体に思い至って答えを言う。


「思念魔術か?」


「そのようだな」


 思念魔術とは、離れた場所にいる相手に言葉を伝える術だ。

 魔力探知に優れていれば発信源が分かるため、主に味方同士の意思疎通に用いられることが多い。

 我々に届けられた声は、嫌悪感の滲む口調で話し続ける。


『貴様の悪事は各地に周知されている。既に逃げ場は存在しない。貴様の野望もここまでだ』


 エイダが口を曲げた。

 彼女は首を傾げて不思議そうに言う。


「私が悪人だと言っている」


「あながち間違っていないだろう」


「ははは、ヴィブルも冗談が言えたのだね」


 それきり思念魔術は止まってしまった。

 必要最低限のことは伝えたということらしい。

 余計なやり取りをする気はないという意思表示でもあった。

 同じことを悟ったらしく、エイダは慌てることなく意見を述べる。


「何やら情報操作で面倒なことになっているらしい。残念だが街は迂回しよう。わざわざ事を荒立てる必要もない」


「情報収集はしなくていいのか」


「その前に行方を眩ませたい。まずは事態の沈静化が優先だ。可能ならば、王都まで他者との接触を控えて向かうべきだね」


 やり取りをしていると、ルナがエイダの袖を引っ張った。

 ルナは街の方角を指差す。


「誰か来るよ」


 街の門が開き、そこから数十人の人間が現れたところだった。

 彼らは雄叫びを上げてこちらに突進してくる。

 不揃いの装備を見るに、正規の軍隊ではないだろう。


「賞金稼ぎといったところか。お前の命を狙っているようだ」


「まったく、人気者は辛いね」


 エイダは皮肉交じりに嘆く。

 焦りが感じられないのは、敗北の可能性がないと考えているからだろう。

 彼女から全幅の信頼を向けられているがよく分かった。

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