表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/115

第52話 エセ賢者の成長

 翌日、坑道を脱出して王都へと向かう。

 魔爪の導示の頭領が王だと判明したことで、明確な行き先と方針が定まった。

 各地を巡って何か行動を起こすより、直接対決に持ち込むのが手っ取り早いという結論に至ったのだ。


 判断したのはエイダであった。

 当の彼女は移動しながら悩み続けている。

 常に難しい顔をしており、食事や睡眠も満足にできない。

 思考の妨げになると考えているのか、口数も極端に減っていた。


(この後の展開を予測しているのか)


 エイダが才能を発揮するのは主に頭脳面だ。

 むしろそれ以外は常人並みで、考え抜くことが唯一の役目と言ってもいい。


 山岳地帯を進む途中、ほぼ無言を貫くエイダに尋ねる。


「何か閃いたか」


「ふむ……どうだろうね。暴力による解決は簡単だけど、それ以外となると途端に難しくなる。ヴィブルのおかげで情報が揃っている分、有利すぎるとは思うのだがね」


 エイダは肩をすくめて語る。

 今回の目的は国王の殺害ではない。

 求めているのは穏便な解決方法だった。

 相手を交渉の席に座らせるための暴力は必要だが、決定打は別に用意せねばなるまい。


 魔人との戦いで新たな情報を得られたのは大きい。

 エイダの脳内ではそれらの整理と分析が行われているのだろう。

 そうして新たな道のりが構築されている最中に違いない。

 今のところ想像も付かないが、何らかの予想図はあるはずだ。


 期待を抱いていると、エイダは冗談交じりに嘆息した。


「いやはや、戦いが激化すると己の無力さを痛感するよ。そろそろ身が持たなくなりそうだ」


「死なない限りは進み続けられる。諦めるな」


「はは、前向きな言葉を貰えて嬉しいよ。君の知識で治療を施してくれたら、もっと感謝するのだがね」


「知識を持っているだけだ。技能面では頼ってくるな」


「分かっているとも」


 頷くエイダの横顔は以前までとは別人である。

 数々の戦いで負った傷のせいで弱々しく見えるものの、内面の成長は計り知れない。


 焼け落ちた別荘から治療系の魔道具や薬を回収したことで、エイダは長距離を歩ける程度にまで回復していた。

 未だ満身創痍と称しても差し支えない状態であるが、鎮痛剤でなんとか誤魔化している。

 悠長に休んでいる暇はないのだ。

 安穏な日々が欲しければ、一連の騒動を止めなければならない。


 ルナの血を使った治療なら回復も速いが、あれは一時的に彼女自身の不死性を弱めてしまうらしい。

 実質的な戦力低下なので軽率に使うべきではない。

 故にエイダも我慢し、地道な治療だけに頼っている。


(表面上は愚痴や泣き言を洩らすが、精神的には落ち着いている。相変わらず人間離れした胆力だ)


 天性のものではない。

 成長して会得した性質だ。

 まったく大したものである。


 慢性的な苦痛を押し殺して、エイダは涼しい笑みを浮かべた。


「ヴィブルとルナ、君達がいればまず負けないさ。なんとか上手い着地点を見つけるから協力してほしい」


「うん、任せて」


「助手として可能な範疇で力を貸そう」


 返答を聞いたエイダは嬉しそうに頷く。

 善人とは言い難い彼女だが、少なからず人徳はあるようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ