第49話 必殺の能力
歩を進めていくと、魔人の両目が連続で瞬く。
エイダとルナは動けないようだが、こちらに変化はない。
いくら発動されても影響はなかった。
やがて魔眼が無駄だと悟った魔人は、警戒した面持ちで問いかけてくる。
「なぜ動くことができる。視線は合ったはずだ」
「根本的な構造が違う。その魔眼は生体にのみ通用するようだ。故にこの身には効果がない」
仮に魔眼が効いて動きを止められたところで無意味である。
その時は別の対策を講じるまでだった。
羊皮紙の身体は変幻自在でこれといった制限がない。
自我との結びつきも曖昧だ。
便宜的に人型にしているだけであり、力を解放すれば坑道全域を埋め尽くすことも可能であろう。
もっとも、そこまですると知識欲の暴走が懸念されるため、実際に披露する場面はない。
魔人は視線を鋭くした。
それから静かに構えを撮って愚痴る。
「厄介な従者だ。命を持たない魔術生物とは」
間違った解釈だが訂正する義理もない。
それよりここから彼がどう対抗してくるか興味があった。
ゆっくりと近付きながら、密かに期待を膨らませて反応を待つ。
魔人は髪を後ろに掻き上げてぼやいた。
「仕方あるまい。なるべく魔眼だけで処理したかったのだが」
素早く動いた魔人の指が何らかの術式を空中に刻む。
それが発光した瞬間、羊皮紙の身体に黄金の炎が発生した。
炎は眩い輝きを発して身体を芯まで蝕んでいく。
勝利を確信したのか、魔人は邪悪な笑みを満面に湛えて言った。
「魂を燃やす炎だ。一度着火すれば、あとは死ぬまで消えることはない」
説明を聞きながら炎の性質を分析する。
確かに魔人は嘘を言っていない。
この炎は対象の魂を焼くことに特化しているようだ。
物理的な破壊力もそれなりにあるが、本領は魂の焼失と言えよう。
試しに叩いても炎は消えない。
それどころか加速して全身を包み込む始末だった。
なるほど、これは確かに面倒だ。
相手の能力にもよるが、一撃で戦局を覆すだけの性能がある。
不意を突けば格上だろうと抹殺できるだろう。
分析を終えたところで、燃える羊皮紙を分離した。
黄金の炎が延焼してくるも、何度も細かく分離を繰り返すことで逃れる。
羊皮紙の一部を燃やし尽くした炎はあえなく消滅した。
修復を始めた身体を見下ろして一言述べる。
「この程度か」
そして視線を魔人へと戻す。
炎の発動でさらに消耗した魔人は、脂汗を垂らしながら驚愕していた。




