第48話 魔眼の脅威
魔人は片手に松明を掲げていた。
苛立たしげに舌打ちすると、深々と嘆息を洩らす。
「手分けして倒せばいいと豪語しておきながら……とんだ期待外れだ。殺されて当然の奴らだったな」
エイダが前に進み出ると、不敵な笑みを湛えた。
彼女は虚勢を全開にして発言する。
「形勢は逆転した。まだ戦う気かね」
「無論だ。他の二人は足手まといだった。状況は変わらん」
魔人は淡々と応じてみせる。
こちらは強がりではなく、純粋にそう考えているのだろう。
魔人は殺意に満ちた双眸で宣言した。
「――何も難しいことではない。この手で貴様らを皆殺しにするだけだ」
その直後、エイダとルナの身体が硬直する。
二人は困惑した様子で抵抗しようとするも、首から下が一切動かない。
魔人は愚痴を垂らしながら近付いてくる。
「貴重な魔人が二人も減った。奴らの死体を回収して、新たな構成員に移植せねば。今度は知性の高い者を優先しよう。力だけの馬鹿は駄目だった」
魔人は途中で足を止めた。
彼はエイダを指差して指摘する。
「賢者エイダ。貴様などは適材なのだがな。魔人になる素質がある」
「生憎だが断らせてもらうよ。間に合っているものでね。私には魔術の叡智がある」
「知っている。貴様は目障りだ。ここで死ね」
魔人は禍々しい雰囲気で笑う。
動きを止めたまま仕掛けてくるつもりなのだろう。
エイダは視線をルナに向けると、弱った様子で頼んだ。
「あいつを倒してくれないかな……?」
「うーん、動けないよ」
ルナも困った様子で言う。
不死身の彼女も今の状態から逃れる術は持たない。
状況が動かないようなので、ひとまず判明した事実を二人に告げる。
「魔眼の能力だ。目を合わせることで相手の動きを封じるらしい。会話の中で仕込んでいたのだろう。暗所で松明を使うことで、意図的に視線を誘導していたのだ」
「くそ、やられた。まさかここまで強力だとは……」
エイダは悔しげにぼやく。
相手は彼女の予想を超えていたようだ。
余裕ぶった魔人だが、実際は大きく消耗している。
能力の持続にはそれなりの力を使っているのだ。
それを悟らせないようにしているのは、心理的な圧力をかけるためだろう。
(明らかに無理をしている。ここで一気に畳みかけるつもりか)
消耗を加味しても、エイダ達に絶望を与えることが優先だと判断している。
抵抗を諦めさせて殺すのが一番だと考えたのだ。
両者の状況を観察しつつ、未だ囚われたエイダに問いかける。
「どうする。このままだと全滅だが」
「…………」
「何か策略はないのか」
「ちょっと厳しいね。今のままでは使えそうにない、かな」
エイダは正直に吐露する。
身動きが取れず、魔道具を使えないのだ。
さすがに厳しいようである。
(戦力差を考えれば善戦したと評してもいい)
少し考えてから、二人を置いて前に進んでいく。
魔人が能力を再使用するが、羊皮紙の身体が影響を受けることはない。
そのまま歩きながらエイダに告げる。
「ここは任せろ。特別に処理してやろう」




