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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第46話 助っ人参上

 四肢を失った魔人は、困惑しながら天井を見上げていた。

 僅かに身じろぎするもそれだけだ。

 さすがにここから瞬時に回復する術は持っていないらしい。

 魔人の口から血と共に弱々しい声が洩れ出す。


「な、に……が……」


 その直後、魔人の首が胴体から切り離される。

 混乱が張りついた表情は、それきり変わることはなかった。


 すぐそばに倒れていたエイダは、痛がりながら上体を起こす。

 首を撫でる彼女は、近くの暗闇に声をかけた。


「いやぁ、助かったよ。危うく殺されるところだった……さすがに肝を冷やしたね」


 暗闇から音もなく現れたのはルナだ。

 よく見ると壁に亀裂のような穴が開いている。

 ルナはそこに潜伏していた。


(魔人を殺したのはエイダの呪術ではない。ルナの不意打ちだ)


 凝縮反射という概念は存在しない。

 エイダが咄嗟に閃いた架空の術である。

 そのような都合の良い力があるはずがなかった。

 あれは気を引くための策で、ルナの奇襲を成功させるのが目的だった。


 四肢と首の切断もルナの仕業ならば頷ける。

 彼女のナイフ捌きは身を以て知っていた。

 世界最高峰と称すべき技量である。

 瞬時に魔人を解体することなど容易かったろう。


 元々、ルナは魔人とも互角以上に渡り合っていた。

 向こうが三人で連携を取ったことで押し負けたが、単独ならば凌駕する実力を持つ。

 両目を失った上、他に気を取られている魔人は格好の獲物だったに違いない。


 悲しそうな顔をするルナは、倒れるエイダに謝る。


「遅くなってごめんね」


「いや、気にしないでくれ。それより君こそ大丈夫なのかい?」


「うん。もうほとんど治ったよ」


 ルナは笑顔で胸を張ってみせる。

 魔人に蹴られて石炭の山に突っ込んだ彼女は高熱に焼かれたはずだ。

 常人なら死んでいるものだが、今の彼女は軽傷で済んでいる。

 無理をしている様子もないので本当に平気なのだろう。


(さすが勇者の末裔だ)


 かつて世界を救った勇者には特殊な力があった。

 魔王を倒すために妖精と契約し、不死身に近い肉体を獲得していたのだ。

 どのような傷から出も再生するという代物で、ルナも同様の特性を有するようだった。


 不死身と言えば聞こえは良い。

 しかし、世代を経ても継続し、普通ならば死ぬはずの苦痛を耐えねばならないのだ。

 たとえ死を望んでも拒まれる。

 それはもはや祝福というより呪いと呼ぶべきかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 読み返していて気になった点。 >不死身と言えば聞こえは良い。 >しかし、世代を経ても継続し、普通ならば死ぬはずの苦痛を耐えねばならないのだ。 >たとえ死を望んでも拒まれる。 >それは…
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