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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第45話 詐欺師の戯れ言

 エイダは錠剤を使ったが、状況が好転したわけではない。

 ほんの少しばかり延命しただけに過ぎず、危機は依然として去っていなかった。

 魔人は諦めずにこちらへと猛攻を続けている。

 両目はまだ治りそうにないものの、いずれエイダの抹殺に戻るはずだ。

 切り替えるのは時間の問題である。


 両者の状態を改めて整理し、状況から優劣を判断する。

 いや、実際には考えるまでもなかった。

 埋めようのない格差が露骨に表れている。


(さすがにエイダが不利か)


 基本的に戦闘となった時点で勝ち目がないのだ。

 濃聖水の罠で一人は殺せたが、あれは運が良かった面も大きい。

 相手の油断を突き、真っ当な攻防となる前だからこそ勝つことができた。

 近接戦闘の間合いは、エイダがあまりにも弱すぎる。

 いくら魔道具を揃えても厳しい戦力差であるのは否めなかった。


(ここは力を貸すべきかもしれない)


 考えているうちに、エイダが吐血した。

 その音を聞き付けた魔人が攻撃を中断し、すぐさま彼女のもとへと跳びかかる。

 即座に居場所を突き止めて襟首を掴み、乱暴に持ち上げてみせた。

 エイダは抵抗できずにされるがままとなっている。

 魔人は拳を振りかぶってエイダに告げる。


「とどめだ、クソ賢者」


「……君は一つ勘違いをしている」


「何?」


 意味深に笑うエイダの声を聞いて、魔人が怪訝そうな顔をする。

 拳はエイダの鼻先に触れる寸前で止まっていた。

 あと一瞬でも発言が遅ければ、彼女の顔面は粉砕されていたことだろう。

 実際はそうなる前に阻止するつもりだったが、両者はそこまで考えていないはずだ。


 エイダは血を吐きながら、くつくつと声を洩らす。

 ひとしきり笑った後、彼女は余裕綽々と述べた。


「追い詰められているのは君の方だよ」


「ハッ、ふざけんなよ。つまらねぇ嘘をつきやがって」


「本当さ。嘘と思うなら殺してみるといい。ここまでわざと攻撃を受けた理由を教えてあげよう」


 持ち上げられたままのエイダは、平然と語り始める。

 先ほどまで瀕死だったというのに、今は随分と元気そうだった。

 血だらけであることを感じさせない表情をしている。

 エイダは驚くほど饒舌に説明をし始めた。


「凝縮反射という言葉を知っているかな。肉体に刻まれた傷を倍返しで相手に押し付ける高等呪術だ。膨大な魔力と複雑な式が要求されるが、発動すれば不可避の一撃を放つことができる」


「てめぇ、まさか」


「ようやく察したかね。しかしもう手遅れだ。術式は完成した」


 憎々しげな魔人に対し、エイダはさらに笑みを深める。

 彼女は震える手を上げると、血に染まった口で言葉を発した。


「――喰らい尽くせ」


 次の瞬間、魔人の四肢が同時に切断された。

 噴き上がった血飛沫が周囲を濡らす。

 魔人とエイダは崩れ落ちて地面に倒れ込んだ。

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