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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第32話 知識欲の権化

 ルナを仲間にしてから四日が経過した。

 現在、エイダの所有する最寄りの別荘を目指して移動している。

 そこで装備を整えて、魔爪の導示との戦いに向けて対策を進める予定だ。


 もっとも、ルナが同行したことで問題がいくつか解消された。

 彼女の実力は極めて高い。

 対人戦においては最高峰の強さを誇り、並大抵の刺客ならば一蹴できるはずだ。

 たとえ魔族が来ようと対抗するのは難しくない。


 こうなるとエイダの慢心が懸念されるが、今の彼女にそういった心持ちはあまり見られない。

 魔族との戦いで捨て身の攻撃を敢行したことで、重傷を負ったのが大きいだろう。

 現在は手持ちの魔道具と薬草で治療している。


 炭化した片腕については特に損傷が激しく、回復の目途が立っていない。

 応急処置として首から布で吊るして固定した状態である。

 一般的な回復魔術で完治させるのは不可能に近い。

 沈痛作用のある薬で誤魔化しているが、いずれどうにかしなければならない。


 一方、ルナは陽気に歩いていた。

 その手はなぜか羊皮紙を引っ張って巻き取っている。

 羊皮紙は後頭部まで繋がっており、徐々に減っているのが分かる。

 ルナは不思議そうに疑問を口にした。


「これすごいね。いくらでも伸びるよ。どうなってるの?」


「物質化させた知識だ。あまり触るな」


 答えながら注意するも、ルナは巻き取る手を止めない。

 それ以上のやり取りは面倒になったので放置することにした。

 別にいくら引っ張られても支障はないのだ。

 気の済むまでやらせておけば、そのうち飽きるに違いない。


 そこまで黙っていたエイダがふと質問をしてくる。


「羊皮紙が破損すると、対応する知識も失われるのかな」


「それはない。物質化させているのは複製だ。自我が存在する限り、一度得た知識は決して忘れない」


 他者に与える知識も同様だ。

 羊皮紙に刻まれた情報はすべて複製である。

 したがってどういった扱いをしようと、手持ちの知識量に影響することはない。

 解説を聞いたエイダは、その眼差しに興味関心を覗かせる。


「君の能力は奇妙だね。どの系統の魔術にも当てはまらない性質だ。羊皮紙の身体なんて聞いたことがないよ」


「そもそも魔術ではない。過剰な知識欲が臨界点を超えた結果、この形に落ち着いた。世界を見渡せば、似たような存在は少数ながら見つかるだろう」


 精神は肉体を歪める。

 逆もまた然りだ。


 物質的な欲求はとっくの昔に捨て去っており、この自我を衝き動かすのは純然たる知識欲であった。

 その知識欲が羊皮紙の触手となり、触れた相手の知識を奪おうとする。

 自我が崩壊すれば、蔵書狂は世界を滅ぼしかねない怪物になる。

 その時、この身を抹消できる者は果たしているのか。

 一瞬考えようとしたが、答えは出さずに置いておくことにした。

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