第31話 新たな仲間
エイダは何かを思い出したように手を打った。
そして身長に尋ねてくる。
「ヴィブルはルナを仲間に加えることに反対か?」
「お前が怠けるために引き入れる気なら止めたが、合理的な理由があるのは分かった。反対はしない」
仲間が増えること自体は悪くない。
今のままではやれることに限界がある。
エイダの得意な策略の幅を広げるという意味でも、ルナの加入は適切な判断と言えよう。
その上で個人的な意見を述べる。
「しかし、このままでは危険だ。今回のような殺し合いが発生しないように対策する必要がある」
「ルナは改心した。言いくるめなくてもいいと思うがね」
「信用できない。あれは生粋の殺人鬼だ。衝動を抑えられなくなる瞬間が訪れるかもしれない」
そう答えながらルナの目の前に立つ。
彼女は不思議そうに首を傾げた。
「何するの?」
「少し細工を施すだけだ」
片手を伸ばしてルナの額に触れた状態で能力を発動する。
刹那、ルナが白目を剥いて痙攣した。
異変に気付いたエイダが慌てて止めに入ってくるも、ルナはすぐさま正常に戻った。
何が起きたか分からず呆然とするルナに警告をする。
「脳を弄った。今後、エイダに危害を加えようとすれば、意志とは無関係に身体が自殺を選ぶ。これは決して逆らえない呪縛だ」
額に触れた際、ルナに新たな知識を植え込んだ。
より正確には本能と呼ぶべきか。
エイダを傷付ける行動が己の死に直結するように洗脳しておいた。
これで万が一の心変わりがあっても、エイダが殺される心配はない。
ルナを同行させるのなら、これくらいの処置は当然だろう。
説明を聞いたエイダは心配そうに訊いてくる。
「脳を改造なんて……大丈夫なのか?」
「問題ない。仲間として正常な振る舞いを心がける限りは無害だろう」
回答を聞いたエイダは嘆息する。
それからルナの頭を撫でて謝罪した。
「手荒な真似をしてすまないね。彼は用心深いんだ」
「別にいいよ。信じてもらえないのは仕方ないから。殺されなかっただけ優しいよ」
ルナは機嫌を損ねた様子もなく言う。
自身への不信感が当たり前だと本当に思っているようだ。
羊皮紙の拘束を外すと、彼女は猫のように軽やかな着地をする。
周囲を覆い尽くしていた羊皮紙を人型に戻す間に、エイダとルナは握手を交わしていた。
「エイダちゃん、よろしくね」
「こちらこそよろしく。勇者の末裔と手を組めるなんて心強いよ」
その二人の姿に奇妙な縁を覚えた。
口を挟まずに一人で思考する。
(偽りの賢者に、殺人癖を持つ勇者の末裔か。奇妙な組み合わせだ)
結果的に見れば良質な戦力強化だ。
対魔族において、これほど頼もしいことはない。
あとはエイダの舵取り次第と言えよう。




