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エセ賢者と魔導書ゴーストライター  作者: 結城 からく


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第28話 蔵書狂の片鱗

 突進してきたルナが予測不能の攻撃を放つ。

 いつの間にか腹部を真っ二つにされた。

 完全に切り離される前に、断面から羊皮紙を伸ばして接合するも、ルナは執拗に部位破壊を狙ってくる。


「キャハッ」


 回避も防御もできない。

 瞬く間に身体が解体されていく。

 しかし焦りはなかった。

 もう覚悟を決めたからだ。

 なるべく穏便な方法で済ませたかったが、そうも言っていられない。


 全身から羊皮紙を噴出させると、ルナは軽々と跳んで木の枝に着地した。

 こちらの反撃を警戒したのだろう。

 その判断が命取りになるとは思っていないはずだ。


「これで終わりだ」


 濁流のように広がる羊皮紙が大地を覆い尽くしていく。

 そのままの勢いで岩や樹木も隠し、何重にも巻き付いて固定した。

 際限なく放出される羊皮紙は付近一帯を容赦なく包み込む。

 残されたのはルナが着地した一本の枝のみとなった。


 この範囲と密度ならば、短剣で切り裂いても無意味だ。

 僅かにでも動いた時点で他の羊皮紙が接触する。

 呆然とするルナに淡々と告げる。


「周囲一帯をすべて覆っている。触れればお前は死ぬ」


「あは、反則じゃん」


 ルナは頭を掻いて苦笑する。

 さすがにこの能力の規模は想定していなかったらしい。

 先ほどまでの狂気が霧散し、少し冷静になっている。


(本当はここまでの力は出したくなかったのだがな)


 人型から逸脱すると、理性の箍が外れかねない。

 自我の意地に注ぐ力を割り振ることになるからだ。

 限界を超えれば、いずれ知識を奪い尽くすだけの災厄になってしまう。


 迷いの森の図書館は、あの形で定着していた。

 基本的に誰とも関わらず、契約という形で知識の渡し合いを実施するため、それが上手く作用して理性が保たれていた。

 前提として、身体を持たずに自我を浮遊させていたのも大きいだろう。


 対して現在は、殺し合いの真っ只中である。

 相手を凌駕するために能力を解放し、仮初の身体を戦いのために変形させていた。

 刺激が強く、精神力で抑え込まねば知識欲が暴走しかねない。

 人間だった頃の感覚がぶり返してくる。


(やはり外界に関わるのは危険だな)


 密かに自省しつつ、ルナの拘束の動く。

 大量の羊皮紙が触手となって彼女に殺到する。

 ルナは瞬時に短剣で防ぐも、物量の格差を覆せずに捕まり、枝から逆さまになって垂れ下がる形となった。


 あとは記憶を根こそぎ奪うだけだ。

 勇者の末裔ならばそれなりの知識を持っていることだろう。

 そう考えて行動しようとした次の瞬間、エイダが突如として叫ぶ。


「待て! 彼女を殺さないでくれ!」


 慌てて走り出したエイダがルナの前に駆け寄る。

 そして、両手を広げて彼女を庇い始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] おや、エイダが……? 後ろから刺されなければ良いが。 [一言] 続きも気にしながら待ちます。
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