第22話 とどめの刃が届く
片手を庇うエイダがミノタウロスを注視する。
光線の爆発により、頭部が半壊して煙を発していた。
霊魂の衣と障壁の水晶は木っ端微塵になったようだ。
動かないミノタウロスを見て、エイダは疲労した声で呟く。
「さて、これで死んでくれないと困るのだが……」
彼女の懸念と同時に、ミノタウロスが凄まじい咆哮を上げた。
大地が揺らぐ中、憎悪の叫びが発せられる。
「矮小な、人間どもがあああぁぁぁ……ッ!」
怒り狂うミノタウロスが一歩ずつ近付いてくる。
多量の血をこぼしつつも、止まる気配はない。
向こうも並々ならぬ執念深さを持っているようだった。
エイダは力のない苦笑を見せる。
「参ったな。これで死なないのか。魔族の生命力は侮れないね」
「向こうは瀕死だ。あと一撃で殺せる」
ミノタウロスの状態を観察して指摘する。
確かに圧倒的な迫力だが、エイダの攻撃で死にかけているのも事実だ。
頭部の損壊は致命傷で一向に回復しない。
全体的な動きも遅く、体内の魔力は枯渇している。
放っておけばミノタウロスは息絶える。
ただし、エイダを殺すだけの猶予は残されている。
ここで追撃が成功するかどうかで彼女の運命は変わる。
エイダは考え込む。
僅かな思考時間を経て、彼女は爽やかな笑顔を向けてきた。
「仕方ない。こうなったらやるしかないね……ところでヴィブル。ここは君に譲ってあげてもいいよ。別に私がやってもいいけど、助手に揺動ばかりさせるのも引け目を」
ここぞとばかりに饒舌なエイダを無視して、ミノタウロスのもとへ進んでいく。
ようするに彼女は限界で、最後は任せたいということらしい。
情けない判断に思うものの、ここまで十分に命を張ったとも言える。
今回は大目に見てもいいだろう。
そう考えてエイダを一瞥する。
強がっているが瀕死の重傷で、気力だけで意識を保っていた。
さすがにこれ以上の戦闘を求めるのは酷だった。
(記憶を抜き取って終わらせるか)
エイダの覚悟を再確認し、さらなる成長を垣間見ることができた。
成果としては上出来だろう。
役目を終えたミノタウロスには退場してもらう。
羊皮紙の腕を分散させようとしたその時、瓦礫の向こうから一人の少女が走ってきた。
少女はミノタウロスを指差すと、目を爛々と輝かせながら大声を出す。
「あっ、魔族だー!」
瓦礫から跳んだ少女は疾風のように突き進み、腰から一本の短剣を抜き取る。
短剣の刃は淡く白い光を帯びていた。
ミノタウロスの眼前まで駆けた少女は、そこから勢いよく跳躍して刃を閃かせる。
「とうっ」
光の斬撃が交差し、ミノタウロスの首を刎ね飛ばした。




