第20話 起死回生
乱射される光線が周囲を更地へと変えていく。
付近の住民はとっくに避難していた。
逃げ遅れた者は瓦礫に潰されて死んでいる。
凄惨たる光景だが、それに心を痛める者はいなかった。
元凶であるミノタウロスは一心不乱に光線を放ち続けている。
様々な角度から執拗に繰り出される攻撃が破壊の嵐を渦巻いた。
ぎらついた双眸は殺意で満たされている。
光線が瞬くたびに羊皮紙の身体が損壊した。
しかし苦痛はなく、すぐさま修復されて元通りになる。
生物を消し飛ばす魔族の攻撃も、所詮は物理的な破壊の範疇に過ぎない。
どれだけ直撃しようと自我の消滅を危惧するものではなかった。
受けた光線が二百発を超えた頃、ミノタウロスの動きが露骨に鈍り始める。
潤沢だった体内の魔力が尽きかけていた。
怒りに任せて連発しすぎたらしい。
そもそもこれだけの攻撃で死なない敵など普通は存在しないのだ。
絶対強者のミノタウロスからすれば、完全に想定外の戦いであった。
焦げた羊皮紙を千切り、瓦礫に腰かけてミノタウロスを眺める。
こうして動かない状態でも光線が飛んでこない。
ミノタウロスは荒い呼吸でこちらを睨むばかりだった。
魔力の自然回復を狙っているようなので、挑発混じりに話しかける。
「どうした。もう魔力切れか。魔族も衰退したものだな」
「だ、黙れ。化け物め……」
「魔族に言われたくない」
方向性に違いはあれど、互いに化け物だ。
確かにミノタウロスが罵りたくなる気持ちも分かる。
全力の攻撃がまったく効かず、己だけが激しく消耗しているのだから。
もはやエイダの抹殺など思考の外だろう。
躍起になっているのは明らかだった。
立ち上がってミノタウロスに近付いていく。
殺意の熱気が密度を増し、表皮を震わせる迫力を発していた。
禍々しい覇気を前に提案をする。
「最大火力で撃ってみろ。この身を焼き尽くすほどならば賢者エイダの居場所を教えてもいい」
「ククッ、分かりやすい挑発だな。乗ると思っているのか?」
「乗らねば臆病者だと認識するだけだ」
そう告げると、突如としてミノタウロスが笑い出した。
腹を抱えて引き攣った声を洩らす。
「グクッ……ククク、貴様は、本当に、癇に障る奴だッ!」
ミノタウロスは発言の最後で光線を発射した。
先ほどまでとは規模が違う極大の光線だ。
こちらの挑発に乗り、体内の魔力を振り絞って放ったのだろう。
自身の全存在を懸けて殺す気らしい。
圧倒的な破壊を前に、視線をミノタウロスの背後に移す。
瓦礫の裏から慎重に現れた者がいた。
それは全身を砂埃で汚したエイダであった。
彼女は光線を放つのに夢中なミノタウロスへと走り寄っていく。
「――今だ。反撃の好機を逃がすな」
一瞬だけエイダと目が合う。
その直後、光線による蹂躙が全身を襲った。




