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第17話 魔族の蹂躙

 ミノタウロスが咆哮を上げる。

 それだけで空気が激しく震えた。

 人々は恐慌状態に陥り、右往左往しながら逃げる。

 瓦礫を蹴り飛ばしたミノタウロスは、こちらに向けて叫んだ。


「賢者エイダ! 貴様の命運もこれで尽きたぞォ!」


 発言の直後、ミノタウロスの口から圧縮された魔力の光線が放たれる。

 それは大地を削りながら突き進み、進路上に隠れていたエイダを襲った。


「うおっ!?」


 魔力の光線が爆発し、物陰に潜むエイダを吹き飛ばす。

 彼女は勢いよく転がって別の建物に激突した。

 軽く呻くも意識は失っていないようだ。

 二発目の光線が迫る前に、エイダは慌てて室内に逃げ込む。


 壁にもたれるエイダは全身から血を流していた。

 痛々しい姿だが、致命傷には至っていない。

 光線が直撃しなかったのもあるが、霊魂の衣が作用した結果である。


 エイダは手持ちの道具で止血しつつ、窓から外を覗く。

 ミノタウロスは辺り一帯に無差別な攻撃を繰り出していた。

 向こうは精密な魔力感知ができないらしい。

 魔力量が一般人と同等のエイダを位置を特定できないようだ。

 この街へ来たのは、魔爪の導示の密偵が居場所を報告したに違いない。


 現状の展開を推察しつつ、包帯を巻くエイダを見て話しかける。


「さっそく新装備が役に立ったな」


「君は平気なのか?」


 エイダがこちらを一瞥する。

 羊皮紙の身体は各所が焼け焦げて破損していた。

 魔力の光線で損傷したのである。


「問題ない。放っておけば修復する」


「それは羨ましいな。くそ、魔爪の導示め……よほど私の命が欲しいようだ」


「賢者として評価されている証拠だろう」


「まったく嬉しくないけどね」


 エイダは深々と嘆息する。

 まだ精神的に余裕があるようだが、それも時間の問題だろう。

 心身の疲労は誤魔化すのにも限界はある。

 そんなエイダに粛々と告げる。


「このままだと街が崩壊する。早く阻止しろ」


「簡単に言うじゃないか。都合の良い名案があるとでも思うのかな?」


 エイダは開き直ったように肩をすくめた。

 彼女の頭上を掠めるように光線が通過していく。

 それを放ったミノタウロスは建物のすぐそばに立っていた。


「ちょこまかと逃げるなァッ!」


 連続して飛来する光線が建物に穴を開けていく。

 エイダは素早く立ち上がって部屋を駆けると、反対側の窓から外へ飛び出した。

 無様な格好ながらも着地し、しきりに後ろを確認しながら逃げる。


 まだ諦めるつもりはないらしい。

 悪くない傾向である。

 羊皮紙の身体を分解すると、風に流されるようにして彼女を追跡した。

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