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第16話 エセ賢者の災難は重なる

 しばらく吟味した末にエイダの装備が決まった。

 彼女は会計を済ませると、涼しい顔で店を出て述べる。


「まあ及第点だね。完璧とは言い難いが、最低限の自衛はできる」


 現在のエイダは多数の魔道具を携帯している。

 特に厳重なのは防具型のものだ。

 霊魂の衣の他にも系統別に身に着けており、とにかく死なないことを第一に考えているのが分かる。

 立場上、何度も暗殺されかけた経験が活きているのだろう。


 攻撃用の魔道具も所持しているようだ。

 特別な戦闘技能を持たないエイダは、主に杖による遠距離攻撃を多用する。

 今回購入した武器も大半が杖だった。

 補充用の魔力結晶も調達したため、しばらくは戦闘で困ることはなさそうだ。


 新たな装備に身を包むエイダは自慢げに胸を張る。


「どうだろう。似合っているかな」


「不格好ではない」


「ヴィブル、君は褒め言葉を勉強した方がいい。知識ばかりでは感性が凝り固まってしまうよ」


 エイダがこれ見よがしに指摘してくるのが鬱陶しい。

 装備が整って安全が確保されたことで、少し気が緩んでいるのではないか。

 客観的に考えると、依然として油断できない状況が続いている。

 手に入れた装備も決して万能ではない。

 何よりエイダが貧弱である点が最たる懸念点だろう。


 その辺りのことを果たして理解しているのか。

 能天気そうなエイダは、旅行でもしているような気軽さで話を続ける。


「私の別荘に行こう。馬車を乗り継げば三日ほどで――」


 エイダの言葉を遮るように、つんざくような轟音がすぐそばで発生した。

 上空から落下してきた物体が家屋を吹き飛ばしながら地面に炸裂したのである。

 衝撃で四散した建材が周囲の人々を殺傷し、何かの弾みで飛んだ炎が家事を引き起こした。

 街の通りは瞬く間に阿鼻叫喚の騒ぎに包まれて秩序を失う。


 余波で転倒したエイダが顔を上げる。

 彼女は慌てた様子で物陰に転がり込んだ。


「な、何だッ!?」


「魔族だ。お前の命を狙っているようだ」


 最初の轟音の地点を指差す。

 陥没した地面から這い上がってきたのは、黒い巨体のミノタウロスだった。

 牛の頭部が蒸気を噴き、筋骨隆々な人間の身体が汗を流している。

 凄まじい衝撃だったが傷一つとして負っておらず、煩わしそうに瓦礫を薙ぎ払って立ち上がってみせる。


 その魔族はかなりの魔力を宿していた。

 同族の中でも上位に分類されるに違いない。

 人間が相手取るならば、最低でも軍隊規模でなければ話にならないだろう。


 魔族の肩には特徴的な紋章が彫り込まれていた。

 それは魔爪の導示のものであった。

 あの組織に所属しているのではなく、協力関係であることを表しているのだろう。

 人間の刺客では敵わないと考えた彼らは、魔族による強襲を選んだようだ。

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