表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/115

第101話 後始末

 その後、目覚めたエイダは王都を掌握した。

 滞在していた貴族を脅迫し、瞬く間に城内を制圧してみせたのだ。

 ルナの暴力にも頼った強硬策を採り、王国の実質的な支配者として君臨する。

 かなり大胆な展開だが、これには理由がある。

 諸々の問題に備えて早急に地盤固めをしておきたかったのだ。

 エイダは国の行く末を予測し、誰よりも力を尽くして舵取りを行おうとしていた。


 諸悪の根源である国王は死んだ。

 しかし、その影響力は未だ健在である。

 魔爪の導示は各地に潜み、次なる一手を打とうとしていた。

 統率を失ったことで、さらなる混沌へと向かう恐れもあり、むしろ危険な状況となっている。

 不安定な魔族や魔人が何をしでかすか分かったものではない。

 それを正確に理解していたエイダは、迅速な動きで対策を張った。


 まずは情報操作だ。

 国王の悪事を民衆に広めることで、彼女が権力者となることを肯定されるように仕向けた。

 闇の賢者としての悪評もすべて捏造であると表明した。

 今のところは半信半疑ではあるものの、民衆はその事実を受け入れつつある。

 情報操作のついでに大量の金をばら撒いた上、減税を発表したのも大きいだろう。

 分かりやすく媚びることで、肝心の内容を有耶無耶にしたのであった。

 後になって反動が来るかもしれないが、エイダは即時的な効果を優先した。

 この判断が功を奏し、エイダが国王代理として働くことは認められた。


 ちなみに国王の正体については隠したままだ。

 混乱が大きくなりすぎる懸念から、元魔王であることは伏せたままにすべきだと考えたのである。

 そのため悪事については魔族側と癒着したという形で発表している。

 数々の証拠も挙げたので信憑性は低くないはずだ。


 怒涛の展開に民衆は困惑している。

 半ば強引に権力者となったエイダに関して、各地では称賛と抗議が噴出していた。

 ひとまずは認めたものの、それを肯定的に受け取るかは別の話である。

 特に国王に忠誠を誓っていた者や、利害が一致していた者の反発は大きい。

 既に何度か暗殺者が派遣されており、それをルナが食い止めている状態だった。


 世界は表も裏も騒がしく、しばらくは落ち着きそうにない。

 ただ危うい状況とは言え、本格的な争いに発展せずに済んでいるのはエイダの手腕によるところが大きいだろう。

 そして現在、彼女は王城の一室で書類仕事に追われている。


「ううむ……この作業量はそろそろ過労死しそうだね。早く解放されたいな」


「お前が招いた状況だ。責任を持て」


 嘆くエイダを叱る。

 彼女は深々とため息を吐いた。


「ヴィブルは相変わらず厳しいね。もっと優しくしてくれてもいいのだよ? 何と言っても私は国を救った偉人だからね」


「冗談は後にしろ。手伝うのを止めてもいいのか」


「ま、待ってくれよ。君の処理能力がないと、いよいよ破綻してしまうのだから……」


 エイダは弱々しい声で懇願してきた。

 しがみ付いてくるのが鬱陶しいので引き剥がしておく。


 各地への根回しや新たな契約、命令書……さらには敵対勢力への牽制と、諸外国に向けた文書も作らねばならない。

 やるべきことは山積みだ。

 呑気に休んでいる暇はない。

 悪を倒して万事解決するほど甘い世の中ではないのだ。

 賢者エイダに平穏はまだ訪れそうになかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ