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さよなら

 やりたかった事。




 やらなくてはいけなかった事。




 ようやくわかった気がする。




 僕は、自分の部屋を出て階段を降りた。




 玄関から外に出て、




 お隣の家のインターフォンを鳴らす。




 もしかしたら一橋と一緒かもしれない。それでも構わない。




 玄関先に出てきた真理は一人。




 怪訝な顔。まるで不審者を見る目。




 僕が攻撃をするとでも思っているのか、両腕は高い位置にある。




 いつの間にか僕は、幼なじみの敵になってしまっていた。




 僕はただ、彼女を幸せにしたかった。




 けどそれはもう叶わない。全て奪われた。




 原因は僕か。彼女か。それとも彼か。




 どうでもいい。




 そんなことはもう、どうでも良いんだ。




 いつも僕が真理に伝えていたのは『好き』だとか『ずっと一緒にいたい』とか、そんな言葉ばかりだった。




 一番大事なことを伝えていなかった。




 愛してる。なんて陳腐な言葉じゃない。





 僕は、真理の名前を呼んだ。




 きっと、こうやって名前を呼ぶのは最後だろう。




 真理が僕を見る。




 僕は表情をうまく作れない。




 こういう時、どういう顔をすれば良いのかわからなかった。





「真理。力になれなくてごめん。辛かったよね。苦しかったよね。ごめんね。でもありがとう。感謝してる。真理と一緒にいれて幸せだったよ」




「…………なんで」




 真理の表情が歪む。




「真理が浮気したとか本当はどうでもいいんだ。幸せって、積み重ねたものだから。無くなったりしないんだ。今、例え酷い言葉を浴びせかけられたとしても、昨日かけられた優しい言葉がなくなるわけじゃない。だからありがとう。感謝してる。僕は幸せだったよ。それだけ伝えたかった」




 いま僕は、うまく笑えてるだろうか。




「さよなら」




 きびすをかえして家へと戻った。




 後ろは振り返らなかった。





 次に僕は、バンジージャンプをしている天満さんの写真をかべに貼った。。





『彼女に相応しい人間になる』




 僕がした迂遠で遠回しな告白は、きっと彼女に届いていない。




 でもそれでいい。




 彼女が僕に優しく接してくれたのは、同情と何かの目的によってだ。




だからまずは彼女と対等になる。


 


 でもその時、また幼なじみの時のように、彼女の隣には他に誰かいるかもしれない。




 でもそれでもいい。




 それでも決して揺るがない。




 そんな強い鋼の精神と、慈愛に満ちた優しい人間になろう。




 僕が目指す道のりは、きっとそこにあるはずだから。





 数日後、僕は履歴書を持っていくつかアルバイトの面接にいった。




 そこで僕は、BSS事件に巻き込まれる事になる。

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