表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

星が恐ろしいのは

作者: アスパルテーム

 時計が四つ鐘を鳴らしました。

私はその夜も、自室の机で物書きをしておりました。

その夜は、何故かやたらと星が流れておりまして、幻想的な反面、気持ち悪くもありました。

又密かに、その星の一つが、私の部屋を直撃してしまわないかと胸騒ぎもしていたのです。

けれどもそんなことは遂になく、時計は五つ鐘を鳴らしました。

 窓を開けてみますと、星はもう一つも流れておりません。皆一様に闇に散らばっているだけでございました。

ふと表の通りを見てみますと、一人の男が、黒い外套を着て立っておりました。日が遂に昇るかという薄明かりの中で、じっと、空を見上げているのです。

もしかすると、星が流れていたあの時から、そこに居たのかもしれません。

 そこで、私は、不思議に思いました。

男は、格好に似合わず、右手に網を持っていたのです。

今は冬ですので、虫を捕まえるにしましても、まだ皆寝静まっておりますし、魚が泳ぐような水場も、この辺りにはありません。

では彼は、何を捕まえようと言うのでしょうか。

 私の脳裏を掠めたその予感は、私をぎょっとさせました……。

あ。

と、私は、そして彼は、思わず声を漏らしました。

星が、地面目掛けて流れ落ちて来ます。

なんと、男は網を握り直すと、その星を捕まえんと振りかぶったのでございます。

しかし、上手く距離を測れなかったのでしょう、振りかぶった後で、男の額を、星が直撃しました。

がん、という鈍い残響が、未だ私の耳に残っております。

私は声を失って、倒れた男を見ておりました。

 と、不意に、鐘が鳴り出しました。

鐘の音が、いつもより低く、重く、私の中に響きました。

 それ以来でございます。

 私の中で、流れる星が恐ろしくなったのは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 流れ星を捕まえようとした、というところだけ見ればファンタジックで素敵なのですが、本当に実行に移そうとするとこうなるんですね。男性は無事だったのでしょうか……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ