美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
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私には前世の記憶がある。
アリスは大きな鏡台に映った己の顔を見て、思わず顔を顰め、ため息をついた。
アリスの前世は、メンクイで惚れっぽく、ドルオタである所を除けば、至って普通の平凡な女子高生だった。
でもまあ、そんな日々も、寝ぼけて足を滑らせて転倒した事で、あっけなく終わってしまった。
馬鹿だなぁ·····自分。
心の中でそう思いながらアリスはまた一つため息をつく。
今、アリスがため息をついた理由は二つあった。一つは勿論、前世の自分に対してだが、もう一つはまた別の所にあった。
と、いうのも·····そんな『春野 菫』こと、アリス・ラメ・ティーランがいるこの世界は、前世とは人の美醜感覚が逆転した世界だからだ。
アリスは、この国のお姫様であり、それでいて美しい。そのため求婚者は後を絶たない·····けれど。
アリスの美的感覚は周りの感覚は全く持って逆であった。
前世はドルオタのメンクイだったアリスにとって、求婚してくる貴人は皆、不細工にしか見えない·····。
折角、生まれ変わりお姫様になったのだから、かっこいい殿方と運命のような恋をしてみたい·····と、アリスは思いをめぐらせ、頭を悩ませていた。
アリスはまた鏡を見た。
··········。この顔が美人?
ふっ、とアリスは鼻で笑った。何度見ても、どう考えても、アリスにとって、自身の顔は、前世で言う不細工に他ならなかった。
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アリスはお姫様だ。
もうそろそろ、20歳になる。
お姫様には人生でなし得なければならない課題がある。いや、その為に今まで、高度な教育と豪華な生活が送れていたと言っても過言ではない。
「いくら何でも多すぎよ·····」
アリスは、机の上に乗せられた大量の手紙を死んだ目で見る。
その大半がアリスを口説く手紙であり、『結婚』と言う二文字が頭の中を駆け巡る。
そして、今日もアリスはいつものように手紙を読み、返事を返すだけで日の大半が終わってしまう·····。
異世界にお姫様として転生したと気づいた時に、自分が想像していた未来とは随分違ったものだ·····と、アリスは、手紙をくれた人の顔を思い出して嘆く。
イケメンに囲われるはずが寄ってくるのはブサメン·····
そして、私もその一人·····
アリスは今日何度目かのため息をついた。
コンコンコン
部屋の中に、ノックの音が響く。アリスが許可を出すと一人の青年が部屋に入ってきた。
彼の名前はルイ・ブリース。一年ほど前から私の従者として仕えている。一言で語るなら陰湿な男だ。
「ルイ? どうかしたの?」
アリスはルイの分厚いメガネと前髪で隠された目を見るように視線を向け、首を傾げた。
「ひ、姫様。 その、レスト様が来ておりまして·····」
レスト様·····それはアリスの婚約者候補の最有力者の一人。週に一度、こうしてアリスの元へ通う、気の良い青年だ。
「そう·····。レスト様が·····」
アリスそう言うと顔を俯かせた。その様子にルイは首を傾げる。
(なんか·····あまり嬉しそうじゃないな·····)
レスト様と言えば、家柄よし!顔良し!性格よし!の三拍子。それにとても紳士な人だったように思う。姫様も、他の候補者達とは違い、レスト様とは普通に話すのを何度も見たことがある。
だから、城の者は皆、姫様はレスト様に興味があると、そう思っている。
身分は低く、顔は不細工、性格も良いとは言えない僕とは正反対のお方だ·····。
余計な事を考えてしまったと、ルイの口から少しだけ苦笑いがもれた。
「今日は、体調が優れないので、またの機会に·····と、言ってくれないかしら?」
「分かりました」
ルイは疑問を抱きながらも、そう言って腰をおる。
一方でアリスはと言うと、先週キッパリとレスト様の事を振ったのを思い出して、気まづく思っていた。
(嘘をついてごめんなさい·····)
次にもしレスト様が来た時は、仮病など使わずにきちんとお話しよう!そう心に決めて、アリスはルイに話した。
「し、失礼しましたって、うわっ!」
ルイが顔を上げ、部屋から出ようとした時。ルイがその場で足を絡ませてこけた。ドンッ!と、思いっきり床とキスする事になったルイにアリスは慌てて駆け寄る。
「ルイ、大丈夫?」
「え、あっ!はい!大丈夫でふ!」
「なら、いいのだけれど·····」
実はルイがアリスの前でコケるのはこれが初めてではない。アリスは眉を下げ困った顔をしながらも、ルイに手を差し出す。ルイらそれに恐縮しながらも顔を上げた。
その瞬間。見開かれるアリスの目。顔には驚愕が浮かんでいる。そしてその後、状況を理解したルイの喉が小さくなり、顔がみるみるうちに青ざめていく··········。
ルイの足元に転がったメガネがキラリと光った。
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ルイは冷や汗が止まらなかった。ギギギと音がなりそうな様子で首を曲げ、足元を見る。
「ルイ? その顔·····」
真上から、姫様の声が聞こえた。しかし、ルイは動かない。いや、動けなかった。心臓がギュッと何かに握られた様に痛み脈打ち、視線を上げぬまま、次の言葉を待つ。
「どうして隠していたの·····?」
「あの·····それはっ」
ルイは、それ以上言葉が出ないのか口籠もる。アリスは先程、一瞬だがルイの顔に見とれた。それ程、アリスにとってルイの顔は美しかった。アリスの求めてたイケメンが目の前にいたのだ。
だから、純粋に何故そんな綺麗な顔を隠すの?と思い、口から疑問が零れていた。
その事にアリスはハッとして、この世界の美的感覚を思い出し、慌てた。
「あっ、あの、ごめんなさいっ!」
取り敢えず謝罪を!と思い謝る。
それをルイは目を丸めて見ていた。そして、その後、首を勢い良く左右に振り、直ぐにメガネをかけ直す。
「お目汚しを·····。申し訳ありま」
「そんな事ないわっ!」
「··········え?」
アリスが力強く言った言葉にルイは首を傾げた。今·····、なんと?
「ルイ! 貴方、貴族よね?」
「一応。男爵位を·····」
「男爵位·····」
「はい·····」
「まあ、平民では無いのだし大丈夫よね?」
うんうん、とアリスは一人納得したように頷いた。
何故そんな事を今? ルイがそう思うが早いか、アリスは飛んでもない爆弾を落とした。
「ルイ、私と婚約してみない?」
名案だ!とばかりにニコニコと微笑むアリスに対し、その言葉の意味を理解すると同時に、ルイの思考は完全に止まり、石のように固まった。
アリスは、ルイの美貌に一瞬だが心を奪われた。転生して、早20年。こんな美青年を見た日が会っただろうか·····。否、無かった。前世ではスマホがあれば何時でもイケメンが見られたのに、今世では、ほぼ全くと言ってもいいほどイケメンとの遭遇率が悪い。
というのも、少し理由がある。実はこの世界、不細工に対してとても厳しいのだ。·····不細工と言っても、アリスにとってはイケメンだ。
けれど、そう言う理由もあり、お姫様であるアリスは自身にとってのイケメンとは無縁の生活がほぼであった。
アリスは、石のように固まった青年に視線を向ける。そして、ルイが動かないのを良いことに、メガネを取り、前髪を上げた。
「!」
ルイの肩が少しビクつき、その何処までも透き通るような美しい蒼色の瞳は大きく開いて、アリスの事を信じられない思いで見返していた。
ほう。とアリスが頬を蒸気させ、少し潤んだ瞳に熱を乗せながら息を吐く。
その整った顔立ちは、やはりアリスのドストライクだった。イケメンのなんと尊い事か·····。アリスは感動にうち震えた。
一方でルイは何が起こっているのか分からなくて、困惑していた。今、一体自分は何をされているのか·····。冷りとした姫様の手の感触がおでこにあるこの状況。
自身の醜い顔を姫様が見ている事に顔を青くさせるべきなのか。その美しすぎる顔が目の前にあることに顔を赤くさせるべきなのか。
ルイの思考は相変わらず、固まったまま、動けずにいた。
···············。
·························。
「ルイ? ·····ルイ?」
ルイの思考が戻ったのは、アリスがルイを部屋に招き入れ、ソファーに座らしたときだった。
「はっ!姫様? あ、僕は一体·····」
「驚かせてしまってごめんなさい·····。いきなりあんな事言われても困るわよね·····」
(困る? あんな事? ん? んん?)
ルイは姫様の言葉に首を傾げ、不思議な記憶を見つけた。 それは、自分が姫様に婚約者にならないか、と問われた記憶だった。
(あ、あれ? あれは何だっただろう? ゆ、夢だよね? まさか·····現実なわけ·····)
「私も焦りすぎたわ·····。まずはお互いのことを知ってからよね?」
その言葉にルイは何か嫌な予感がした。
「ひ、姫様? あの、何を·····」
「なにって、婚約者になる前にまずは、お互いのことを知ってから──」
「こっ、婚約者っ!?」
上擦った悲鳴にも近いルイの声が部屋に響き、アリスが少し顔を顰めた。ルイはすぐさま謝罪する。
「申し訳ございません姫様! ·····失礼ですが、もう一度、お聞きしても?」
「·····いいわ。 私ね、ルイと仲良くなって婚約者になりたいの。そして、ゆくゆくは結婚するつもりよ」
開いた口が塞がらないとはこの事なのか、ルイは今自分が聞いている内容がとても信じられなかった。
「えっ·····。何故、何故そうなったのですか!? 姫様も見ましたでしょう? 僕の顔を!」
「ええ、見たわ」
「では何故!!」
血の繋がった妹でさえもルイの事は不細工だからと言う理由で嫌い、もう何年も口を聞いていない。
今だって、廊下ですれ違うだけでも、歪めた顔を扇子で隠してルイを見ないようそっぽを向くのだ。そんな顔を見て、何故!
数多の貴公子から求婚を受けている姫様が、何故!
「何故? ルイが私の好みのど真ん中だったからよ」
「え?」
荒れているルイの心情など梅雨知らずに、アリスはルイの顔を見てきょとんとした後に、当たり前の事のように答えた。その時のアリスの頬が僅かに色ずいている事と、アリスにメガネを取られたまま素顔を晒していることにルイはまだ気づかない。
「でっ、でもっ、現実的ではありません! こんな、不細工で身分を低い俺なんか婚約者にしなくても、姫様なら、もっといいお相手が·····」
そう!例えばレスト様とか!
「不細工? いいえ、私にとってはルイはとても綺麗に見えるわ。 身分? やはり男爵位は低いのかしら? んーなら·····」
アリスは至極真面目にルイの質問を受け止め、考え、答える。一方でルイはアリスから発せられた、言葉に言葉が詰まる。
僕が綺麗に? いやいや、ありえない!ありえないから!!
「ねぇ、ルイ。私と駆け落ちしましょ?」
「えっ!?ええぇぇえええ!!!」
ルイが心の中で一生懸命否定していると、またまた、アリスがルイに爆弾を落とした。その爆弾の威力は、先程のものよりもずっと威力が高かった。
アリスの部屋にルイの驚愕の声が響き渡った。
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「なっ!な、な何を言っているんですかあああ!」
ルイは動揺が隠せなかった。礼儀も敬語も忘れて姫様に詰め寄る。
一方で、アリスは少し驚いていた。
(ルイって、こんな大声も出せるのね)
これまで、勝手に陰湿な男だと思っていた。今も、アリスの予想では、ルイは恐縮して首を横に振るだけだと思っていたのだ。けれど、実際は違った。ルイは大声でアリスに詰め寄っている。
意外なルイの一面にアリスは、人を見た目で判断しては駄目ね·····もっと相手を見ないと、と認識を改める。
「じょっ、冗談にしても、タチが悪いっ! ですよっ、姫様っ! こ、ここ婚約とか、かっ、か駆け落ちだとか! ──── 一体!何がどうしてそうなったんだっ!」
「顔で選んだ結果よ」
「──へ?」
アリスは動揺し、何かに焦ったように話すルイに向かって、落ち着いた声色で本音を語った。その声を拾ったルイは震えた声で一言、言った。
「な、何故、顔で選んだ結果、僕になる 、 ですか?」
(姫様は、僕をからかって遊んでいるのだろうか·····)
ルイの心臓がずきりと傷んだ。もしかして·····と、嫌な予感がしてならない。
「だから、言ったでしょう? 好みだったの、私の。 ルイの顔が、ね?」
そう言いながら、顔を顰め、泣きそうにも見えるルイの頬にアリスは手を添える。アリスは内心少しだけイケメンに触れる行為に、心の中が踊ったが、顔に出さないように気をつける。
(今、姫様はなんと──?)
ルイはアリスの言葉を一つ一つ、噛み砕くようにして紐解いていく。
そして、一つの答えにたどり着く。
「も、もしかして、姫様。 不細工が好きなのですか? だ、だから、これまで、誰の求婚も受けなかった? え、でも、ん? んんん?」
ルイは自分の考えに自信が持てない。だって、有り得るのだろうか·····。数多の美形な貴公子から求婚をされ続けている、この、目の前にいる誰よりもお美しい姫様が、まさか、不細工が好きだなんて·····。
しかし、そんなルイの考えを肯定するように、アリスは頷いた。
「ええ、そうよ。凄いわ、ルイ! 流石、イケメンは相手の心を察するのが上手なのかしら? まあ、そういう訳なのよ。私ね、ルイの顔、すごく好きなの!いつか結婚するのなら、ルイ見たいな人としたいって、夢見てきたのよ?」
ルイの考えは当たってしまった。まさか、姫様が、これまで求婚を断ってきた理由が、顔の好みの問題だったなんて·····
「え·····でも·····」
「うん、そうね·····。そうなのよね、やっぱり身分差は大きいわよね·····。──やっぱり、駆け落ちしか·····」
「ひっ、姫様っ!?」
違うそこじゃない!この姫様は何を言うんだと、ルイは驚く。アリスはそんなルイを見て首を傾げた。
「なあに? あ、もしかしてルイ、何かいい考えでも·····」
「僕は、姫様と結婚するつもりはありませんっ!」
ルイはぶんぶんと首を振り、ありえない!と叫ぶ。けれどその後、一気に下がった部屋の空気にルイははっと目を開きアリスを見た。
ルイから見たアリスは、傷ついた顔をしていた。見る見るうちに、目に涙が溜まり、今にも零れ落ちそうになっている。ルイは自分の失言を悟り、慌てたが、ルイが口を開くよりも先にアリスが謝ってきた。
「ごめんなさい·····。やっぱり、嫌よね·····こんなお姫様·····。私、ちょっと、夢を見すぎていた見たい。 いつか私だけの王子様が現れて、この窮屈なお城から連れ出してくれるんじゃないかって·····。それがどういう意味を持つのか、分からないわけじゃなかったのに·····」
お父様を·····家族を·····、国を裏切ってしまう所だったわ·····。それに、ルイの事も·····、犯罪者にしてしまう所だった·····。
アリスは項垂れた。もう20歳なのに、幼子のように、馬鹿みたいにはしゃいで、間違いを侵してしまう所だった·····。
アリスがルイに結婚するつもりがないと言われた時、頭に浮かんだのは、『ブスが調子にのるな』と、前世、好きな人に振られた記憶だった。それはもう、頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。今の私の容姿は私からしてみればブスでルイはイケメンなのだから、あながち間違ってもいないのが、余計心に来た。
「ごめんなさい」
アリスはもう一度、ルイに謝った。
「いっ、いえっ!僕の方こそ失礼な発言を·····。お許しください·····。ですが、少し訂正を。 僕は、決して姫様がお嫌いだから断ったわけではありません·····。釣り合わないからです。僕が、姫様に·····。 姫様は尊いお方、きっといつか姫様の言う王子様が現れるでしょう·····」
「·····それがルイでは無いと?」
ルイはその質問に苦笑する事で答えた。
「そう·····」
その後、アリスは何かを考えるように黙り込んだ。
と言うのも、先程から心臓がうるさく鳴り響き、苦しかった。アリスは悟る。ああ·····メンクイで惚れっぽいのは、前世からかわらないのね、と。
前世から一度惚れたら一途、失恋したら次の恋にと、恋多き乙女だったアリスは自分の気持ちに気づいていた。
今世ではこれが初めての恋だと、自覚していた。·····初恋は実らないとはよく言ったものだ。けれど!と、アリスは覚悟を決める。
(今世の私は美人!ブスだけど!周りからしたら美人!!)
アリスは自分にそう言い聞かせ、覚悟を決めた。
一方ルイは、姫様が納得してくれたとほっと息をつき、今の状況にハッとした。
密室に二人きり。しかも同じソファーに並んで座って·····。
かぁーっとルイの顔に赤みがましていく。ルイは慌てて立ち上がった。
「う、うわぁ!も、もも申し訳っ」
「──ルイ」
しかし、そんなルイの声と動揺は、アリスから発せられた、力強い声によって止められた。
「はい」
ルイは顔を上げてアリスを見る。すると、アリスは先程はなかった、何か、決意をした瞳をしていた。
「私、決めたわ」
「姫様?」
「ルイ、私、貴方を諦めない」
「·····え·····」
アリスはルイを見つめたまま立ち上がり、一歩ずつルイに近寄った。そして、後一歩の所で立ち止まり、顔を真っ赤にさせながら、一つ、深呼吸をした後にルイに抱きつく。
甘い花の香りがルイの鼻を擽った。柔らかい、その感触を体に受け、暖かいものに包まれる。
「私、王子様じゃなくても良いわ·····。連れ去ってくれなくても、いいの·····。ねぇ、ルイ·····、聞こえているかしら? 私、今にも心臓が破れそうなのよ? さっきからそうなの。おかしいわよね? ルイの言葉を聞いた時から、こうなのよ?」
「ひっ、姫様っ!?」
「ねぇ、ルイ。 もう一度言うわ。私、貴方を諦めない事にしたの。 必ず、私に惚れされて、あなたの心ごと手に入れて見せるわ」
だから、覚悟しててね? アリスはそう言ってルイから離れると満面の笑みを浮かべた。
顔を真っ赤にしたルイは思った。
(姫様·····もう、僕の負けですよ·····)
この城の者を始め、言うなれば、どこぞの国の王子様だって、一目惚れするような、優しくもお美しい姫様に、何処までも甘く微笑まれながら、心を求められて、拒絶できる者など、既婚者かリア充くらいしかいないだろう·····。
ルイは、兼ねてより憧れていた尊き方の口説き文句に、自分が落ちていくのを悟った。
姫様が本気になられて、落ちないものはいないとは思うが·····。
これから一体どうなるのか、昨日までは想像もできなかった、これからの事にルイは頭を悩ませるのであった。
《完》
ここまで読んで頂きありがとうございました!
もし宜しければ、『楽しかった』『面白かった』『ここの表現は·····』など、ご感想、ご意見を下さると大変嬉しく思います。
ではまたの機会に·····。
By *. nafu