第1話 融合!? 魔剣は腕の中にいる
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次の話も後で投稿します!
「え?」
はい? 融合したから離れられない……? それはあれだろうか、某シャツにくっついたど根性な両生類みたいなものだろうか?
『そう思っていただいて結構です、マスター』
「……でも、契約はないんだよな?」
『イエス、マイロード』
「…………」
こいつ、ゴミ箱に捨ててやろうか?
だが、俺は魔物と戦わされるのが嫌なわけではない。誰かのために何かをする。
それが嫌なだけだ。
期待されたくない。
俺は、不運な俺にこれ以上期待をしないでほしいだけなのだ。
だから、別に誰のことも考えなくていいなら、
「じゃあ、いいや」
『え、いいんですか?』
「だって、よく考えたら、腕に車のナビが付いたようなものだろ?」
魔剣の力を使って何かをしなくとも、ナビが使えるのはいいことだ。
魔剣とは言え、ナビがあれば何かと便利だろう。
『あの、マスター? 私、魔剣ですよ? 確かに空間把握能力は備わっているのでナビゲーションも可能ですが……魔剣を使って無双とか、魔王を討伐して英雄にとか、そういうのが男の子の夢だって聞いてたんですけど?』
「ふーん、何ができるの?」
気だるげにそう聞く。
魔剣というのだから、どうせロクでもない能力を持っているに決まっている。
どうせ等価交換とか言われて、寿命や魂を持っていかれたりするのがオチだ。
それに、何かをしようなどという気は俺にはないのだから殆ど聞く意味はない。
しかし、興味はある。
『私の能力ですか? それは、不幸を手足のように自在に操る能力です。でも、不幸の力を多くの生物から集める必要がありますし、今は私しか使えません。ですが、そのうち––』
右腕から聞こえる声を聞き流しながら机に伏せる。
不幸の力……か。
どうやら、そこまで危険な能力というわけでもなさそうだ。まあ、リスクがあるとすれば自分が不幸になったり、近くの人を不幸にすることだろう。まぁ、俺は元々不幸だから関係ないが。
……って、あれ? 俺ほどの不幸なら人から不幸を集める必要はないのではないだろうか?
こう、右手に何らかの力を集める感覚で、懐かしき厨二心を思い出してやればできるのではないか。
そう思い、右手に力を集めるようイメージする。
『––ですので今は私にお任せを、ってマスター!? 何で不幸の力を操れちゃってるんですか!?』
「え?」
何となく右手を見ると青紫色の炎のようなものが燃え上がらように存在していた。
しかし、それは俺の体を焼くことはなく、寧ろ、俺の体に力が与えられているような気さえした。
「やっべ……できちった」
『できちった、テヘペロ、じゃないですよ! 何でできるんですか!?』
「いや、偶然だが……」
俺は、腕で燃え上がっている炎に驚きながら言う。
まさか、本当にできるとは思わなかった。
あと、勝手に人の言葉に付け足さないで欲しい。誰がテヘペロなんて言ったんだ。
『でも、どうやってそんなに強大な不幸の力を出したんですか! 常人に出せる不幸の力じゃありませんよ!?』
最後の一言が俺の精神を抉ってきた。
分かっていても、自分がとんでもなく不幸な人間だと突きつけられるのは少しきつい。
『マスター、聞いてます?」
「うん? うん。やってみたらできたんだが…….これって人から見えるのか?」
『……見えませんよ。その力はマスターと私にしか見えないはずですが……なぜ、そんなにも不幸の力を……私からは少し不幸の力が多いようにしか見えなかったのに」
なるほど、不幸の力は俺以外の人間には見えないか。さらに、エルノヴァールの言葉からするに、俺には他の人の不幸度もわかるようだ。
……そう言えば、いちいちエルノヴァールと言うのも面倒だ。
「なぁ、エルノヴァールっていちいち呼ぶと長いし、エルナって呼んでもいいか?」
『え? それは名前ですか? マスター、魔剣である私にそこまで気を使ってくださるなんて……私は何と幸せな魔剣でしょう!』
……何だこいつ。変な風に勘違いしてやがる。
あと、幸せな不幸の魔剣って謎だ。
まぁ、別にいいか。放っておくのが一番だ。
しかし、こいつの能力は面白そうだ。試しに誰かに使ってみよう。
そう思い、俺は部屋を出て外へ向かう。
『マスター、どちらへ?』
「ああ、ちょっと面白いことを思いついてな」
そう言って俺は学園の外まで出てきた。
学園の外には、いかにもファンタジーというような中世ヨーロッパ風の街が広がっている。
石造りの街並みに、剣を携えた人やローブ姿に杖を持った人など、多くの人が行き交っている。
その中心に、城のように大きなフォーチュン学園は聳え立っている。
この世界に来てからずっと通ってきたが、未だにこの城のように大きな学園に通うことには慣れない。
いや、今まで日本の普通の学校で暮らしていたのだから、それは当然なのかもしれないな。
そんなことを考えながら街中を進むこと約5分、ついに目的の場所が見えてきた。
『冒険者ギルド』だ。
冒険者ギルドでは依頼を募集しており、それを冒険者ギルドに加入している冒険者と呼ばれる人に受注してもらう場所だ。また、依頼を達成した冒険者には依頼者からの報酬が支払われる。
しかし、冒険者ギルドではその他にも町の事業の手伝いを始めとした多くのことを行なっている。
その規模は世界的に広がっており、あらゆる国にたくさんの支部が存在する大組織だ。
簡単に説明すると、冒険者ギルドは世界的チェーン店の何でも屋、と言ったところだ。
あと、冒険者にはランクが付いており、下からF、E、D、Cまでのノーマルランクと、C、B、Aまでのアークランク、そして、Sランクが存在しており、難易度の高い依頼を成功させた人間はランクアップするのだ。
そして、俺も冒険者ギルドに登録している冒険者だ。
まぁ、実力も経験もないため、ランクはFなのだが。
そんなことを考えながらギルドの中へ入ると、冒険者たちが1人の男に注目していた。
そちらに目を向けると、そこにはあいつの姿があった。
「キャー! 聞いた? 今私のことをライル様が美しいって」
「違うわよ! ライル様は私が美しいって言ったの!」
「おいおい、僕のために争わないでくれ」
勇者ライル。
聖剣に認められて勇者になったイケメン野郎で、いつも女性に囲まれている男だ。
いつも、わけの分からない痛すぎる台詞ばかり吐いている。
さて、そんな腹が立つほど不愉快な幸運野郎にこの右手で燃えている不幸の力をぶつけたらどうなるのだろうか?
俺は、ニヤリと笑みを浮かべて右手をライルの方に向ける。もちろん、周りから不審に思われないように、手の平だけを向けているのだが。
そして、ライルの方に不幸の力が飛んでいくように意識する。
すると、右手で燃えていた炎が火の玉のような形になって飛んでいった。
「うおっ、すげぇ」
『……マスター、何でそんな簡単に使えちゃうんですか……』
俺が呟いている右斜め下でエルナが驚いている。
それはそうと、俺が放った不幸の玉は見事にライルの顔面に当たった。
すると、不幸の力はライルを包み込んで勢いよく燃え上がった。
そして、一瞬でライルの体の中に吸い込まれていった。まるで、体に染み込むかのように。
「……あれ、何も起こらない?」
すると次の瞬間、普通に立って話していたはずのライルが足を滑らせて地面に倒れた。
「ぐぁっ」
しかも、手を地面に着くのも失敗したらしく、顔から地面にいった。
さらに、横にいた女冒険者もなぜかこけそうになった。
だが、彼女は片足で踏ん張ったらしくこけずにすんだ。
「きゃっ」
「べふっ」
ただ、その踏ん張った足の下にはライルの顔があるのだが。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「ラ、ライル様!?」
そう驚きながら、倒れたライルを助けようとした、もう1人の女冒険者までもが足を滑らせて、片足で踏ん張っていた女冒険者の膝の上に全体重をかけてしまったのだ。
そして、当然その下には、
「ゔっ!」
ライルの顔がある。
「……やべぇな。この力」
ここまで読んでくださりありがとうございました。
???「くっ、右腕の中に封印された魔剣が。止まれ、止まってくれ!ダメだ! このままではみんなを不幸にしてしまう! 早く、早く逃げてくれ!」
クラスメイト『…………』
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午後6時に2話を投稿する予定です。
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