神裂と英雄の仲間
自由行動ということで、早速どうしようか話し合う。
俺としてはザンとかと合流したいな。
「あいつらは戦わずに休憩所で休むってさ」
「そうですか……無理もないですね」
まあ当然だ。昨日、ヘリドにボコボコにされ、今日、死にかけたのだから。
「それで、これからどうします? 適当にうろつきますか?」
「ですね、休憩所が見える範囲で戦いましょうか」
「ウチもそれでいいし」
「うん、いいと思う」
俺の案が採用された。
あまり離れられないから、休憩所を視認できる範囲の探索になるだろう。
休憩所の安全を守る立派な仕事である。
と、その時。見覚えのある馬車がこちらに向かって走ってきた。
そう、マールボロ城の馬車である。中に乗っているのはイアやザン、ソウル辺りだろう。
数台に増えているのを見ると、他の兵士も魔大陸の調査に参加することになったということか。
「ユウト、あれ」
「ああ」
休憩所の馬車置き場で止まった馬車から降りてきたのは、紫髪の男だ。というかソウルだ。なんでお前が先頭なんだ。
「メビウスの冒険者ですかね?」
「イケメンいるじゃん! あたし話しかけてくるわ!」
まて風間、いきなり突っ込むな。みんな中身残念だぞ。落ち着いて判断しろ。
声には出さず、俺たちは風間を追いかける。
「そこのかっこいい人ぉー!」
「え!? 僕? いやぁ、照れるなぁ。やっぱり貴族だけあって気品とかあるんだろうねぇ」
「そ、そうだね……」
あ、風間がソウルのウザさに気づいた。
自分から話しかけたくせにあははと愛想笑いをしている。何やってんだ。
追いついた俺は馬車から出ようとしているザンとダンを確認して、ソウルの方を見る。
ソウルと目が合った。
「あれ? ユウ……んぐおごぉ!?」
秒でソウルの口の中に氷を作った。
馬鹿野郎、なに名前呼ぼうとしてんだ。
馬車から出てきたザンとダンが悶えるソウルを見て苦笑いをしている。状況を把握したのだろう。
「はじめまして、マールボロ城の冒険者、ダンです」
「ザンだぜ」
ダンは丁寧な挨拶を、ザンは簡単な挨拶をした。
挨拶を聞いた先生が自分の名を名乗り、それに続いて井ノ原と風間も挨拶をする。
「ふ、藤沢文乃です」
「……相良透也です」
藤沢はどもりながらも挨拶をし、相良は少し低い声で答えた、コミュ障なのはわかるがもう少し頑張ろうぜ。
「ミントです」
「神裂雄人だ、俺たちは異世界から来た人間だから、貴族みたいな名前があるけど気にしないでくれよ」
一応忠告しておく。
そういえばこの世界だと名前が先に来るからユウト=カンザキって答えるのが正解なのか。
それはそれでリビアルにバレそうだからやだな。
「はぁ……はぁ……あれ、なんか知らんうちに仲良くなってんですけど」
「この情けないやつがソウルだ」
「なっ!? くっそ、イア! 降りてこいよ!」
「はいはい、今行きますよーっと」
ダンに自己紹介を奪われたソウルは馬車から俺たちを観察していたイアを呼び出した。
ナイス、格子窓から見られてたから引きずり出したかったんだ。
「え、ちょっと、なにあの服、もう服じゃないっしょ?」
同感だ。服着てくれ。下着マントとか本気の変態だから。まあ中身も変態だが。
「イアでーす、よろしくね!」
イアはそう言って相良の手を握ってブンブン振った。
目の前に痴女が現れたことにより相良の思考はブルースクリーン。活動を停止してしまった。
ブルースクリーンなのに顔真っ赤だ。
相良の手を離したイアは俺の顔を見上げてニヤリと笑った。ちなみにイアの身長では俺を見下せない。
「馬車から聞いてましたよー? あの大英雄とよく似た名前をお持ちのようで」
「……さあ、たまたまじゃないかな」
「えー本当ですかね?」
そろそろやめようぜいたずらっ子さん。
詳しく話し出したらマジでバレるから。いやマジで。
「あの、私たちとても弱くて、一緒に戦ってくれませんか? あわよくば教えてもらえると助かるのですが……」
先生が割り込んできて提案してくる。
いいね、こいつらの戦闘を見せれば相良や藤沢にも剣の正しい使い方がわかるだろうし。
「うーん……」
イアが考え込むフリをしてチラッと俺とミントを見る。
「いいですよ、魔法なら私が、剣術ならザンかダンが教えてくれます」
「僕は?」
「ソウルは教えてもらう側でしょう?」
「ちくしょう! 言い返せねぇ!」
まあそうな。強くなっているのは確かだが、まだ足りない。覚醒に必要な最低限の強さが足りていない。
「助かります!」
「じゃあ準備あるから少し待っててくれ」
「わかりました。さて、みなさんそれまで休憩しましょうか」
そうしよう、休憩所なのに休憩してないからね。
他の兵士の準備が整う間、俺たちは休憩所のイスに座り、雑談することになった。
* * *
遅れて馬車から出てきたレッド、グリーン、ブルーが合流し、同じ場所に座った。
「ブルーさん、若いのにしっかりしてますね!」
「いえいえー、私なんてまだまだですよ! もっと強くなって、村を守るんです!」
なんか先生とブルーが仲良くなってる。
その他にも相良と藤沢がレッドとグリーンの二人と話をしていたり、井ノ原と風間がイアとザンの二人と話をしている。
俺はやる事がないので、適当にその辺をぶらついている。と、背後から足跡が聞こえた。
「ソウルか」
「ミントちゃんが無事で安心したよ、でもさ、この後、どうするんだ? ユウトの今のパーティって相当弱いよな、それで大魔王が倒せるのか?」
ソウルはソウルで、しっかり考えているようだ。自分の強さに危機感はないのだろうか。
「無理だな、だから、どうにかして強いやつを利用したいんだが……」
「そもそも魔王は何してるんだ? 味方なんじゃないのかよ」
そういや前に話したな。魔王、会って話をしたい。あいつが昔から、850年前から変わらないなら、味方になってくれる。
「魔王城に近づいた時に会いに行く予定だな。ほら、戻ろうぜ。そろそろ準備終わるだろ」
「おう」
魔王、というワードを聞いてなにかを忘れているような気がした。
必死に思い出す。あ、あれか。
思い出したはいいが別に重大なことでもない、魔王との交流もしたいし、せっかくなので利用させてもらおう。
休憩所に戻るソウルの背を横目に、俺は魔袋に手を伸ばした。




