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魔の森

 昨日と同じ門番に見られながら、何事もなく魔大陸に入ることが出来た。

 メビウスの馬車というだけで、確認無しで壁を超えることが出来るらしい。

 そして、リビアルたちは冒険者の拠点である休憩所に馬車を止めた。


「Sランクは五人で自由行動だ。ABランク、集合」


 Sランクに指示を出したリビアルは、初めての魔大陸に緊張を隠せないABランクを呼んだ。

 後ろから二つ目の馬車に乗っていた俺たちは、駆け足でリビアルの元へ向かう。


「Aランクは武器を受け取り次第周辺の探索をしろ、遠くへは行きすぎるなよ、魔物が落とした素材はこの拠点で回収するから、渡された袋に収納してくれ」

「はい!」


 兵士が馬車から大量の武器を運んでいる。やけに多いと思ったら、荷物用の馬車だったのか。


「Bランクはどうすればいいんですか?」

「……同じく武器を受け取ってもらう。だが、お前たちBランクは東へ進んでいけ。東の方が魔物が弱いからな」

「わかりました!」


 男子が聞きたいことを聞いてくれた。

 あれ、東って魔物弱かったっけ。そんなに変わらないような気がするんだけど。行ってないからわからないけど。


「東……昨日と逆方向だね」

「おお! 本物の剣だし!」


 井ノ原が剣を持って興奮していた。それに続いて相良や藤沢も剣を手に取る。

 俺も剣を取り、何度か素振りをする。うん、軽いな。ヘリド戦の時の剣より軽いんじゃないか?

 やっぱりあの時ABランクを切り捨てる予定だったのだろうか。


「東ですから……左ですね。行きましょう」


 さすが先生だ、俺たちの先頭に立って行動してくれた。


「当然だが、二手に分かれるんだからな? 二班で固まるなよ」

「は、はい」


 まあ当然だ。あの集団は近くにいるだけでも邪魔になるだろう。

 それでも視界に入るくらいの距離は保ちたいな。観察とかもしたいし。


「足引っ張んなよー」


 こっちのセリフだあいうえおくん。

 早く行こう、そんでどれだけ通用するのか見なくては。


「思ったより魔物っていないんですね」

「人が多いところは魔物が少ないんです。少し歩けば出てきますよ」


 俺の入れ知恵だな。そもそも、この世界の人間のほとんどは魔物が人の多い場所に寄り付かないことを知らなかったからね。

 これが大魔王の言っていた平和ボケか。


「……確かに、遠くに何かいる。どうする?」

「行ってみようか」


 マジか、相良あの距離の魔物が見えるのか。

 言われて気づいたよ、遠くで赤い目が光ってる。魔物は目が赤く光っているので見つけやすいな。


「了解、あっちだよ」


 相良が指で魔物のいる方向を示した。

 先生やミントもその光に気づいたらしい、ゆっくり、ゆっくりと近づく。


「ミント、まずは井ノ原や相良に攻撃させろ。危なくなったら攻撃してくれ」

「わかった、やってみる」


 ミント以外に聞こえないように指示を出す。

 初心者の剣技なんてたかが知れてる、だがそれでも、試してみないとわからない。


「ググウグゥ……ガァァ!!」


 こちらに気づいたゴブリンが棍棒を振り回す。俺、相良、藤沢の三人で剣を前に出したが、三人で抑えるのがやっとだ。いや俺は力を入れてないから二人なんだが。


「井ノ原さん!」

「わかってるし!」


 耐えながら振り向くと、井ノ原が能力を使っている最中だった。

 手に紫色の弾が生成され、少しずつ大きくなっていく。そして、野球ボールくらいの大きさになった毒の弾を、ゴブリンに向けてぶん投げた。


「ガッ!?」


 ナイスヘッドショット、ゴブリンの額には紫色の痕がついている。

 先程よりかはゴブリンの力が弱まった。これなら一人で耐えられそうだ。

 と、ここで一つ作戦を思いついた。


「藤沢さん、二人で抑えるから、能力を使ってゴブリンを囲うように空気を剣で斬って見て。なるべく強くね」

「わ、私?」

「お願い」

「……うん、じゃあ、抜けるね。に、いち……!」


 藤沢が合図を出してゴブリンの後に回り込む。

 抑える人数が一人減ったことにより、ゴブリンの力に耐えるのが難しくなった。

 俺が力を加えてないせいなんだけども。


「ふっ、はぁ!」


 藤沢の剣が薄く光っている。そしてその状態で斬られた空気は、視認しにくいが、モヤがかかったような、曇りガラスのような状態になった。

 やはり、斬撃を置くことも出来るのか。


「よし、相良くん、押すよ!」

「おっけい!」


 俺も少しだけ力を入れる。すると、ゴブリンの体が、どんどん後退し始める。


「ギァァ!」


 陽炎のように揺らめいている空間にゴブリンの背中が触れた瞬間、ゴブリンの背中から血が流れた。


「今だ!」

「はぁぁ!!」


 ゴブリンが怯んでいる隙に、相良が一瞬後に下がり、剣先でゴブリンの心臓を突き刺した。


「ガ……ァ……」


 心臓を刺されたゴブリンは、ガクッと膝をつき、地面に倒れ込む。

 そのまま動かなくなり、体から紫色の煙が吹き出す。そして、透明になって消えた。


「やっ、た?」

「おおお! すごいし!」

「先生ハラハラしましたよ!」


 先生や井ノ原が駆け寄ってくる。

 ゴブリン一匹にこの時間か。およそ狩りとは言えないな。まだまだ弱い。

 だが、一般人がゴブリンの体を貫通するほどの力が出せるのだろうか。剣は通常通りの鉄の剣だし。


 この世界に召喚された時、魔力そのものが力に上乗せされるのか。そうじゃないとこの力はおかしい。

 だとすれば、だとすれば、Aランクの奴らはどれほどの力があるのだろうか。

 初めからある魔力というものは、運動神経に関わってくる。これは生まれ持った才能の問題だ。

 だが、運動神経のない人間でも、魔力が上がれば力や素早さなどを強化することが出来る。

 もしその魔力上乗せがなくて、本当にただの一般人だとしたら、ゴブリンに傷をつけることすら難しいだろう。


「あたし何もしてないんだけど」

「先生もです」

「私もだよ」


 力が上がっても、危なかっかしいので心配だったが、まだ三人も仲間がいるじゃないか。

 総攻撃すれば簡単に倒せるぞ。


「次の戦闘でよろしくね、風間さん」

「あたしかぁ……まあ、頑張るわ」


 相良に千里眼で索敵をさせながら、俺たちは東へ、東へ歩き続けた。

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