神裂雄人としての対面
兵士に連れられて行った先は……俺たち、いや、俺以外が転移してきた場所、地下一階だ。
数十分前に見た照明に照らされながら、奥へ進んでいく。
そして、地下に全員が集合した。
「何が始まるんだ?」
「帰れるとか、あるかな」
「ありえないだろ、捨てるとしてもあいつなら利用してきそうだし」
その意見には同感だ。リビアルなら確実に俺たちを囮や奴隷として有効活用する。
リビアルは俺たちの前で立っているが、ミントの姿は見えない。
「お前達に集まってもらったのは他でもない、大事な話があるのだ、聞いて欲しい」
「よくいうぜ、俺たちにあんなこと言ったくせに」
「だよな」
ざわざわとクラスメイトが愚痴を吐く。ヘリドとの戦闘で、俺たちを潰すつもりだったのだろう。その計画が俺のせいで崩壊した。狙われないか心配だぜ。
というかこの名前でよくバレてないな。やっぱり最初に外国かと思ってユウトカンザキと名乗ったのは正解だったな。
実際貴族の場合名前が先に来るので間違ってはなかったが。
「連れてこい」
「はっ!」
あ、はっ! しか言わない兵士さんだ。物陰に入り、誰かの手を引いている。
登場したのはみんなご存知ミントちゃん。髪の色的に場違い感すごいけど大丈夫だろうか。いじめとか受けないだろうか。
「誰あの子」
「可愛い」
兵士に連れられてミントが前に出てくる。
おいリビアル、ミントに近づくなぶっ飛ばすぞ。
「えー、今日からお前らの仲間になるミントだ。ミントがお前らの仲間に加わるのには理由がある。実はな——」
リビアルはノワールという男が大魔王の手下であること、そのノワールがミントにしたこと、王様からの命令、などを多少脚色も加えながらクラスメイトに説明した。
クラスメイトは皆話を聞いていくうちに胸くそ悪くなったのか、顔をしかめている。
「初日に説明したとは思うが、私たちは大魔王を倒し、世界に平和をもたらすためにお前達を召喚した。つまり、ノワールは私たちが倒すべき相手でもあるのだ! 皆で力を合わせて、ノワールを倒し、そして大魔王を倒して、世界平和を実現させようではないか!」
「おおおおおおおおおお!!!」
「リビアルも嫌な奴だけど、そのノワールってやつも嫌なやつだな!」
いい感じにヘイトを俺に向けたな。だが自分も嫌な奴認定されていることを忘れないことだ。
それを忘れて調子に乗っていたら、そのうち足元をすくわれるぞ。
「よ、よろしくね! みんな!」
ミントの笑顔に、クラスメイトたちの憎む相手がノワールに傾いた。
恐るべし、しかもその子Aランクと強さ同等かそれ以上だからね。
「ミントはBランクの冒険者としてお前達の仲間に入ってもらう」
「Bランク、あたし達と同じだし」
「ですねぇ、今村くんたちの部屋は男子だけですから、私たちの部屋に呼びましょうか」
必然的にそうなるわな。ミント一人が男子の部屋に飛び込むとか怖すぎるわ。
男子高校生の性欲舐めるなよ、痛い目見るぞ。
「それでは各自部屋に戻るように。解散!」
リビアルと兵士はさっさと階段を上がり、帰ってしまった。俺たちも戻ろうか。
「ちょっといいかな」
ミントがおろおろしているのを見て、助けに行こうとした時、肩を掴まれた。
「なに……かな? 笹谷くん。帰るところなんだけど」
「ABランクの人たちが何やらリビアルの悪口を言っていてね、心当たりはあるかい?」
なんで俺に聞くのだ、Cランクぞ、こちとらCランクぞ。
新手のいじめだろうか、そこは気になるので聞いておこう。
「……なんで俺に聞くの」
「それは……たまたま目に入ったから、だよ」
嘘だな、朝も俺に話しかけてきた。ここで朝話したからって答えればまだ信憑性はあったのに。
俺も嘘をついてやろうかと思ったが、今嘘をついても意味なんてないので、今日あったことを柔らかく説明する。
「腕試しで兵士にボコボコにされたんだ、その時のリビアルの態度が気に入らなかったんじゃないかな。何人かやられた後に終わったけど」
「そうなのか、ありがとう、引き止めてすまなかったね」
「詳しいことは他の人に聞いた方がいいと思うよ、じゃあね」
笹谷に背を向けてBランクのメンバーが集まっている場所まで歩く。
チラッと俺を見たミントの表情がぱあっと明るくなったのが見えた、やめろ惚れる。
「遅れてごめんね、笹谷くんと話してたんだ」
「……誰?」
今の誰? には二つの意味があるのだろう。まず一つは周りの人に怪しまれないように名前を聞くこと、もう一つはなにこいつ気持ち悪いんだけど、という意味。
「同じ部屋の仲間の神裂雄人くんだよ」
「よろしく」
「よろしくね、ユウト」
いきなり下の名前かよ。いや言い慣れてるからそうなんだろうけど。
「雄人? なんで下の名前で呼ぶんだよ」
「呼びやすいかなって……」
「じゃあさ、俺も颯斗って呼んでくれよ! その方が呼びやすいだろ?」
「いやぁ、内田くんの方が呼びやすいから内田くんって呼ぶね」
ドンマイ内田颯斗くん。てか今村以外の隣の部屋の男の名前はじめて知ったわ。
見覚えがある、足が速い能力だった気がする。ハズレ能力だな。
「私たちも戻りましょうか」
「ミント、あたし達の部屋紹介するし」
「うん! 行こ!」
あらら、新しい女友達もう作ったのね。井ノ原とミントって真逆に思えるんだが意外と相性いいのかな。
「ユウトも、早く行こ!」
「はいはい」
俺は頭を掻きながら答えた。
この選択は正解だったのだろうか、もしかしたら、もっといい方法があったのではないか。
その思いを抱えながら、小屋に向かった。




