説明をしよう
マールボロの仮拠点に転移した瞬間、扉にかけていた念動力が解ける感覚がした。
これで部屋に入れなかった兵士が流れ込んだだろう。今頃ミントについて説明をしたりしているのだろうか。
城の中からは見えなかったが、もう既に空は赤く染まっていた。夕焼けから目をそらしつつ、大きなテントに入る。
まるで遊牧民の家のような拠点だ。ほとんどの建物が木の枠組みと布で出来ている。
テントの中には十数名の兵士が入っていた。
「おおユウトさん、ご無事でしたか」
真っ先に俺を迎えたのはマールボロの指揮長であるシガルド。王様に選ばれただけに、兵士の中ではトップクラスの実力者だ。
敬語を使うのは構わないが、なんだか違和感がある。それも、こんなにごついおじさんに使われると尚だ。
「その事について話がある、シガルド、あいつらは戻ってきてるか?」
「ええ、別のテントにいますよ。イアさん達を連れてきてくれ」
「はっ!」
兵士にイア達を連れてくるように命令したシガルドは、場所をとらない様に壁際に移動した。
シガルドは基本自分より上の地位、実力のある者を敬っている。その為、イアとかいう下着工口マント女にも敬語を使っているのだ。可哀想に。
兜を外し、鎧も脱ごうとしていた時、ソウルが部屋に入ってきた。
「うぃーっす、あれ、ミントちゃんは?」
「とりあえず集まってくれ」
ソウルに続き残りのメンバーも中に入ってくる。
「で、何があったんですか?」
「なんでミントだけ戻ってきてないんだぜ」
「あー、そうだな。ミントが居ないのは俺の責任だ。でも何とか上手くまとめてきたから聞いてくれ」
俺は皆に座るよう手を下に動かした。
あぐらをかいて一旦落ち着く。ついでに魔袋からアイアスも出しとこう。
「やっと出られたわ。それにしても大変だったわね」
「突然煙幕で目潰しされてな、その後そのリビアルがミントを連れて地下に逃げたんだ。そこで俺がミントを助けた。ここまではわかるよな?」
「それならなんで連れ帰ってこなかったんですか?」
ブルーが素直な疑問をぶつけてくる。確かにこれだけ聞いたら助けて連れ帰るはずだと思うだろう。
レッドもグリーンも真剣に聞いている。俺なんかよりも付き合いの長い人間なんだから、そりゃあ心配する。
「そこが本題なんだ。メビウスから俺、というより黒騎士ノワールという存在は大魔王の手下という扱いになってるんだよ」
「大魔王の!? んなことして大丈夫なんですか!?」
「まあユウトだってバレてないし、メビウスの王様とも繋がってるから大丈夫だ。それでな、このままミントを連れ帰ったらミントが狙われちまう、ということでミントを俺のいる異世界人のグループに入れてもらうことにしたんだ。あー、わかりやすくまとめると、息子のリビアルが迷惑をかけた分頼みを聞いてくれたって話だ」
自分でも途中から何を言っているのかわからなかった。あとまとめられてない。
説明することが多すぎるし、現実味がないからさらにわかりにくくなっている。
「つまりミントは無事でユウトと同じグループに属した、ということだな?」
ダンが上手くまとめてくれた。そうだ、皆が知りたい事実はミントについてだった。
「そゆこと、俺はこれから鎧脱いで城に戻るから、明日も探索頼むな。もしかしたら俺もあの森に行くことになるかもしれないし。どうだった? 手こずったりしたか?」
「強くなってる実感があるよ、数匹は無理だけど、一匹なら一人で倒せたし」
フフンと鼻を鳴らしながらソウルが腕を組み自慢気に言ってきた。う、うざい。久々にうざい。
「やるじゃん、そういやミントも凄かったぞ、なんか根っこをうねうね動かしてゴブリンを倒してた」
「ミントちゃん怖!?」
わかる、植物が襲ってくるのは慣れているけど、不規則に動き、そして的確に体を貫いてくるだなんて、恐ろしくてたまらない。
あの才能なら、Sランク組に勝るとも劣らない能力を身につけられるだろう。
「三人はどうだ? 手応えあったか?」
「剣がさ、重いけど使いやすいっていうか、手に馴染むんですよ!」
語彙力……まあ使いやすいのはいい事だな。
愛剣のノワールも、使いやすさを重視して作ったから、気持ちはわかる。
「魔力が伝わりやすくて、前よりも速く撃てるようになったんですよー」
「どんだけ速くなるんだ」
ただでさえ速かったのにさらに加速したのか。末恐ろしいな。
ということは、グリーンも……
「魔力の込め方次第で剣が軽くなって、凄く僕にあってる武器です……あの、本当にこれ貰っちゃっていいんですか?」
やっぱりな、スピードアタッカーのグリーンには軽い剣がいいと思ったが、材料からして重くしかならない。
だが、魔力の使い方によって重さが変わるようにすれば希少な石を使って剣を作ることが出来る。そうすれば速さは変わらないし、剣は強くなるしでいいことだらけだ。
「扱えてるってことは素質があるってことだからな、新しい武器にするまで使ってていいぞ」
「いやー、これよりも合ってる武器はないですよ、さっすがユウトさんだー、うん」
「はっはっは、レッドくん、丁寧に扱うんだよ?」
篭手を外し、適当に褒めてきたレッドの頭の上に手を乗せる。
そして一部トサカのように逆だった髪の毛もろともわっしゃわっしゃと撫で回した。
「ぎゃああああ!!」
「よっし、もう行くわ。頑張れよー」
少しずつ緩めていた鎧を一気に脱ぐ。
それを魔袋に入れてから、俺は転移魔法でメビウス城の物陰に転移した。




