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ミントを探し出せ

 部屋を出てからミントを探して走っている。途中で邪魔をしようとする兵士もいたが、全員スルーしてきた。

 魔法で見えなくすればいいと思うかもしれないが、これだけガシャンガシャン鳴らしていたら効果も薄くなるので使っていない。


 さながらRTA、ミントを探し出すRTAはーじまーるよー、はい、よーいスタート。

 城について知っているとは言っても、内部を知り尽くしている訳では無い。さっき通り過ぎた部屋がなんの部屋なのかすら知らない。


 ふと、大きな扉を見つけた。

 扉の左右には槍を持った兵士が立っている。


「何用だ貴様!」


 荒々しいな、もうちょっと楽に行こうぜ。


「邪魔するぞ」


 抑えようとする兵士を押しのけて扉を勢い良く開ける。

 すると、目の前に玉座に座った男が目に入った。


「何者だ」

「……ノワールです」


 低く、それでいて優雅な声。

 なんとなくだが予想はつく。メビウスの王だ。


「ふむ、何をそんなに焦っている?」

「実は——」


 俺はメビウス王に仲間がリビアルに連れ去られたこと、事情を話した。

 扉は念動力で押さえつけているため兵士は入ってこない。


「リビアルめ……また勝手なことを」

「ええ、どこに行ったのか心当たりはありますか?」

「どこぞの知らぬやつの願いを聞くのはあれだが、まあリビアルのやらかした事だ、特別に手を貸してやろう。あやつなら地下にいる、我が城の地下は深い、人の入らぬ場所には魔物さえ湧くほどだ」


 城の地下に魔物……? それはどういうことだろうか、魔物が湧くほど深い、または魔法が届かないほど横に広がっているのか。

 どちらにせよとんでもない広さなのは間違いない。この街は驚くほど広いので、地下は下に広いのだろう。


「ありがとうございます、それでは」

「おおい待て、ノワールといったな、かなりの手練と見た。リビアルのやつに灸を据えてくれないか」

「……わかりました」


 王様から流れで頼みを受けてしまった。ああそうだ、これを餌に後で何か頼んでみようか。

 念動力を解き、体重をかけていた兵士がドサドサ倒れ込んできた。さっきよりも人数増えてるぞ。まあ王の危機なら仕方がないが。


「王様、ご無事ですか!!」

「止まれ貴様!」


 大量の兵士をかわし、物陰に隠れてからクラスメイトが召喚された地下に転移した。


 壁は灰色で、薄暗い地下。ここよりも下はまだ知らない。とにかくこの階段を降りればいいのだろう。

 地下二階、地下三階と降りていくにつれ、魔力を感じるようになった。確かに城の地下に人がいる。リビアルとミントだろう。

 走って探すのは時間がかかる。もう飛んでしまおう。

 飛行魔法で下に、下に降りていく。急な方向転換はできないので、壁を蹴って曲がる。

 魔石の光が下に行くにつれて小さくなっていく、やはり地下では照明の確保が難しいらしい。


「っと、この階か」


 脚を地面につけて急ブレーキをする。ガガガっと金属と床が擦り付き、火花を散らした。

 道は右と左に分かれている。


「な、なんだ今の音は」


 魔力で場所はわかったが、声が聞こえて確信に変わった。右だ。


「ミント!」

「ノ、ワール!」


 ノで区切るな。違和感を感じたのはわかるけどすっと言ってくれ。


「な、何故ここだとわかった! それに、ヘリドはどうした!」

「さあな、とにかく、ミントを返してくれよ」

「わざわざ奪っといて、返すわけないだろ!」


 リビアルとミントの顔がよく見えない。随分下まで降りたようだ、光魔石がほとんど仕事をしていない。

 つまり、ノワールが自由に動ける場所、ということだ。


「ノワール、助けて!」

「その為にリビアルを倒さなきゃな」


 カシャン、カシャンと歩く度に鎧が鳴る。

 暗視魔法を使ったので、もうリビアルとミントの顔ははっきりと見えている。

 さて、悪役になるにはどうすればいいか。


「く、来るなっ」


 リビアルはミントの首に手を回して捕らえているようだ。この辺には植物もないし、ミントは自力でリビアルを倒すことは出来ないな。


「最後に、本当に返さなくていいのか?」

「か、返さない! ミントは俺のものだ!」

「そうか」


 俺はノワールを鞘から抜き、魔力を注ぎ込む。

 そして、自分の顔に仮面をつける。俺は悪役、メビウスに敵対する、悪。


「……チッ、あーあ、せっかく騙せてたのによォ、とんだ邪魔が入っちまった」

「ノワール……?」

「どういう意味だ」

「大魔王様に渡すンだよ。ミントを生贄にするためになァ」


 ここでミントに暗視魔法を使う。ミントと俺の目が合ったので、魔法は効いているはずだ。

 困惑しているミントを見つめ、首を縦に振る。ミントはハッとした表情をしながら、うんうんと二回頷いた。


「ノワール、嘘だよね? ねぇ、私たち仲間でしょ!?」

「仲間なんかじゃねぇよ、お前は、ただの生贄だ」

「嘘、嘘よ!」


 俺たちの即興アドリブに、リビアルが混乱している。だがなんとか脳をフル回転させて理解したようで、俺を睨みつけてきた。


「そろそろ終わりにしよう、大魔王様がお待ちだ」

「殺す……殺す!!」


 殺意だけは一人前だな、だが、リビアル、お前には力がない。お前じゃ、そこのミントにすら勝てないよ。

 リビアルの足元に植物の種を投げる。パラパラと落ちた種は、なんのアクションも起こさずに停止した。

 俺は見つめてくるミントに首元をさすって合図を出す。


 ミントは理解してペンダントに手をかけた。

 種からガタガタと動き、芽が出る。そしてその芽はとてつもない速度で成長し、ツルを伸ばす。

 そのツルも太く、長く成長していく。そして、ツルはリビアルの足に巻きついた。


「なっ!? なんだこれは!」


 リビアルに暗視魔法を使う。そして、黒く染まった愛剣ノワールを地面に放った。

 ノワールは地面にぶつかることなく、すっと影に吸い込まれる。

 既にくらい地下が、さらに暗くなる。


「……え? 何を……」


 リビアルが俺を見る。俺は下を指さしてリビアルの視線を誘導した。

 後ろの壁からノワールを出す。今までとは比べ物にならないほどの大きさの刃。

 影しかないので、自由に動かせる。どこまでも、伸びる。

 リビアルが顔を上げた時には、既に肌に触れるほどの距離まで、剣先が伸びていた。


「ヒッ……」


 俺はさらにノワールを出した。

 横の壁、リビアルのすぐ近くの壁、床、とにかく大量の剣が飛び出してくる。

 これだけ暗いのだから、夜しか使えないあの攻撃もできるはずだ。

 俺の背後の壁、そこから剣を二刀発射する。伸ばすわけではなく、発射。

 剣そのものを、リビアルに飛ばしたのだ。


 ひとつの剣は足を、もうひとつの剣は肩を掠めた。


「ぐああっ!? い、いだいっ、痛い痛い痛い痛い!」


 リビアルは肩を手で抑えてうずくまる。足も怪我しているので、屈んでも痛みを感じるようだ。

 ミントを捕らえていた腕はもうない、ミントはリビアルから離れた。


「わ、わかっだ、ミントは返ずっ!! だから!」

「……まあいいか、ミント、来い!」


 俺はミントのいる場所まで走り、腕を掴む。

 そして、リビアルに聞こえないように、小声で声を出す。


「走って上の階に上がれ、その後転移する」

「わかった」


 ミントを掴む手を緩める。


「逃げんな!」

「待、て」


 走ろうとした時、足に違和感を感じた。

 下を見ると、リビアルが地面を這いながら俺の足を掴んでいた。

 ミントが離れたので、ツルが消滅して種に戻ったらしい。


「殺す、お前は絶対に、コロス!!」

「ハッ」


 俺はリビアルに掴まれた足を振りほどき、顎に蹴りを入れた。

 それと同時に、暗視魔法を解く。


「アガッ」


 動かなくなったリビアルを置いて、ミントを追いかける。

 さて、ここからが本当の戦いだ。あの王様と、話さなければならない。

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