黒騎士ノワール
みんなを集め、リビアルについての話をしたが、ザンやイアの反応は、そこまで大きくなかった。
ユウトならなんとかなるでしょ、そんな雰囲気がビシビシ伝わってきたのだ。
信用されているというのは嬉しいが、もう少し何かなかったのだろうか。
「もう一度言うけど、本気でリビアルについて行くつもりなの?」
「おう」
このアイアスを見習え。ミントと仲良かったからこその心配か。
「でもお城に行って、どうするんですか? 何されるかわからないでしょう?」
「それなんだよ、リビアルがミントのことを好きになったってのが困るんだ。リビアルがミントを手に入れるためにどんなことでもするってなったら、どうしようもない」
もし無理やりミントを捕まえて俺を城から追い出す、なんていうことをされたらあまり騒げない俺はミントを救出することが出来ない。
いや、やろうと思えばできるが、そうなったらノワールは犯罪者になってしまう。……犯罪者?
「ユウト?」
「そうだ、そうだよ。犯罪者になっちまえばいい。ノワールは、メビウスに歯向かった犯罪者だ」
いいことを思いついた。ノワールを魔大陸用の、情報共有のために使おう。
人間だと怪しまれ、襲われてしまうかもしれない魔大陸の村や都市、そこに黒騎士として、魔王の手下として忍び込むのだ。
これならユウトは怪しまれないし、メビウスに『黒騎士ノワール』という敵ができる。
「犯罪者? どうしてそんなことをするの?」
「ミント、お願いがある。リビアルに捕まってほしい」
「えっ?」
「大丈夫、すぐに助ける。ノワールはメビウスの敵だと認識させたいんだ」
ノワールを演じている時は声を低くしているので、Bランクの神裂の高くしている声なら怪しまれる心配はないだろう。
物は試しだ、やり直しなんていくらでも効く。俺が俺とバレてないなら。
「ミントさん、頑張ってください……!」
「そう、だよね。助けてくれるんだもんね。ありがとうブルーちゃん!」
「とりあえずイアたちはこのまま狩りをして、ある程度時間が経ったら仮拠点に帰る、ということでいいですかね?」
「ああ、そうしてくれ」
これは大事なキャラ付けだ。ノワールが悪いやつというイメージをつけてやる。
「そういやさ、お前らも見てたんだろ? あいつらの戦闘」
「見てたぜ、あんな攻撃初めて見たぜ」
ザンが答える。
やはり見たことがない能力か。
ファイアマスター、炎を操れる能力。どんな魔法使いにもできないような動かし方ができる。
俺も見ていたが、あんな炎の動かし方は俺にはできない。
「イアもあんな魔法初めて見ましたよ、なんですかあれ?」
さらにイア。イアでも見たことのない魔法。
あのカチューシャの女か。確か能力調査の時にも近くにいたな。
能力は……ブラッドエクスペリエンス、血の経験だ。この能力は血を凝固させて刃などの形を作り攻撃する能力だ。
しかも、魔物の血を吸収していた。倒せば倒すほど、能力は強くなっていくらしい。とんだチート能力である。
「ブラッドエクスペリエンス、血を使って攻撃する能力だ」
「はぁ……あんなのアリなんですねぇ……」
チートだからな。ぶっちゃけ、あの女はかなり危険だ。名前はなんだろうか。後で先生に聞こう。
「あの氷がガキンガキン鳴ってたのはなんですか?」
「ブリザードマスター。文字通り氷を操る能力だよ、氷魔法ならブルーでもできるんじゃないか?」
「氷魔法は得意です!」
そんな感じするよ、水魔法と氷魔法が得意なんだろ。
ブルーが本気を出して氷魔法を使ったら、一体どんな魔法になるのだろうか、見てみたい気もする。
「じゃあさ、剣で斬った時に傷口が光ってたのはなんですか?」
「俺にもよくわからん。でも、多分二撃必殺だろうな」
クラスの委員長、笹谷が剣で魔物を攻撃した時、その傷口が赤く光っていた。
そしてその傷口にもう一度攻撃した時、大した威力でもないのに魔物が倒れ魔力に変わったのだ。
あれは同じ場所に二回当てれば確実に倒せる能力なのではないかと、俺は考えている。
「もう一人の男なんだけどさ、ずっと見てたのに何もわからなかったんだよね」
「ですよね、あの人、気づいたら魔物を倒してて、どうやって倒したのか何度見てもわからないんですよ」
「俺もそれは気になってた。あいつ、名前もわからないが、他の人とは頭一つ抜けた能力を持ってる」
耳の近くの毛がはねている男。Sランク組の最後の一人、名前はわからない。
彼が魔物に近づき、手を動かしたかと思うと、魔物がバッタバッタと倒れてしまう。
あれはどんな能力なのだろうか、もしかしたら、とんでもない能力なのかもしれない。
「考えてもわからねぇな、とりあえず俺たちはもう行くから、あとは頑張ってくれ」
「行ってくるねー」
ザンたちに手を振りながら、俺とミントは冒険者の拠点に向かった。
* * *
待ち合わせ場所の冒険者の拠点に到着した。俺たちの乗ってきた馬車のすぐ近くに、二台の馬車が止めてある。
あれがリビアルたちの馬車だろう。
「やっと来たか、乗れ」
まだ一時間経ってないだろ。
「ミント、何度も言うが俺の名前はノワールだからな、間違えるなよ」
「う、うん」
ユウトなんて呼ばれたら怪しまれること間違いなし、というか怪しまれる。確実に怪しまれる。どのくらい確実かというと、新幹線の到着時刻くらいは確実だ。
「俺たちの乗る馬車はこっちだ」
「そうか」
リビアルに言われるがまま馬車に乗り込む。
馬車の中には数人の兵士、隣の馬車にはSランク組が乗っているようだ。
「鎧、脱がないんすか?」
「このままでいい」
初めに声をかけてきた兵士が話しかけてきた。鎧を脱いだらバレるからな。
その後、俺とミントは、城に着くまで兵士との会話をほとんどせずに馬車に揺られ続けた。




