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計算違い

 ヘリドを倒し、俺は一気にクラスの人気者になった。一部を除いて。


「チッ、たまたま相手がこけただけだろうがよ」

「そうだそうだ」


 神裂くんありがとー! という女子の声を遮って、Aランクの名前も知らぬクラスメイトが言葉を挟んだ。

 たまたまこけただけ、そう、そう見えるように頑張ったのだ。もっと印象を悪くしろ。

 俺がヘリドと戦うことを嫌がっていたのは注目されてしまうからだ。

 よく考えてみると、唯一のCランクというだけで国からも味方からも注目されているような気がする。


「でも神裂くんが行ってくれてよかったー! 神裂くんいい人だね!」


 いい人、その言葉の初めに『都合の』がつくんじゃないか? 本当の心は自分の代わりにヘリドの前に出てくれてありがとう、だろうよ。


「あ、ありがとう。自分でもびっくりしてるよ、みんなが言うように運が良かっただけだけど」

「何はともあれ自由だー! 私街行きたーい!」

「わたしもー」


 騒いでいた女子はもう俺のことなどどうでもいいようだ。皆軽くお礼を言ってからバラバラに去っていく。


「じゃ、じゃあ俺も部屋に戻るね」

「神裂くん、その、ありがとう」

「いきなりあんな無茶なお願いをしてすみません……」

「大丈夫です、何とかなりましたから。それじゃあ」


 残っている先生や相良にそう言い、部屋に戻る。

 戻る途中で兵士に捕まり、銀貨を数枚渡された。国から支給されたお金らしい。

 これで街に行く人は買い物するのか。これだけあれば何か適当に欲しいものを一つ買えるだろう。

 武器を買うとしても安物の剣程度しか買えないが。


「誰もいない、か」


 部屋にはギャルも藤沢もいない。もちろん先程まで格闘場にいた先生と相良もだ。

 隣の部屋からは物音一つしない、ボコボコにされたのだ、トラウマを覆うために遊び尽くすつもりだろう。


「魔大陸……マールボロ城どっちに行こうか」


 魔大陸ではSランクの五人が本物の魔物相手に腕試しを行っている。それを見に行くのもいい。

 だがマールボロ城、今くらいしか自由な時間なんてないだろうから、一旦帰って移動の手伝いをするのも捨てがたい。


 俺の選択はこうだ。


 両方。


 マールボロ城に戻ってダンや数人の兵士を北大陸に転移させ、拠点を作らせる。

 そして余ったものを連れて行って魔大陸でのSランクの戦闘を見せる。

 夜になったら先生とクラスメイトの名前の確認、これが俺が考えた今日の予定だ。

 そうと決まれば即行動。マールボロ城に転移するため、俺は転移魔法を使用した。


* * *


 マールボロ城は最近までの静かな雰囲気とは一転、濁流のように兵士が走り回っている。兵士は俺の転移魔法を見慣れてしまっているのでさほど反応はしてくれない。したとしても、あ、ユウトさんだ。くらいだ。

 忙しそうだな、と思いつつ王様の部屋へと向かう。


「おや、ユウトくん、今朝ぶり」


 今朝ぶりって、まあ確かに夜中だったが。朝に近かったのか。

 まずは俺が自由に動けることを伝える。


「なんかまた自由時間になりましてね、こっちのお手伝いでもしようかと」

「本当かい!? ああそうだな、えーっと、資材の運搬と、兵士の移動と、それから……」


 王様は指で数えながら考え込んでいる。そんなに忙しかったのか。

 兵士が走り回っていたのは出発前の準備をしていたからだろうな。


「はいはい、転移魔法で運べるんで時間はかからないですよ。拠点の建設は俺には手伝えないんでそれだけやります」

「なんてありがたいっ、ところでダンくんはどうするんだい?」

「朝出たならそんなに進んでないと思うんで、途中で引っ捕まえます」

「そ、そうか」


 完全に作戦ミスだ。今日は全員で魔大陸に演習でもするのかと思っていたが、まさかSランクだけとは。

 手が離せなくなると考えてダンを先に行かせたが、無駄足になってしまうとは。


「ひとまず資材だね、倉庫から運び出している途中でね、それを一箇所に集めてるんだ」

「その後一気に転移ですね」

「そうなるね、もうすぐ運び終わると思うからまだ飛ばさなくていいし……兵士も、今は働いてるし……」


 あれ、やることないじゃん。資材が全て倉庫にあれば俺が倉庫から北大陸に運んだのに。

 中途半端に運んでしまっているのでどうすることも出来ない。兵士も動かせない、となれば。


「ダン捕まえてきます」

「……ごめんねぇ」


 頭を掻きながら謝る王様、北の港から飛んでダンを探せば良かったのかもしれない。

 仕方ない、ダンを探しにユウトのエアライドでもするか。


「ダンと北大陸で拠点の場所を決め、戻ってきてから資材と兵士をそこに転移する、ということでいいですかね?」

「そうしてもらえると助かるよ。なら、ユウトくんが帰ってくるまでに準備を終わらせないとね」

「お願いしますよ。あと、北大陸側の魔大陸に例の異世界人が戦闘をしているので、あとで誰かとそれを見に行こうと思ってます」


 問題は誰を連れて行くかだ。数人を隠蔽魔法で見つけさせなくしながら移動するのはかなり難しい。というか疲れる。

 なので一人、多くても二人を連れて行く予定だ。


「魔大陸で戦闘かぁ、また来た時に強さがどれほどなのか教えてくれると嬉しいな。兵士と会うといざこざが起こる可能性があるな……こちらはなるべく関わらないよう、兵士に注意するよ」

「ではダンを探してきます」

「頼むね」


 王様の部屋から飛び出し、ベランダから飛行魔法で飛び立つ。

 北の港に向かったのならそのまま北方向だ。まっすぐ進みながら探さなければならない。

 広大な草原から人ひとりを探すため、俺は見逃さないようになるべく周りを見ながら飛行した、

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