話し合いの末
背後から足音が聞こえた俺は、即座に振り向いた。
部屋に到着し、床を滑るようにして登場したのは戦う気満々のダンだった。
「何してんのお前」
「ユウト! 聞いたぞ、北大陸で大事件が起こったらしいじゃないか! 俺も連れていけ!」
「まだ連れていくとか決めてないんだが」
でもまあザンやイアをメビウスに連れて行って何らかのアクションを起こすのは得策かもしれない。
近いうちに実戦練習もするだろうし、その時に何かできるかもな。まだ何も決まってないが。
とにかく、ダンを加えたメンバーで話し合いだ。
「じゃあユウトくん、何があったのか説明してくれるかな?」
「あったことを話すと長くなるんですが、北大陸のメビウスが召喚魔法を使いました」
「召喚魔法だと!? それは禁術だったはずだ!」
ダンが驚く、二ヶ月前の大魔王の魔物召喚と照らし合わせて考えているのだろう。
今回はあくまで人間の召喚だぞ。
「その禁術をやったんだよ。だが召喚したのは魔物じゃない、人間だ」
「人間を召喚……」
「そうだ、そしてその召喚された人間は俺の元々いた世界から転移してきた奴らなんだよ」
「ユウトの世界!?」
予想以上にミントが驚いている。ミントが驚くところか? 全員驚いているので気にしなくていいか。
俺の世界、この世界で大英雄となってしまった男が元いた世界がどんなところなのか、想像もつかないだろうよ。
「全員で40人、そいつらを使って大魔王を倒すつもりだろうな」
それ以外考えられない、今兵力を強化するのは大魔王に対抗するため、そう考えるのが当然だ。
「40人……かなり大規模な召喚魔法だな」
「んで、俺は今回その転移に紛れ込んで一緒に転移してきた人間だと思われてる」
「はあああああああ!?」
驚きすぎだろ、大胆な行動に出たのはわかるが元クラスメイトなんだぜ? バレないバレない。先生にはバラしたけど。
「そんなことがありました、と。王様、どうします?」
「どうって言われてもね……予想外のことが起こりすぎて処理しきれないよ」
さすがの王様もこの情報量の多さは予想外のようだ。
まずどこから決めようか、俺がこれからどうするか、これを決めよう。
「じゃあまず、俺がこれから先どうするかだけど、俺はメビウスが召喚した異世界人のふりを続ける。このまま行動すれば、メビウスの計画を知れるついでに大魔王を探せるかもしれないからな」
「明日ユウトくんはまた北大陸へ帰るのかい?」
「そうなりますね」
「うーん、だとするとこちらからも動いた方がいいのかもしれないね。兵士も魔物に対応できるようになったから、ザンやイアをアイコスから離しても大丈夫になってる。強い冒険者をメビウスへ向かわせれば、ユウトくんの手助けをするついでに魔大陸の調査ができるよ」
大魔王を探すために北大陸か、直接魔大陸に行かなければならなかったのだから、これを機にみんな一緒に北大陸へ移動しようってことか。
俺からしても手助けがあるのはありがたい。
「では北大陸で拠点を作り、そこから調査を進めていく、ザンやイアは俺の手伝いをする、というのはどうでしょう?」
「いいかもだね。みんなもそれでいいかい?」
「いいですよー」
「いいぜ」
拠点を作るのには準備がいるからな、今決めることはこのくらいで大丈夫だろう。
さて、問題はミントだ。
ミントにも何かしら手伝って欲しいのだが、今のところは思いつかない。街に迷い込んだ少女として街に住ませるか?
ダメだ、守りきれる自信が無い。城に拘束されている以上街へは安易に行けない。
「ユウト、何かできることある?」
「考えてるんだが……思いつかない」
「そっか……じゃあその拠点っていうのができた時に私もそこに行きたいな」
「いいんじゃないか? その時には俺も何か手助けが必要になってるはずだからな」
村人だからこその考えを持ったミントだ。何か、役に立てる方法がどこかにある。
馬鹿な王族にミントの気持ちを伝えれば、心が動くかもしれない。
メビウスの王が、その馬鹿な王族だとしたら、大魔王討伐どころではないからな。
「よーし! その時はお父さんも連れていくね!」
「お、そりゃ心強いな」
ミントの父親は国一番のアイテムマスター。実力はザンやイアよりも上だ。
ザンとイアの冒険者ランクがSSということは、それよりも強いことになる。
クラスの奴ら要らないんじゃないだろうか。
まあ即戦力と考えるとあのクラスメイトは力強いから必要かもしれん。
「王様、明日から北大陸への遠征の準備を始める、ということでお願いしますね」
「うん、数日すれば拠点も完成すると思うから、それまであっちで頑張ってね」
「定期的に、夜とかに帰ってきますよ。あんまり頻繁に居なくなると怪しまれるので昼間は難しいですが」
昼間に転移して来れる場面なんてたかが知れてる。
自由行動の時なら転移しやすいかもな。
「俺はどうすればいい」
「僕は?」
「ダンは……先に北大陸に向かったらどうだ? 戦いたくてたまらないなら拠点の確保とかをすりゃいい」
「なるほど! 明日の朝出発だな!」
早いな、もっと堅実に行動してもいいんじゃない? それともそんなに戦いたいのかな?
明日の朝出発となると、到着まで三日と言ったところか、その次の日くらいには他の兵士も向かい始めるだろう。
「ソウルはザンたちと一緒にその拠点に向かえばいい、戦闘の練習もしとけよ」
「ザンと一緒に行けばいいのか、了解。はぁ、北大陸かぁ……」
ソウルは北大陸や魔大陸の魔物の強さを知らない。北大陸の魔物自体はそこまで強くはない。
そして魔大陸の魔物、北大陸から行ける魔大陸の魔物はまあまあの強さになる。Aランク様ならなんとか勝てるくらいだ。
さて話し合いはおしまい、もう寝よう。全員欠伸をするくらいにはみんな眠いんだ。俺も眠い。
「これで決定でいいですよね? じゃあ各自解散で、俺は明日の早朝に向こうに転移します」
「それじゃあもう寝ようか、ていうか早く寝たいよ」
「私も眠いよー」
氷霧亭に泊まっている俺たちが帰ろうとした時、とても大事なことを思い出した。
明日の『早朝』にメビウスへ転移する、俺は早朝に起きなければならないのだ。
まあ簡単に言うと、起きれない。
というわけでミントにお願いする。
「ミントにお願いがあるんだけどさ」
「なに?」
「明日、起こして?」
次の日、どこから持ってきたのか、ミントに熱湯をかけられた俺は一瞬で目が覚めるのだった。




