寮内視察
どこに行くのかを考えながら歩いていると、自分たちの部屋、寮付近まで来てしまっていた。
どうせだからSランクとAランクの寮を調べよう。
俺は再び隠蔽魔法を使い、Aランクの寮へ入った。
「雄大たちずりぃよな、あんなに美味そうなもん食いやがってよ」
「まあまあ、俺たちも美味しいもの食べさせてもらえたじゃんか」
「まあそうだけどよ」
Aランクの奴らもSランクの飯を羨ましがってるのか、Aランクの飯は何だったのだろうか。
そしてSランクの男、雄大か、名簿で調べよう。
雄大雄大……おっ、これか。
金町雄大。確か、あのチャラ男くんがそんな名前だった気がする。
「しかし男くせぇな、なんも面白くねぇ」
「女子は女子で固まったからなぁ、まあでもあのうるせぇ二人が居なくなったから静かでいいよな!」
うるさい二人、ギャル二人のことか。
嫌われてるという訳では無いだろうが、多少煙たがられているようだ。それはもう嫌われているのではないのか。
まあ一部の男子に嫌われてるってことだろう。
「あーつまんね、ゲームもできないしよ」
「WiFi無いのかよ」
あるわけねぇだろ何言ってんだ。むしろあったら怖いわ。
陽キャ御用達のソシャゲが電波の影響で起動できないようだ。通話もチャットもネット掲示板も見られない。スマホが光る板になってしまっている。
異世界では写真が撮れるということはとても大事なのだから、あまりバッテリーを消費して欲しくないものだ。
男は案の定だらけている。これ以上収穫もなさそうなので女子の部屋に行こう。
「えーまじー?」
「キャハハッ」
扉の向こうから話し声が聞こえるが、俺が扉を開けるわけにはいかない。勝手に扉が開くなどホラー以外の何物でもない。
「トイレ行ってくるね」
「ってらー」
トイレに行く女子が扉を開けた瞬間に俺も部屋に入り込む。潜入成功。いけない事をしている気分だ。
実際いけない事だが。
「私たちどうなっちゃうんだろうね」
「先生は大丈夫って言ってたけど、やっぱり心配」
こいつらが戦えるのか心配だが、その時はその時だ。自分の実力不足を呪うんだな。
少しでも仲間という範囲に入っていれば、多少の手助けはしていたのかもしれない。
「でも、戦うしかないんだよね」
「どうせ私たちには能力があるんだから、戦闘くらい簡単だよ!」
自分の能力を過信しすぎてはいけないよ。
どんな能力もどこかに欠点がある。完璧な力なんてない。
俺はその欠点を別の力で補っているのでまだなんとかなるが、一人がひとつの力を持っているとなると、やはり仲間同士で固まらなくてはならない。
俺は扉の近くでトイレから帰ってくる女子を待つ。
引かれた扉からするりと外へ移動。
次はSランクの部屋だ。そもそもSランクの部屋ってどこにあるんだ。
そのへんを歩いている兵士に聞いてみよう。
「あの、ちょっといいですか?」
「なんだ?」
「Sランクの人たちってどこの部屋を使ってるんでしょうか?」
「Sランク? 確か……二階の右奥の部屋だ。そこに一人一つ部屋を与えられている」
一人一部屋だと? なんて贅沢な。それならAランクの生徒も何人かそこに移動して俺たちがあの寮に移動すればいいじゃないか。
「ありがとうございます、それでは」
二階となると、階段を登らねばならない。
俺が知っている階段は入口付近の階段のみだ、他にもあるのかもしれないが、そこから行こう。
入口まで移動した。左右に階段があるという一般的な造りの玄関である。
「まさか正式に城に呼ばれる日が来るとは思わなかったですよ」
「私もだ」
入口から細身の胡散臭い男と、太った髭面の男が入ってきた。
およそ王族とは思えない見た目だ。来客だろうか、それにしては薄汚れている。
俺はそれを横目に階段を上がり、右の角を曲がった。
「しかし……」
「だが……しては……なるぞ」
正面の部屋から話し声が聞こえた。
入ることができないので聞き耳を立ててやろうかと思ったが、よく見ると壁に穴が空いている。
おしゃれな部屋だからだろうか、装飾の一部に人一人通れるくらいの大きさの隙間があるのだ。
高いところにあるから入られる心配はないと思っているのだろうか、残念、俺飛べるんだ。
抑え目の飛行魔法でひょいっと部屋の中に侵入。
部屋にいたのはあのいけ好かないクソイケメン、リビアルと、クラス委員長の笹谷だ。
一人部屋にしては大きいソファに腰掛け、会話の内容を聞く。
「もう一度言っておく。Bランクの奴ら、あいつらは使い物にならない。だから私たちで有効活用する、わかるだろ?」
「でも……まだ、まだ使えるかどうかはわからないでしょう!?」
「わかるさ、あいつらが強くなるまで待てるほど、面倒を見るつもりはないからな。ここでリタイアだ」
Bランクを、有効活用……? ついに、というか、早速囮として使われるのだろうか。
使えない人間は始末する、面倒を見る必要は無い、と。まあ合理的だな。
国にとって、魔力の少ない異世界人など捨て駒でしかない、むしろお荷物だろうからな。
「……殺すようなことはしないんですよね?」
「ああ約束するよ、絶対に殺さない。盾にもしないさ。ああそうだ、使えないと判断されたAランクの冒険者もその対象だからな」
「そんなっ……」
Aランクも対象なのかよ。でも確かに怖がって戦うことすらできないやつとかいそうだな。
特に女子が多いだろう。実際、さっき見てきた女子たちも戦闘を怖がっていた。
「今回話した事は俺たちだけの秘密だ、いいな? 間違っても漏らすなよ」
「……わかりました」
今、一人称が俺になっていたな。忠告と共に威圧をかけたのだろう。
笹谷は俺の向かいにあるソファに座り、頭を抱えて動かなくなってしまった。
こいつは悪いやつじゃない、ダテに委員長をしている訳では無いということだ。
近いうちに嫌がらせをされる、嫌がらせで済めばいいが、とにかく何かをされる。それを頭に入れて行動しよう。
もう外は暗くなっている。今日は部屋に戻って全員が寝るのを待とう。
俺は部屋に戻るため、再び長いようで短い階段を降りた。




