城内潜入
部屋から出ていった俺は、適当にその辺をぶらつくことにした。
どうせなので、隠蔽魔法を使って城内に潜入しよう。いや、別に魔法を使わなくても城内には入れるのだが。
隠蔽魔法を使った理由は簡単だ。クラスメイトの制服の在処、その他の荷物が一緒に転移されてないか。
まあとにかく、見られてはいけないところも調べるために隠蔽魔法を使ったのだ。
「おい聞いたか? Cランクの判定になった奴がいるらしいぞ」
「本当か? わざわざ禁止魔法の召喚魔法を使ったのにCランクが混じってんのかよ」
そういえばこの世界では人間が召喚魔法を使うのは禁止されていたのだったか。
てか俺の話じゃん、一般の兵士でも噂されてんのかよ。本当にCランクだから噂じゃないけども。
「そういやお前倉庫の警備担当じゃなかったか? 確か中で泥棒が入らないように見張ってろとかなんとか」
「あんなところ誰も近づかねぇから大丈夫だろ、倉庫の入口にも一人いるし、あそこに二人も必要ないしな」
お馬鹿な兵士さんのおかげで倉庫に入れそうだ。
いくら隠蔽魔法とはいえ、漁っている時の音までは隠せない。近くに兵士がいたら一発で怪しまれて終了だ。
「まあ飯休憩ってことでいいだろ、食堂でなにか食ったら戻るよ」
「長居しすぎるなよ」
「異世界の奴らが食っててうざったらしいからな、あんまり長くは居座らないつもりだ」
そこまで長く食堂で食事をするわけではなさそうだ。
つまり急いだ方がいい、と。
そうと決まれば即行動、倉庫を探そう。
「はぁ、これも倉庫に運ぶのか」
なんか木箱を持った兵士さんが歩いている。どうやら倉庫に向かうらしい。こいつは好都合だ。
というかなんて都合のいい展開だ。
俺はその兵士の後ろをつけながら、倉庫へ向かった。
* * *
倉庫は割とすぐ近くにあった。
遠いと見張りの兵士が戻ってくる可能性があったので心配だったが、これならしばらくは大丈夫そうだ。
窓から入る陽の光に宙を舞う埃が照らされている、ハウスダスト怖い。鼻がかゆい。
「やっぱ制服は回収してたのか」
大きめの箱の中には男女の制服が乱雑に詰め込まれていた。
スカートもズボンも全部同じ箱に、男女くらい分けてやればいいのに。
「他には……!?」
驚いた、どうして驚いたのか説明させてくれ。
俺は倉庫をぐるっと一周360°確認したのだするとどうだろう、入口付近に机の山が置かれているではありませんか。
なんかもう、学校で暮らしそうなバリケードだ。ロストワンな感じもするぞこれ。
「教室ごと……? いや、机と教卓ごとか」
教室ごと転移したわけではないらしい。
多分全員が座っている状態で転移されたのだろう。だとすれば俺の机にかけてあった制服もどこかにあるはずだ。
「……あった」
制服が入っている箱の隣にある箱、そこに机の中に入っていたであろう教科書が入っていた。
そしてその教科書の下には机の横にかけられていたリュックが散乱している。
その中に、俺の制服が入った袋も入れられていた。
俺は自分の制服を魔袋に入れる。他になにか持っていけるものはあるだろうか。
ふと、黒色の細長い手帳のようなものが目に入った。
それを手に取り一枚めくる。すると、そこにはクラス全員の名前がびっしりと書かれた表が書かれてい。
先生が持つ用の出席表だ。これで生徒の名前を確認できるな。
見覚えのある名前は数名のみだ。あとは一切覚えていない。相良の名前は……相良透也っていうのか、知らなかった。
「はぁーあ、うるさくて飯も食えやしねぇ……ああっ!?」
お、兵士が戻ってきたな。俺も帰るとするか。
すれ違いざまに兵士の顔に水をかけてやった。
次は食堂だな、どんな飯を出してるのか気になるところだ。
「どうした?」
「いや、なんか水が……」
「はあ? 馬鹿な事言ってねぇで監視しろよ」
おし、バレてないな。
いつになってもイタズラは楽しいものだ。ムカつくやつだと尚更面白い。
俺は笑いを堪えながら食堂へ向かった。
* * *
やって来ました食堂。隠れて隠蔽魔法を解いたので今は全員に見える状態になっている。
なんか食べよう、そしてクラスメイトを観察しよう。
「いやマジでさ、部屋広すぎね?」
「それ、でもSランクに相応しい部屋だよね」
Sランクの奴らが自慢してるな。名前忘れたわ、あいつらの食べてるやつなんだ? 揚げ物? めっちゃ美味そう、俺もあれ頼もうかな。
「あそこの騒いでる奴らと同じの作ってくれ」
シェフに目線で後ろにいるパリピ共の事だと教える。
「あ? あんたランクは?」
「Cだ」
なんだ、わざわざランクまで言わなきゃいけないのか。
にしても厳ついおっさんだな、これがシェフなのか? どう見ても戦闘をした方がいい体型だが。
「C……Bランクと同じ飯だったな。ほらよ」
食堂のおっさんが取り出したのは黒パンと牛乳。
おいおい、冗談きついぜ。
「はぁ? こんなの頼んでねぇよ」
「Bランクの食事は黒パンと牛乳のみだ。上からの命令だからな、すまねぇが従ってくれ」
おっさんも別にやりたくてやっている訳では無いらしい。悪意があってやってるならぶん殴ってたぞ。
黒パンかぁ、あの時城に運んでいた黒パンがまさか俺たちの食事だったなんてな。
「わかった、貰えるもんはもらっとく」
「へぇ、見た目に反して図太いなお前」
「言ってろ」
俺は黒パンをわっしと掴み、食堂を後にした。
男はいいとして問題は女子だ。この黒パンを噛みちぎれる顎があるとは思えない。
見ろよこの黒パン、カッチカチやぞ。ぞっくぞくするやろ?
とにかく牛乳があるとはいえ食事もまともに取れないのは問題だな。あの地味子ちゃんとか絶対食べられないでしょこれ。
「あれ? 神裂くんじゃーん、食わないの?」
「部屋で食べようかなって」
「へー、黒パンなんて食べるんだ。俺たちと同じの食べればいいのにな!」
「ねー」
あーうぜぇ、チャラ男くん超うぜぇ。早くここから 離れたいぜ。
「それじゃっ」
「あっ、つまんねぇな……」
逃げ出した感を演じつつ死角まで走る。よし、この黒パンはしまっちゃおうね。
俺は次にどこに行くか考えながら廊下を歩いた。




