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秘密の会話

 先生に連れ出され、小屋の外に出た俺は、壁に寄りかかりながら腕を組んでいた。

 隠蔽魔法をバレないように自分と先生にかけて。


「先生、どうかしましたか?」

「神裂くん、あなたに何があったのかはわかりません。でも、聞かせてください。どうしてその事を隠しているのですか?」


 先生の瞳は真剣だった。

 数日前まで暗くて弱気で地味だった俺が突然マウントを取ってきたのだ。先生として、一人の人間として、気になるのだろう。


「……先生、俺はクラスメイトの名前すら覚えてないんです。それだけ、長い時間この世界に、違う世界に居たんです」

「違う世界……?」

「詳しく話すと長くなるので省略しますね。つまり、俺の性格が変わるくらいには、こっちの世界に馴染んでるんですよ」


 馴染んでいる、というよりか、むしろこちら側の世界の方が生きている時間は長い。

 日本で生きていた時間なんて、たった17年だ。


「だから、今更あいつらを助ける義理なんてない。ただ俺は、バレることなく、このメビウスという国に潜入したかった」

「だから、クラスメイトを利用したんですか?」

「利用、まあ利用ですね。でも安心してください、気に入った人は死なせません」


 気に入っている人、先生、相良と地味子。今はそのくらいだ。

 逆に気に入らないやつは利用してやろう。かつてのクラスメイトだろうと俺の心は揺るがない。


「他に聞きたいことはありますか?」

「神裂くんは、その……強いんですか?」


 単刀直入に聞いてきたな。強いのか、どうなのだろうか。

 この世界に来てから自分より強い人間を見たことがない。いや、別の世界でもいつからかそんな相手は居なくなっていた。

 だが、クラスメイトには俺の持っていない能力を持っている。まだ俺が最強なのかはわからないな。


「クラスメイトの中に俺を超える力を持った人間がいるかもしれませんが、少なくともこの世界では俺より強い人間はいませんよ」

「そう、ですか……よかった」

「よかった?」

「この世界に飛ばされてからずっと怖かったんです。私の担当するクラスの子たちが、みんな死んでしまうんじゃないかって。少し、気が楽になりました。神裂くんだけでも生きてくれるかもって……もしかして私酷いこと言ってますね」


 この人は、どこまで行っても『いい人』なんだな。

 自分の担当したクラスの子供が全員死んでしまうのが怖かったのだ。

 そして、そのクラスの中の一人である俺が生き残ってくれると思い、心から安心したのだ。

 自分の教え子が一人でも生きていてくれるという事実が、先生を支えてくれているのだろう。


「大魔王は俺が倒す予定なんです。きっと、帰れますよ」

「はい、一緒に帰りましょう!」

「じゃあ、そろそろ戻りましょうか。怪しまれると困るんで」


 隠蔽魔法を解除し、小屋に戻るために寄りかかっていた壁から背中を離した。

 先生の目を見ると、安堵の色が見て取れた。

 強力な味方がついたのだ、多少なりとも安心してしまうのは当然だろう。


「あ、そうそう」

「どうしました?」


 先生に顔を近づけ、耳元に手を添える。


「俺は自分(なかま)のためならクラスメイトだろうと殺せますよ」

「……っ!?」


 再び目を見る、焦り、恐怖。目を見ただけでも簡単な感情は読み取れる。

 しかしこれは必要なことだ。神裂くんがいるから大丈夫。という考えを捨てさせなければならない。

 ごめん、と心の中で謝罪しつつ俺は立ち尽くす先生を置いて部屋に戻った。


* * *


 部屋に戻るとギャル二人から逃げるように相良くんと地味子がこそこそと話をしていた。

 おっ、何話してるのん? 知らない間に二人の距離が縮まったのん?


「ただいま」

「お、おかえり神裂くん」

「せ、先生と何話してたの?」


 この二人はよく吃るな。典型的なコミュ障かよ。


「大したことじゃないよ、一人だけCランクでも頑張ってね、諦めないでねってだけ」

「そ、そうなんだ」


 自分の寝床に座る。

 床冷たいな、汚れてるし、掃除しようぜ掃除。

 まあ寝る前に軽く掃除すればいいか、今はほかにやることもある。

 例えば、こいつらの持っている能力、とか。


「一応さ、組んでる以上仲間なわけだし、お互いの能力くらいは把握しておきたいんだけど、いいかな?」

「えー、まーいいけどさ」

「それな」


 いや一応パーティなんだから嫌がるのおかしいだろ、能力知らないまま戦いたくないし。

 こいつらが役に立つのかはわからないけど。


「じゃーウチからね、ウチの能力は『ポイズンシュート』毒の弾が撃てるよ」

「あたしは『エアーコントロール』だし」

「エアコンか」

「誰がエアコンだし」


 ギャル二人は毒と風か。

 普通に使えそうなのにBランクなのか、ってことはそもそもの魔法の才能が無かったか。

 それともAランクがチート過ぎるのか。


「俺の能力は『ハイグロウス』他の人よりも成長が早いってだけだ」


 弱いってことで有名なのか、皆驚いた様子はない。そもそも成長とか凄くない。

 850年成長の能力で成長してエルフより強くなっているのだから効果はあるはずなんだが。


「僕は『千里眼』壁の向こうとか、遠くを見れるようになる能力……」

「私は『アフター』時間差で攻撃が当たる能力、です」


 相良の千里眼はめちゃくちゃ使えるな。だって透視と遠くを見る能力だろ? 普通に強い。

 地味子の能力は使い方によっては強い、ただ、時間差の攻撃となると使いどころは限られるな。

 次の攻撃の直前に発動させれば相手の動きを止めて攻撃ができる。


「私は『リカバリー』ですよ!」

「あ、先生」


 俺が全員に能力を確かめ会おうと提案した頃に既に先生は部屋に入ってきていた。

 話しかけずらかったのか、扉の前でじっとしていたのだ。つまり全員が能力を聞いたことになる。

 てか先生は回復か、強いぞそれ。


「みんな使える能力だけど、魔力が足りてないってことかな」

「ですかね」


 正直魔力さえ足りていればAランクに入れる能力だらけだ。俺を除いて。


「ウチら友達の部屋行ってくっからー」

「あたしもー」


 用は済ませたとギャル二人はボロっちい小屋から脱出し、綺麗なAランクの寮へ向かった。

 俺もAランクの部屋でゆっくりしたいが、いかんせん友達ってのがいない。自分で言ってて悲しくなってきた。


「先生も他の生徒を見て回りますねっ」


 教師魂なのか、修学旅行でよくある『先生が部屋を順番に回る』という行動に入った。

 扉から出ていき、さっそくAランクの部屋に行くのかと思ったが、隣から声が聞こえてきた。


「いきなり男子部屋に飛び込むとか勇気あるな」

「そ、そうだね……ははは」


 相良は俺の独り言に相槌を打ってくれた。


「あのさ、神裂くん」

「なに? 相良くん」

「神裂くんって、雰囲気変わったよね……前はもっと静かだった気がするけど」

「……転移してきてちょっと焦ってるだけだよ」


 なんだか探られてる気がして、俺は咄嗟に受け答えた。それが正しい答えだったのかはわからないが、今はとにかく別の場所に行こう。

 相良が他にも何か言いたそうな顔をしていたが、俺は無視して扉を開けた。

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