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迷いの森

 冬の大陸と春の大陸、その上空まで転移した俺たちは、エルフの森に向かうため、春の大陸へ向けて空を飛んでいた。

 巨大な森があるが、あそこだろうか。空からは建築物を確認できない。

 とりあえずあの森を目指そう。


「あそこにある木の近くに降りるぞ」

「あの大きい木?」

「ああ、多分世界樹だ。俺の知ってる世界樹はもっと低かった気がするがな」


 世界樹、エルフの森に生えている巨大な樹木だ。

 俺の知っている世界樹は、名前の割に低く、地下に巨大な根がはられている木だ。

 850年の間に成長したのだろう。だとしても成長しすぎだと思うが。


「あれが世界樹か。僕、本でしか見たことないよ」

「あの森には魔法がかかってるから気をつけろよ」

「確か、迷いの森だっけ?」


 迷いの森、森に入ったものは方向感覚を失い、森をさまよい続ける。

 出ることはできるが大体の人間は森の奥へ進んでしまうので、出るのは難しい。


 かつての俺は何回も迷った末にエルフに襲われて逃げ帰ってきたことがある。

 よって、エルフの村については全くと言っていいほど知らない。

 世界樹の洞窟まで行くことはできたが、村までは行くことが出来なかった。

 昔のエルフは人間への警戒がマックスハートだったので、即襲われたが。今はそんなことにはならないだろう。


 ちなみにだが、エルフの寿命は千年〜二千年だ。

 知り合い生きてるかな? と思ったが、エルフの村に入ったことがないためエルフに知り合いなんていないことを思い出して悲しさに包まれている。

 優しさで包んでくれ。魔女が箒で空を飛んで宅急便してくれ。


「降りるぞ」


 ゆっくり、ゆっくりと下降しながら森の中に入る。

 森の中は薄暗く、木漏れ日がポツポツとあるだけだ。

 世界樹の近くに開けた場所があったので、そこに着地する。


「よっと」


 改めて辺りを見回す。さすがエルフの森、神秘的だ。

 変わった色の植物やホタルとは違う謎の光る虫、まさに魔法の森といった光景。

 世界樹の周りには草木が少なく、永遠に変わることのない柔らかい芝生が生えている。


「わぁ……すごいね」

「あとはエルフの村を探すだけだな」


 ここからが問題だ。俺はエルフの村がどこにあるのかを知らない。もちろん全員知らない。

 ひたすら探すしかないのだ。最悪エルフを探して案内してもらうという手もある。


「とりあえず全員これを持て」

「ヒモ?」


 俺が魔袋から取り出したのは黒いヒモ。何の変哲もない強度だけあるヒモだ。

 これを俺の腹に巻き付けて全員に持たせる。これで迷わない、はず。


「絶対離すなよ? 方向感覚狂わないの俺だけなんだからな」

「あたしは?」

「耐性があるのかわからないから一応持っとけ」


 ここから先は僅かな魔力だろうが探し出す。その先に村があるはずだ。

 この感覚操作魔法と似たようなものが常に発動している世界に行ったことがある俺にとって、正常な方向に進むのなんて朝飯前だ。もう朝飯食ったけど。


「なんかペットの散歩みたいだね」

「やめろ、やめろ」

「調教」

「やめろムーン、お前はそっち側にいくな」


 これが犬の散歩なら飼い主どんだけいるんだよ。言われてみれば確かにヒモを付けてるのは俺だけどさ。


「んー……こっちだ」


 僅かに感じる違和感、魔力を隠しているのだろう場所に向かって歩き出す。

 この方向に真っ直ぐ進めば村があるはず。


「あれ? ソウルは?」

「あ? ……離したな」


 後ろを見ると、ソウルの持っていたヒモがズルズル引きずられていた。

 魔力感知でソウルを探す。……いた、ギリギリ念動力の範囲内だ。俺の進んでいる方向と逆方向を進んでいる。

 念動力でソウルを強制的に連れ戻す。


「おわっ!?」

「離すなって言っただろ……」

「いやほんとちょっとだけなんだよ? 試しにちょっとだけ離したらどこにいるかわからなくなるしさ、とりあえずさっきまで進んでた方向にダッシュしたんだよね」

「お前逆方向に進んでたぞ」

「嘘だろ!?」


 これが迷いの森の怖いところ。太陽が見えないから方向がわからないし、似たような木が生えているので今いる場所もわからない。

 ぶっちゃけ普通の森でも迷う、それに魔法がかかっているのだからさらに迷う。

 真っ直ぐ進んでも知らず知らずのうちに同じ場所をぐるぐる回っていたなんてザラだ。


「止まれ! 何者だ、名を名乗れ!」

「きゃっ、なに!?」


 高い声、おそらく女の声が響く。

 ミントたちには魔法でどこから声が聞こえてきているのかわからないだろうが、俺にはわかる。

 目の前の木の影だ。


「ユウトだ。村に行きたいんだけど、案内してくれないか?」

「なぜ案内役をつけていないのだ」

「案内役? そんなのいるのか」


 初耳だ、シェリフはそんなこと話していなかったぞ。


「知らないということは別の大陸から来たものだな。誰の紹介だ」

「シェリフだ」

「シェリフ様だと!? シェリフ様は今どこにいる!」

「まあまあ、村に行くまでにゆっくり話そうよ」


 エルフの隠れていた木に回り込んで後から声をかけた。隠蔽魔法って本当に便利。


「わあああああああああああああああ!? ど、どこから!? い、いや。それよりも、なぜ場所がわかった!?」

「まあまあ、俺たち悪いやつじゃないから。村まで案内してよ」


 ニッコニコしながら肩に手を当てる。

 名も知らぬエルフはガタガタ震えているが知ったことか、どうせ疑われたままなんだ。

 エルフを強引に案内役にした俺たちは、もちろん英雄であることなどは伏せながらだが、素性を話した。それ以外にも知りたいことを聞きながら村へと向かった。


 エルフに聞き出したことをまとめてみる。

 俺の隣を歩いている水色髪のエルフの名前がキュアリーということ。

 シェリフは族長の娘で、ピースに遊びに行くことが多く、族長が困っているということ。

 村は森に隠されていて、空からは見えないこと。

 この三つだ。


 もうすぐ村に到着する、いよいよ族長とのご対面だ。族長には俺が大英雄だということを教えよう。

 余談だが、村へ向かう間にソウルが一回はぐれた。

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