天国のような街へ
大陸が見えた途端に体感気温が変わる。
首元をひんやりした空気が撫でる、冬の大陸に近いのか。
「さっむ」
「確かあっちは春の大陸だったな、ちょっとズレるぞ」
春夏秋冬全ての季節が揃っている東大陸、もちろん常に寒い大陸と常に暑い大陸がある。
その四つの大陸に囲まれるように中心に島があるのだ。
そこが東大陸の国『ピース』なんとも片方がアメリカ行って片方が小説を書いてそうな名前だ。
「ちょっと移動するだけで暖かくなるんだね」
「丁度境目だったのかもな」
冬と春の大陸が近いのにも関わらず雪が溶けないのは境目がはっきりしている。
これは地下にある季節の結晶がその土地の季節を変えているからだ。
昔のシーズンクリスタルは一つだったんだがな。
確か、一年ごとに春夏秋冬を入れ替えていたはずだ。
その結晶が四個に割れ、それぞれ春の結晶、夏の結晶、秋の結晶冬の結晶に分かれた。
その分かれた結晶が四つの大陸に置かれ、その大陸の季節を固定しているのだ。
「……すごい、こんなに近いのに景色が全然違う」
「結晶の力だろうな、あと少しでピースに着くぞ」
ソウルの顔が青くなってきたな。
もうゆっくり飛んでもいいかもな……ん?
なんか鼻が濡れたような……
ポツ……
ポツ……ポツポツと雨が降り始める。
まずい、雨はまずい。
「雨降ってきたよ!?」
「スピード上げるぞ!」
「えっちょっまっ」
ソウル、頑張ってくれ。
「雨を防いだりできないのかよ!」
「んなことしたら風の流れが変わって飛べなくなっちまう!」
雨に濡れるのはごめんだ。
こっちはお姫様連れてってるんだぞ、濡らしてたまるか。
「本降りになる前に街に入るぞ!」
「流石についていけないっす!?」
「なら全員俺に掴まれ!」
全員が俺を掴む。
アイアスは俺の手の中で盾に変わったようだ。
よし、俺の最高時速を見せてやるぜ。
「ウィンド、ウィンド! ウィンドウィンドウィンドォ!!」
ありったけの風魔法で加速する。
速さだけを求めたため、曲がれない、止まれない。
団長もこれにはにっこり。
「わっぷ」
「目え瞑れ!」
雨が目に入ると危ないからな、音速レベルの速さになっているため、雨もただの水ではなくなっている。
弾丸までは行かないが、それなりに痛い。
もう少し耐えてくれ……
街が見えた、ここで少しずつ減速しながら降りねば。
ザァァァーーーーー……
なにっ、雨脚が強まっただと!?
少しでも早く着かねば!
風の槍のように進んでいるため、雨が当たるのはほとんど俺一人だ、いってぇんだけどこれ。
丈夫な服でよかった。
「着くぞぉ!」
何もない空間が見えたのでそこに突っ込む。
着地の直前にアイアスを発動!
ドゴォンと大きな音を立てて着地、地面には小規模だがクレーターが出来ている。まるで隕石だ。
威力を殺しきれなかったか、俺もまだまだだな。
「な、なんだお前たちは!」
「あ、どうも」
緑の服を着ている人が槍を持ってこちらを見ている。
この国の兵士さんかな?
「ここが城内だとわかってこのようなことをしたのか!?」
「え、ここお城の中なの?」
「そうだ! ピース城の庭だ!」
何もない場所だったからてっきり草原かと……
ようするにくそでかい庭ね、何に使うんだこんな土地。
っていうか城の庭にクレーター作っちゃったってこと? やばくねそれ。
「あーびっくりしたぁ……どうしたのユウト」
「牢屋に入ることも覚悟しといてくれ」
「なんで!?」
だってこの人めちゃくちゃ怒ってるんだもん。
これ絶対即逮捕でしょ、現行犯逮捕だろこんなの。
「とりあえず王様の元へ来なさい、話はそれからだ」
「マジすか」
王様に会えるのか。
好都合だな、王様に聞いた話だけじゃ全部はわからないからな。
王様と王様じゃわかりにくいな、マールボロ王とピース王にしよう、そうしよう。
「気持ちわりぃ……ん、なに? どうなってんのこれ」
「くらくらする」
ソウルとムーンも起きたか、アイアスの防御力は流石だなぁ。
俺たちは緑の兵士に連れられて、城の中に入るのだった。
* * *
金属と赤いクッションで作られた玉座には金髪でいかにも王様といった帽子をかぶった『女』が座っていた。
ああ、女王なのね。
「私の庭に侵入したと聞いた、本当か?」
「すみません」
「……ふん、まあその事については怒っておらん。許す! しかしな、私は興味があるのだ。高速で落下し、生きているお前らにな」
庭壊したのに怒らないなんて優しい人じゃないか。
刃向かったら敵と思われる? そんなのうそうそ。
「はぁ……?」
「ふっふっふ……む? そこの娘」
「はい」
「もしやローアルのところの娘ではないか?」
「お久しぶりです」
え、ローアル? 誰?
まさかマールボロ王のこと? 今の今まで名前知らないとかどうなの俺……
「そうかそうか、マールボロにこんな奴らがいたのか! 丁寧にもてなしてやろう!」
もてなしてもらうのは嬉しいが、俺たちはさっさと遊んで帰らなければならないのだ。
王様のことも知りたいが、この城に縛られるのは少し厄介だ。
「あー、いえ。俺たち観光に来ただけなので……」
「私に刃向かうのか……?」
キッとピース王が睨む、こっわ、なんかカットイン入らなかった? ペ○ソナみたいになってたぞ。
「いえ、滅相もない!」
もてなしと言っても、数時間だろう。
今はこの話に乗るとしよう。
「それは良かった。皆の者! 宴の準備を!」
「ハッ!」
「え?」
ピース王が指示を出すと、リーダーであろう男が指揮を執り始める。
なにやら厨房に料理のオーダーを出したり、兵士たちにテーブルの準備などをさせているらしい。
そんなに大規模な歓迎のしかたするのかよ!
「こんな大掛かりじゃなくても……」
「んー?」
「ありがとうございます」
逆らえないッ! もう魔大陸とか後でいいや、歓迎してくれるんだから大人しく遊んじゃおう。
どうせ事件が起こるのなんてまだ先だし。
「ユウト、大丈夫なの?」
ミントが耳元でボソボソと話しかけてきた。
やめて、俺耳弱いんだから。
「大丈夫だ、多分」
今の俺には、大きなテーブルに椅子が並べられている光景を、ただひたすら眺めるしかないのだから。
「ハッハッハーー!! よいぞよいぞ!」
この女王様は随分とご機嫌だな、いつもこんな感じなのか?
楽しい大陸だなおい。
決めた、もう俺は美味しい食べ物を食べまくるぞ、もう誰も俺を止められない。
イアがいたら泣いて喜ぶであろう料理を食べまくってやる。
宴が今、始まる。




