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高速飛行

 俺たちは今、東海洋の上空を飛んでいる。

 東大陸に渡るためだ、今日は空が曇っててジメジメしてるな。

 なんだか暗いし、今日魔大陸で何か起こるんじゃね?


「んんんーーー!」

「いつまで目ぇ瞑ってんだ」


 ミントは俺の背中にしがみついてんーんー唸っている、怖い?

 背中に捕まっているので、落ちても即対応できる、はず。

 ミントが飛べないほどのスピードを出しているのには理由がある。

 

 それは遡ること数時間前……


————————^v————————>


 俺はムーンを迎えにいくため、お城まで移動した。

 お城の前では先にムーンと王様が待っていた。


「待ちました?」

「準備万端さ」


 会話が成立していない。

 会話が通じないとか怖いんだけど、伝説って? ああ! 伝説上の生き物さ! そうか、ところで、伝説って? ああ!


「イアたちも準備万端ですよぉ」

「だぜ」


 ザンとイアは長旅になるため着替えなどの私物を持ち込んでいる。

 ザンに比べてイアの服が少ないのか布面積が小さいとかいう理由ですか。


「王様、今週中に魔大陸で何かが起こります」

「二人とも覚悟はできてるんだ、怖気付いたりしないさ」


 忠告はした、あとはザンとイアの無事を祈るだけだ。


「ああそうそう、イア、こっちきて」

「なんですかぁ? もしかして行ってらっしゃいのキ」

「ないから」


 絶対にないから、行ってらっしゃいのキスって憧れだったりするの? 俺にはちょっとわからない、そんな毎回キスしたがるもんなのか。

 ちゃんと目の前まできたな、えらいえろい。間違えた。えらいえらい。


「飛行魔法を教える話をしたろ? それだ」

「ああ、あれですか」


 露骨にガックリするな、その気があるわけでもあるまい。


「ちょっと背中触るぞ」

「あら大胆」


 ぶっ飛ばすぞ。

 魔力の流れを変えるには心臓に近い部分が一番効率がいいんだ。


「ふんっ」


 俺は風の魔力をイアの体に流す。

 飛行魔法の流れを体に染み込ませるのだ。


「ぁあぁ……変な感じですぅ……嫌いじゃない」


 聞き逃さなかったぞ、こいつM属性も持ってやがるのか。

 俺の考えるSMの分け方って、SかMかじゃないと思うんだよね。

 M度が3だとして、S度が5、そんな人がS、でもM属性もある。

 M度もS度も同じくらいな人、そんな人がSでもありMでもある人。

 度数が小さければ小さいほどノーマルって感じ。

 俺はそんな感じだと思ってる。

 何考えてんだ俺。


「よし、今の魔力の流れで風魔法を使ってみろ」

「わかりました」


 俺のSM議談はさておき、イアの飛行魔法の素質を見よう。


「ふっ」


 イアの周りに弱い風が吹き、桜色の髪が揺れる。

 いいぞ、そのまま風をまとって飛ぶんだ。

 ゆっくりと、イアの体が宙に浮き……


「わぁ!」


 つるんっ、とから滑りした。


「惜しい惜しい」

「難しいですね……」


 やはり天才、素質はある。

 練習してればそのうち飛べるようになるだろう。


「あとは練習するだけだ、頑張れ」

「ありがとうございますぅ」


 しばしの別れ、と、思うが実際は数日後に魔大陸に行く予定なんだよな、俺の中では。


「ムーン、アイアスに捕まって飛ぶんだぞ」

「わかった」


 アイアスはあたしも飛ぶのかぁと落胆している。

 ムーンがいるから異論は言えないって感じだろうな。


「ミントは俺のすぐ側で飛んでくれ」

「う、うん」


 ソウルは一人で飛んでもらう。

 簡単さ、今まで通り飛んでくれればそれで済む。


「それじゃあ俺たちは行くぜ」

「いってきまーす!」


 おお、やっぱりスピードホースに乗るのか。

 でかいな、俺が乗ったあのスピードホースより速いんじゃないかな。


「気をつけて行ってこいよー」

「向こうの問題まで解決してやるぜ!」


 頼もしいな。


「ザンくん、イアちゃん。いってらっしゃい」

「はい! 行ってきます王様!」

「出発だぜ!!」


 バビューンと風を切ってスピードホースが姿を消した。

 え、あの速さで大丈夫なの? 大通りとはいえ街の中心だよ?


「よし、ユウトくんたちも出発かな」

「ですね、お土産買ってきてあげますよ」

「ははっ、期待しとくよ。できればダンにも買ってきてくれないかな? ザンがいなくなって寂しいみたいでさ」


 可愛いなあいつ。

 そっかー、友達が遠くに行っちゃって寂しいのか。

 その気持ちわかるよ、俺も近所に住んでた友達が親の都合で引越しすることになって大泣きしたことがある。

 恥ずかしいから思い出すのはやめよう。


「わかりました、よし、お前ら行くぞ!!」

「おう!」

「おー!」

「ふぁ……おー」

「おー」


 アイアス、飛びながら寝るなよ……?


* * *


 うん、全然この状況になった説明にならなかったね。

 えっとな、ひと雨降りそうだから急いで移動してるってだけなんだ。

 ミントの速さに合わせてたらずぶ濡れになってしまうかもしれないからな。


「目開けていい?」

「大丈夫だから、落ちない落ちない」


 落とさない。

 落とすとか一生の恥だわ、ましてや女の子を。


「わぁ……速い!」

「天気が晴れてたらもっと気持ちよかったんだけどな」


 こればかりは仕方がない。

 俺も流石に天候は変えられないからな。

 ……雲を切り裂けば雨を止ませることはできるかもしれない、やらんけど。


「僕そろそろきついかも……」

「大丈夫だ落ち着け、深呼吸しろ。最悪吐けば治る」


 運がいいことに下は海だ。


「確かに下は海だけどさ……」

「吐き放題だな」

「吐き放題ってなんだよ!?」


 そりゃビュッフェスタイルの上位互換だろ。

 そんなのないか、ないな。

 てかこんな下品なことをビュッフェスタイルに例えるとか馬鹿かよ俺。


「大陸」

「お、見えてきたか」


 ムーンの指さす先には、氷の大地と、緑が生い茂る大地。本の通りだ、あの大陸は季節が綺麗に分かれている。

 新しい大陸が俺たちを待ってるんだ!

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