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遠い遠い昔の話

 あの日、俺がこの世界に来た日。

 あの時の俺は何をしたのだったか。


「目が覚めたのは……マウルボロ、昔のマールボロだな。その頃の街にはアイコスなんて名前はなかったんだ。その城の前で倒れていたらしい」

「このお城……?」

「いや、この城は前の城が地殻大変動の時に崩壊してから新しく立て直したやつだ」


 城を見て既視感を感じなかったのはそれだ。

 それで、確か街に住むことになったんだよな。


「それで素性も知らない俺を王様が手厚く歓迎してくれてな、この街に住むことになったんだ。そこから数年師匠の元で修行をして、イアの御先祖、マフォたちと魔王を討伐することになったんだ」

「師匠?」

「俺に魔法とか剣術とか教えてくれた人だ。もう死んじまってるだろうけど」


 お墓……はないか、何百年前だと思ってんだ。

 師匠は強かったなぁ、それに美人だったし。


「まずソウルの先祖、ゼーレだけどな。ソウルによく似た顔でさ、弱くて、でも良い奴だった」

「弱かったんだ」

「お前らちょっと耳かせ」


 どうせだからミント、ムーン、アイアスには教えよう。

 ソウルの力を覚醒させる方法を。

 教えなかったら俺が叩かれるからな。


「そんな方法で……」

「あいつを強くするためなんだ」

「覚えとく」


 やり方は好きじゃないけどな。


「僕の祖先はアロンダイトって剣の使い手じゃなかったの!? 強いって聞いたんだけど!」

「あとから強くなったんだ、お前もそうなるさ」

「マジ? 僕もまだまだ捨てたもんじゃないね」


 強くなった途端にできることが増えて、今までの常識が通じなくなるからな、それに耐えれる精神力があればいいのだが。


「次にザンの御先祖のアルテだな。こいつは強かった、乗馬が得意で、小柄な割に力が強かったな」

「俺に似てるぜ」

「似てるのは馬鹿力だけだ」


 大人になっても子供みたいなやつだった。

 人生の中で二番目に一緒にいた奴らだから感情深いな。

 一番目は親な、17年だぞ。


「最後がイアの御先祖のマフォだ。イアに似て変態、髪はもっと濃いピンクだった気がするんだが、イアは薄いピンクになってるな。魔法は超一流だった。強すぎる魔力を抑えながらだから行動は制限されてたな。空を飛ぶことも出来たけどしなかったらしい」

「イアも飛べますかねぇ」


 この世界で魔力の出力だけで飛べたのあいつくらいじゃないか?

 俺も魔力のみで飛ぶことはできるけどめっちゃ疲れるから風魔法で飛んでんだぞ。


「風魔法なら覚えられそうだけどな、あとで教えてやるよ」

「ホントですか!」


 あったら便利だからな、イアなら別にいいだろ。

 もっとも、イアレベルの魔法使いでないと使えないんだけどな。


「いいなぁー、それで、旅ってどんな感じだったの?」

「昔の移動は馬だったな、スピードホースなんていうやつはいなかったからパカラッとゆっくり進んでた」


 この広い世界を旅しながら魔王を倒すってのに移動手段が馬って……そりゃ13年もかかるわ。

 魔王城に入るために各地にいる魔物を倒さなければいけない、と。

 ゲームかよってツッコミを入れたな、懐かしい。


「そんで、魔大陸に上陸するための船の調達が西大陸だろ? 次に大陸を囲むように発生する渦潮を止める杖が東大陸だろ? 強力な魔物を倒すために北大陸にも行ったんだ」

「結局全大陸旅したんだ……」


 したさ、上陸までが長かったんだ。

 ちなみに、昔は北大陸と魔大陸は繋がってなかった。

 地殻大変動でくっついたんだろうな。


「まあ色々あって魔大陸に上陸、魔王城に入るために魔王の側近とかを倒さなくちゃならねぇ。この魔大陸がすっげぇ広いんだ、ここでも数年かかかった」

「そんなに広いの?」

「おう、永遠に終わらないと思ってたからな」


 まあ魔王を倒したあとが本当の地獄だったんだが。


「魔王城の封印が解けてやっと魔王と会えた。魔王は魔物を召喚しながら戦ってたな。魔王と接近戦をすることになった時には仲間はもうボロボロだった」

「……接近戦」


 元気いっぱいだったアルテは傷が深く動けない、余裕そうだったマフォも魔王の召喚する魔物の殲滅で魔力が尽きかけ、ゼーレは技の反動で体が動かなくなっていた。


「動けるのは俺だけだった、俺は剣を手に取り魔王と一騎打ちをした。何時間も、何時間も斬り合った」


 今でも覚えている。

 何度も何度も身体を貫く漆黒の剣、痛みを感じなくなった身体。

 力量では魔王が勝っていたのだろう、俺は精霊の加護のおかげで戦うことが出来た。


「倒れない俺を見て魔王が質問をしてきた」

「質問?」

「お前は何のために戦うのか。俺はそれに人を守るためと答えた。その後、俺はお前はどうなのかと聞いた」


 その時返ってきた言葉は、俺の行動を否定する言葉だった。


「魔王は答えた『魔族を守るため』俺達人間が魔族を恨む時、同時に相手からも恨まれている。それに気づいた」


 何年も続いた魔族対人間の争い。

 それはどちらも自分たちを守るため、相手が悪だと決めつけていたからこそ起こった争い。

 結局は正義と正義のぶつかり合いなのだ。

 それに気づいた俺と魔王は、勝った方が世界を治めるという条件で再び戦った。


「その後も斬り合って、魔王が先に折れたんだ。俺は勝ったことに喜べず、ただ魔王の死体を見ていた」


 身体を剣で貫かれながら、魔王は俺にこう言った。


『私には娘がいる、いずれ魔王になる女だ。娘と一緒に世界を治めてくれ』


 はじめから負ける気だったかのように魔王は笑っていたな。


「魔王には娘がいてな、俺はそいつと世界平和を実現させようと計画を立てたんだが……残念ながらまた別の世界に飛ばされてしまった。はい、おしまい」

「そんなことが……」

「その娘は?」

「今の魔王だろうな、魔族の寿命は長いんだ」


 今頃あの子は何をしているのだろうか。

 ちゃんと、平和を目指しているのだろうか。


「ふぁ……お話聞いてたら眠くなってきちゃった」

「眠い」

「イアも眠くなってきましたぁ」

「そうだな、ちょっと昼寝でも……しようか」


 そのうち会う少女を楽しみにしながら、俺は微睡みに体を委ねた。

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