五人目の同行者
背後から忍び寄る人影、真後ろまで移動されるまで全く気が付かなかった。
ムーンか、さらに影が薄くなってやがる。
「やっと気づいた」
「久しぶり」
久しぶりというには間があいてないな。
「え? どこから……っていうかこの子は!?」
「ムーンだ、マールボロのお姫様だな」
「よろしく」
「あーん! 久しぶりですムーンちゃん!」
今日は来てないかと思ったよ。
それはそうとなんでこのタイミングで来たんだ?
まさか東大陸に行きたいとは言うまい。
「東大陸行きたい」
予想的中、予想してなかったろ俺。
「とか言ってますけど」
「うーん、いいんじゃないかな?」
「なんでだ、一国のお姫様だぞ、何かあったらどうすんだ」
「だってユウトくんが一緒なんでしょ? なら安心だ」
それで安心するのか。
決まり文句のひとつ「俺だからな」が発動するのか。
まるで意味がわからんぞ。
「はぁ……ほんとに来るの?」
「行く」
「まぁ二人来れなくなったから人数的にはいいけどさ」
なんだろ、見た目がロリロリしいから妹的な目で見てしまう。
俺妹いないのに。
「お前らはいいの? お姫様が一緒でも」
「ひ、姫様も来るのか……僕いていいのこれ」
何言ってんだ、お前がいなくなったら男が俺だけになるじゃないか。
それだけは絶対に避けなくては。
最悪グラム呼び出すぞ。
「私は大丈夫だよ! ユウトとの関係も気になるし」
「ほぼ他人みたいなもんだ」
最初のコンタクトだって影の薄いムーンを見つけるっていう高難度クエストだったからな。
そこから婚約を申し込まれたことは言わないでおこうね。
「よかったねムーン!」
「ありがとうお父様!」
多分お父様は何もしてないと思うよ。
「じゃあ俺たち帰っていいすか?」
「えー、もっとゆっくりしていきなよ」
「こんなキラキラした部屋でゆっくり出来るとでも?」
「じゃあムーン用の部屋があるからそっちでムーンと遊んでやってくれないかな」
遊ぶって、子供じゃないんだぞ。
いや15歳か、なら子供か……?
いやでも高校一年生か、下手したら中学三年生くらいの年齢だろ?
それは子供なのか? 子供というか、大人になろうと背伸びしてる子供って歳だろ?
なら子供か。
「今日は暇だからいいっすよ。ムーン、ソウルさんが遊んでくれるらしいよ」
「やった」
「何するつもりだ!?」
ひとまず俺たちは別の部屋に移動する。
しかし立派な城だ、ド○クエで見たことあるよこういう構造。
宝箱の場所が複雑すぎて毎回迷うんだよな、あそこの王子は嫌いだ。
* * *
お姫様の部屋、というからにはもっとガッチガチの高級そうな部屋かと思ったが、やけにクッションの多い部屋だった。
お姫様らしいというより女の子らしいだな。
「こりゃ座り心地がいいぜ」
「かったい椅子より何倍もいいな」
ソウルとザンは座椅子のようなクッションに座って騒いでいる。
女かお前らは。
「ムーン、なにかしたいことあるか?」
「お話、知らないことばかりだから色々知りたい」
「私もユウトの話聞きたいな、昔のここっていうかユウト的には世界かな? 昔のこの世界の話とか聞きたいな」
「あたしも!」
アイアスが盾から人間に戻る。
戻らなくてよかったのに。
てかイアも興味津々だな、バカ二人は呼ばなくていいのか?
「そうだなぁ……なら俺がこの世界に来るまでの話をしよう」
「おお! 気になります!」
そんな面白い話でもないと思うんだがな。
さて、どんなことがあったか。
この世界に戻ってきてから、昔の出来事を思い出せるようになっている。
精神状態の影響なのか、この世界に戻ったからなのか。
まあ気にするだけ無駄だろう。
「ある雨の日、俺はインフルエンザ、まあ病気だな。その病気で倒れてたんだ。両親は共働きで、家には俺一人」
両親も俺もインフルエンザなんて数日寝てれば治るだろうと思っていたのだ。
「すぐに治るだろうと思っていた病気は、収まることなく俺の体を衰弱させた。両親が帰ってきた時には俺は随分弱ってた。治してもらおうと病院、医療所だな。医療所に泊まることになる」
夜中、真っ暗な道を車に乗って走ったのだ。
両親は俺に声をかけたりしてくれたけど、俺はそれに応える余裕はなかったな。
結果入院、すぐ良くなると思ってた。そう、思っていたんだ。
「次の日の朝、俺は死んだ」
「……ッ!」
「死ん……え?」
まあ驚くよな、目の前の人間が死んだことのある人間なんだから。
「病状は悪化して、そのままぽっくり逝っちまったらしい」
早朝に死んだからな、クラスの奴らはみんなポカンだろうよ。
それをみんなに伝える先生はもっと辛いよな、悪いことしちゃったな。
「そんで神様、いや、様なんてつけるヤローじゃねぇな。なんかよくわかんねぇ男にこの世界に飛ばされたんだ」
「その人は何者なの?」
ミントがそう尋ねる、俺が知りたいよ。
「わかんねぇけど、俺はそいつをぶっ飛ばしたいんだ。こんなことに巻き込んで、俺を何百年も縛り付けたアイツを……!」
「ユウト……落ち着いて」
「……悪い、カッとなった」
あんなやつのこと、忘れちまえばいいのによ。
でも、忘れられない、忘れたくても、いつあいつが俺の前に現れるかわからない現状が怖い。
「まあそんなわけでこの世界に来ました。めでたしめでたし」
「遠目から聞いてたけど全然めでたくねぇぜ」
「ほんとだよ」
バカ二人も聞いてたのか。
盗み聞きとか趣味悪いよ、もっといい趣味見つけなよ。
ザンには筋トレがあるし、ソウルには……いじられがあるじゃないか。
「この続き、聞く?」
「……ちょっと、聞いてみたい」
「私も、ユウトのこともっと知りたい」
おおう、ミントの感情を知ってるからちょっと照れくさいぞ。
知りたいならしゃあないな、思い出話でもしますかね。




