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結局こうなる

「私、ユウトのことっ!」


 その先の言葉が聞こえる直前、目の前に光の精霊が横切り、俺たちの視界を白く染め、続きはミントの喉元で遮られた。

 そして、落ち着いて、再び言葉を発しようとする。


「……す」

「おーい! 何してんのー!」


 陽気な声が聞こえた。

 いつもならイラッとくる声だが、今回ばかりはありがたい。

 俺は難聴系主人公のようにえ、なんだって? とはならず、しっかり聞こえてしまうし、なんとなくで言いたいこともわかる。

 俺にそんな感情を抱くなんて、間違ってる。


「……はぁ」

「おお、ソウルか。稽古って何やってたんだ?」

「力の入れ方を変えてみたんだ! そしたら前よりもパワーもスピードも出るようになってさ……まだまだ捨てたもんじゃないね!」


 なんだ、やれば出来るじゃないか。

 さっき子供たちに教えた魔力の使い方だが、その使い方がソウルは下手だったのだ。

 指摘したところで使い方はもう癖なのでどうしようもない。

 それでもあの戦いから自分を変えようという気持ちを持ったことによって、魔力の使い方を変えるヒントを掴んだようだ。


「じゃあその力の入れ方に慣れないとな」

「ああ!」


 伝説って? に対する返事としては完璧だな。

 空を見ると暗くなっていた空は一層暗く、星が点々と見え、街が月明かりに照らされていた。

 この噴水に腰掛けてから随分時間が経っていたようだ。


「あはは……じゃあ酒場に戻ろっか」

「ザンもイアもアイアスさんも先に帰ってるってさ、ほら行こうぜ!」


 ソウルが酒場に向かって走る。

 それを追いかけるミント、その背中は今まで見てきた背中よりも、ずっと、ずっと小さく感じた。


「……ごめんな」

「なにしてんだよ! 早くこーい!」

「今行く」


 このことはもう忘れよう。

 いや、忘れるなんて失礼か、心の奥底に閉まっておこう。

 もう、二度と思い出すことのないように。


* * *


 酒場に戻ると既に全員が集結していた。

 みんなテーブルに座ってるな、アイアスは何買ったんだ?


「やっと帰ってきたぜ」

「お若い二人で何があったんですかぁ?」

「あたしも気になる!」


 やめよ? アイアスさんも乗らないで、イアは勝手に妄想してるだけだから、あんたが思ってるほど純粋な付き合いの妄想じゃないから。


「それよりも飯だ飯、ケイトさんは?」

「お、ちょうど帰ってきたね。ほうら、夕飯さ」

「こ、これは……!」


 白い麺!? ……これは、うどんだ!

 うどんってのはあれだ、ほうとうを細くしたやつだ。

 ってことは放蕩息子ってのは……うどん粉? このネタはやめよう。


「うどんか、久しぶりじゃない? ケイトさんなんかあった?」

「いやぁ、小麦村の出身者が宿にいるってことで王様から良質な小麦粉を貰ったのよー、なんでそれだけでくれたのかは謎だけどたくさん貰ったから明日の朝はパンよー」


 あぁ、俺がいるからか……

 王様め、イキな事しやがる。

 だが俺の目はごまかせない、これは「これで宝石の件は許して」ってことだろう。

 仕方ない、俺は許すぞ。


「普通に美味い」


 うどんをちゅるちゅる啜りながら感想を述べる。

 だしが美味いぞこれ。

 魚介のだしだぞこれは、あの港の魚かな。

 異世界でも箸の文化は生まれるもので、みな日本人顔負けの箸使いだ。


「食べやすいねぇ」

「あんま重くなくてよかったな」


 クリィープのせいでちょっと胃が膨れてたところだったからな、丁度いい。


「このあとどうするよ」

「今日も銭湯だろ?」

「銭湯!」


 ミントが嬉しそうで何よりです。

 でも今度東大陸で温泉入るんだぞ? 銭湯で感動してたら温泉なんて入ったら失神するんじゃないのか。


「美味しかったです」


 お皿をケイトさんに返しに行く。


「よかったよかった、やっぱりいい小麦粉は違うねぇ」


 現代の製粉技術が素晴らしいことがわかったな。

 さあ、お風呂に入ろう。


* * *


 カポーン……


「いつも通りだな」

「どうかしたか?」


 いや、いつも通りむさいお風呂だなと。

 でもこれが普通なんだよな、隣の女湯では見た目だけは一級品のおにゃのこたちがキャッキャウフフしてるのかな。


「ザンは今日の稽古で掴めたことあるか?」

「集中力だぜ、今はとにかくそれを鍛えるようにしてるぜ」


 まあそうな、剣に気づいてれば勝ってたわけだし。


「そのうち色々教えてやるよ」

「そのうちと言わず、今とかどうだぜ!?」

「やだよ眠い」


 お風呂入りながら眠いって割と危ないよな。

 良い子のみんなは入りながら寝たりしないようにな。


「おらっ!」

「うわっち」


 急に顔にお湯がかかってきた。

 ソウルか、水鉄砲とは卑怯な。

 いくら水をかけられるのに慣れてる俺でもビビったぞ。


「くらえ」


 ソウルの顔に向けて水鉄砲。

 魔力で水の流れを変えたから威力は上がっているはずだ。


「ぎゃあああ目が! 目が!」

「オラァ!」

「うおおおおお!?」


 あ、ザンがソウルに思いっきりお湯をかけた。

 修学旅行とかで馬鹿どもがやる遊びだな、結構楽しい。

 幸い人がいなく、貸切状態なので騒いでも問題ないだろう。


「やったなぁ?」

「かかってこい」


 ソウルがゆらりと立ち上がる。

 ほう、水合戦ですか、受けて立ちましょう。


 バシャン、バシャンと水音が響く。

 た、楽しい! 遊ぶのって、遊ぶのってこんなに楽しかったのか……!!


「これが渾身の水撃だあああああ!!」

「うおおお!!!」

「う る さ い !」


 女風呂からの声により楽しかった一時は一瞬で消え、静寂が俺たちを包む。


「お風呂くらい静かに入ってよ!!」

「す、すみません」


 その後、風呂から上がった俺たちはミントに長々と説教をさせられるのだった。

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