あの日の約束
さあやって来ましたのは大きな校舎の裏手にある校庭。
小学生くらいの大きさのガキどもに抱きつかれながらで動きにくいなか、やっとの事で移動できた。
「どうしてこうなった」
「はい、じゃあ冒険者様に魔法を教えてもらいましょう!」
「ユウト頑張って!」
何を頑張れというのだ。
第一俺は人に教えるのが苦手なのだ、レッドたちに教えるのだってかなり苦労した。
感覚型だからだな、超次元サッカーの主人公くらい感覚型。
「えーっとだな、まず魔力ってのは力の入れ方が重要なんだ。例えば関節に魔力を込めれば動きが滑らかになるし、筋肉に魔力を込めれば通常よりも強いパワーを出せる」
「おおー!」
「じゃあ筋肉に力を入れてみろ」
俺がそう言うと子供たちは皆腕に力を入れ始めた。
プルプル動いているのがわかる。
「今力を入れたのは筋肉と関節の両方だ、筋肉に力を入れようとしても、無意識に関節にも力がいく。パワー型なら筋肉のみに集中するべきだし、スピード型なら足の筋肉と関節に力を入れて、腕の関節に力を入れるのがベストだな」
「へー!」
え、大丈夫? ちゃんと話聞いてる?
「強い魔法を出すにはどうすればいいですか!」
おう、普通はてなマークがつくだろ、勢いすごいな。
「いいか? 魔法ってのはイメージだ。頭の中で炎、水、雷などのイメージを作り出せ。そして組み立てるんだ」
「よくわかんない」
「例えば目の前に火があるとする」
「ないよ?」
「あるんだ、あると思え、よし、あるな? んで、その炎をイメージしながら魔力を出すんだ。こんなふうに」
俺は指パッチンをして手のひらから小さめの炎を出す。
まあこのくらいなら誰でも出来るだろ。
「かっけぇ!」
「よし、やってみろ」
子供たちは俺の真似をして指パッチンするも、火は出ない。
ぶっちゃけ鳴らない指パッチンなんて必要ないし邪魔だからやめた方がいい。
でも火花っぽいやつは出てるな、よしよし。
実は教えるのうまいんじゃね。
「指パッチンなしでやってみろ!」
「はーい!」
今度はロウソクくらいの炎が出たな。
「あとはそれを大きくしたり動かしたりだけどな、それはもう慣れだ。俺はなんもできん」
「えー」
動かし方なんて知らんし、こっち動かしたいって思ったら動くから具体的なことなわからんし。
「レッドたちの時もそうだけど、ユウトって教えるの下手だよね」
「うっせ」
やっぱり下手でした。
「とにかく、繰り返し練習してれば魔力も増えるし、扱いも上手くなる。ひたすら特訓だ!」
「はい!」
妙にキラキラした目で見てくるな、師匠とか呼ばれたりするのかな、俺の師匠は一人だけだぞ。
「ありがとうございます、あの、得意な魔法などを見せていただくことはできますかね?」
「一回だけなら」
そんなにポンポンやってたら校庭が校庭跡地になってしまう。
「よーしお前ら、どんな魔法が見たい?」
「雷!」
「氷!」
「すごいの!」
最後のやつ適当すぎるだろ。
すごいのってなんだ、床屋で髪型聞かれた時に適当に答えたみたいじゃねぇか。
初めて床屋さんの気持ちがわかったよ。
でも床屋さんですごいのって頼んだら大変なことになりそうだな。
頭からチョコ生えてますよみたいな髪型にされちゃいそう、怖い。
「じゃあ雷と氷の魔法だな、よく見とけよ?」
「おー!」
俺は体全体に魔力を回す。
イメージするのは氷の中に閉じ込められたイナズマ。
氷と雷の複合魔法。
目の前に巨大な氷の塊が現れる。
氷の中には青いイナズマがごうんごうんと鳴り響いている。
僕を責めたりはしない。
「砕け散れ!」
その氷塊を張り手で砕き、前に飛ばす。
そして……
——砕け散った氷の粒と粒のあいだに、青いイナズマが走る。
さしずめ電気の檻、これをやられたら感電しながら死ぬ。
「うおー! ビリビリだ!」
正直な感想だな。
「じゃあ俺たちは行くからな、またそのうちくるわ」
「あ、ありがとうございした!!」
教師達も想像以上の魔法に驚いていたようだ、何回も頭を下げている。
しばらくしたら成長した子供たちを見に行きますかね。
* * *
学校から出てきた俺たちは、散歩に戻り、ひたすら歩く。
「さっすがユウトだね!」
「あれでも抑えた方だ」
本気で撃てばあれの5倍くらいの範囲の檻を作れる。
「もう暗くなってきたな、帰るか?」
「そうだね……あ……いや、なんでもない」
なんだ? どこか行きたいところがあったのだろうか、わからん。
思い出してみよう、ミントの行きたいところ。
——噴水
そうだ、確か夜の噴水を見に行くという約束をしたじゃないか。
本来ならあの日に行くはずだった噴水、小麦村が魔族に襲われたせいで行くことが出来なかった。
「まだ時間あるしさ、噴水見に行こうぜ」
「えっ! ほんとに?……行こ!」
そこまで喜ばれるとこっちもちょっと嬉しいな。
俺はミントと噴水広場まで歩いた。
噴水広場まで歩いた俺たちは、その光景に感動していた。
噴水の周りには光の精霊が飛び回り、ライトアップされている、すっげぇ綺麗。
「……すごい綺麗」
「言葉が出ないってこういうことを言うんだな……」
街の人はみんないつもの事のように振舞っているが、俺からしたら感動ものだ。
でもなんか見たことあるな……あ、ホタルだ。
小さい頃、おじいちゃんに連れて行ってもらった池に、ホタルが飛んでいたのを思い出した。
「座ろっか」
「ああ」
噴水を囲う枠に座り、休憩する。
ミントが子供の頃見たのはこの光景か、そりゃ忘れられないわ。
そうだ、こういう時に男は女の子に何かをプレゼントするんだっておじいちゃんが言ってた。
いや、おじいちゃんは言ってない、おじいちゃんじゃない誰かだ。
まあとにかく、なにかあげよう。
これを見せてくれたミントへのお礼だ。
「ミント、これあげる」
「これは……」
魔袋から取り出した葉っぱの髪飾り。
金貨を換金したついでに買っていったものだ。
「嬉しい」
「そりゃよかった」
俺とミントはただ過ぎる時間を数えていた。
いつまでもここにいたいな。
なんかミントがもぞもぞしてるな、トイレ?
「どうかした?」
「ユウト……私ね……」
ミントは顔を赤くしながら俺の顔をじっと見つめる。
おい、まさか……
「私、ユウトのことっ!」
光が、目の前を通り過ぎた。




